第157話 新・国王陛下の使命
国王陛下オクスフォード・クリエニーラ・レベリオン。
彼は指輪に魔力を込めると、それを息子であるスタンフォードへと託す。
それはただの王位継承ではない。この国の運目を左右する力の解放の瞬間でもあった。
「これでお前はレベリオン王国の国王となった。新国王として何を成すべきか、もうわかっているようだな」
「この国を救うこと。最初の仕事にしては重すぎませんかね?」
「お前にはそのくらいがちょうどいいだろう」
冗談めかして笑うと、オクスフォードはスタンフォードに背を向けて歩き出した。
親子水入らずの時間を終えたスタンフォードは満天の星空を眺めながらポツリと呟く。
「ここからだ……ここからが俺達の反撃の時間だ」
そして、彼は新たな決意を胸にその場を後にするのであった。
翌日、スタンフォードはポンデローザ、マーガレット、コメリナ、ブレイブ、ステイシーを集めた。
「みんな聞いてくれ。僕は父上――いや前国王陛下から王位を継承し、レベリオン王国の国王になった」
「マジ? 陛下も思い切ったことするわねぇ」
「ミカじゃなかったポンちゃん、リアクションがサバサバしすぎじゃない? 他のみんなは驚き過ぎて固まっちゃってるよ」
「いいんだよ、姉さん。王位継承よりも大事なことがあるんだからさ」
スタンフォードは苦笑すると続ける。
「獅子のベスティアも任意発動が可能になった。妖狐のベスティア、大熊のベスティア、聖剣の復活、神代の巫女の力、今の僕達に戦力的な問題はない」
スタンフォードは周りの皆を見渡すと、真剣な面持ちで告げた。
「新国王として最初の仕事だ」
それを聞いたポンデローザ達は表情を引き締める。
「この国を救うため、まずは忠臣セタリア・ヘラ・セルペンテを救出する。力を貸してくれ」
「当たり前じゃない」
ポンデローザはスタンフォードが伸ばした手を取ると、いつものように不敵に笑った。
彼女の横にいたステイシーも一歩前に進み出る。
「ルドエ領のことはお任せください。必ず皆様をお守りしてみせます」
「ああ、頼んだよ。ステイシー」
ふとブレイブが口を開く。
「ステイシーは連れて行かないのか?」
「ルドエ領は最重要防衛拠点だからね。仮に敵がここに攻めてきたら一巻の終わりだ」
スタンフォードは神妙な面持ちで語る。
「ステイシーがいるから僕達は心置きなく攻勢に出ることができる」
「なら、俺達はとことん暴れてやらないとな」
ブレイブは頼もしそうに拳を合わせる。
「絶対セタリアを救い出す。聖剣ベスティア・ブレイブとしてじゃなくブレイブ・ドラゴニルとして……」
気力に満ち溢れたブレイブを見て安心すると、スタンフォードはコメリナへと視線を向けた。
「コメリナ。現状、最もベスティアを使いこなしているのは君だ。期待してるよ」
「任せて。私、絶対役に立つ」
コメリナはいつもの無表情で淡々と答える。だが、そこには強い決意があった。
「それじゃ、姉さん。ラクリア様に代わってもらてワープの準備をお願いできる?」
「うん、わかった」
マーガレットはスタンフォードの言葉に頷くと、ラクリアのものへと意識が入れ替わる。
「……今まで散々好き勝手やってきたけど、ケジメをつけるときがきたんだね」
入れ替わって目覚めたラクリアは覚悟を瞳に宿すと、神妙な面持ちのまま口を開いた。
「私は聖剣ブレイブに恋をした。彼の命惜しさに世界樹を封じてヘラの裏切りを許してしまった。ムジーナも私のせいで……」
それは身勝手で他者を思いやる心のないラクリアの罪だった。彼女の行動が原因で国は傾き、大切な物の命は失われた。
「ラクリア様、ご先祖様――あなたの妹さんから伝言よ」
ようやく自分の罪と向き合う気になったラクリアへポンデローザが言葉をかける。
「〝大嫌いだけど、愛してる〟ご先祖様はあなたのことは嫌いだったけど、家族として、妹として愛してはいたのよ」
「……そっか」
ムジーナの伝言を聞いたラクリアは満足げに笑うと、光魔法を発動させる。
「さあ、いくよみんな!」
彼女の足元からは光輝く魔法陣が生成され、戦いへと赴く者達を飲み込んでいった。




