第170話 国外追放
「セタリア・ヘラ・セルペンテ。貴様を国外追放の刑に処す!」
厳かな雰囲気の城内に冷徹な声が轟く。
「本来ならば、セルペンテ家の犯した罪は到底許されるものではない。ただセタリア、貴様はミドガルズオルム討伐への協力の件もある。減刑の余地は十分にあると判断した」
「寛大な処分に感謝の言葉もありません、スタンフォード国王陛下」
跪いたままセタリアは淡々と感謝の言葉を口にした。
「とはいえ、王国に仇なす反乱分子をそのまま国外に追いやるのも不安がある。実際、貴様が再びミドガルズオルムと同じ道を辿ることも十二分にあり得る」
「その疑念も当然のものかと思われます」
スタンフォードの言葉をセタリアは静かに肯定する。
周囲には残された忠誠心の高い貴族の重鎮達がいる。ここで僅かにでもスタンフォードがセタリアに対して情けをかける様子を見せてはいけなかった。
内心、苦しみながらもスタンフォードは自身で考えた最善の提案をする。
「そこでだ。貴様にある使命を下すことにした」
「使命、ですか?」
そこでスタンフォードは言葉を切り、ニヤリと口端を吊り上げると腰につけていた剣を外した。
「レベリオン王国に仇なす邪悪を切り伏せる聖剣ベスティア・ブレイブ。先の戦いでも世界樹を飲み込んだミドガルズオルムを打倒した本物の聖剣。これを貴様に授ける」
そう言ってスタンフォードは聖剣をセタリアへと差し出す。
どよめきが広がる中、スタンフォードは構わず言葉を続ける。
「そして、この剣と共に世界を見て回るのだ。それが貴様に下す使命だ」
「こ、国王陛下!?」
「どういうおつもりですか!」
貴族の重鎮達はスタンフォードの行動に驚いたように声をあげる。
「控えろ、国王陛下の前であるぞ!」
それを傍にいたルーファスが一喝することで黙らせた。
「聖剣ベスティア・ブレイブはミドガルズオルムを封じる力がある。もし、貴様がその血筋に従って悪に堕ちたときは、その剣が貴様を裁くだろう。このことはコメリナが聖剣を分析して証明済みだ」
「スタンフォード、殿下……」
スタンフォードの意図を理解したセタリアは瞳から大粒の涙を零しはじめる。
「そして、いつかかつてのようにその剣が自分の意志を取り戻し、再び目覚めたときは共にこの国に戻ってくるといい」
そんなときがやってくるのか。それはスタンフォードにもわからない。
だが、スタンフォードは信じることにしたのだ。
かつての婚約者と親友が結んだ絆の力を。
自分と同じように不可能を可能にすることを。
「そのときが貴様の罪が許されたときだ」
セタリアが背負うといったセルペンテ家の呪縛。彼女がそれから解放されるときはきっとくる。
スタンフォードの思いは伝わり、セタリアは聖剣ベスティア・ブレイブを受け取った。
「謹んでお受け致します」
こうして、セタリアは聖剣と共に国外へと追放されることになった。
国民や貴族達からは安堵の声。また使命を達成できれば恩赦を与えるというスタンフォードの判断を、セタリアが裏切らないための措置として捉えて称賛する者もいた。
国家転覆を計った血筋の末代となったセタリアは、その罪状とは裏腹に友人達に盛大に祝われながら聖剣と共に旅立った。
それは国外追放というよりも、むしろ新たな門出を祝福しているかのようだった、と後に友人であるアロエラ・ヒュース・サングリエは語っていた。




