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第152話 姉で親友

 神々しいオーラを纏いながら登場した慈理。

 そのあまりにも神々しい姿に全員言葉を失う中、慈理はスタンフォードとポンデローザに優しく微笑む。

 そして、二人の元へと歩み寄るとそれぞれの手を優しく握った。


「また会えるなんて思わなかった……」

「本当に、メグなの」

「うん、古織実果の親友、才上慈理だよ」


 慈理がウインクをするとポンデローザの目から涙が零れた。


「ね、姉さん、何だよな」

「うん、才上進のお姉ちゃん、才上慈理だよ」


 涙ぐむスタンフォードに慈理は優しく微笑む。

 時を超え、世界を超えた再会。事情を知らないブレイブやコメリナは首を傾げていたが、何となく三人にしかわからない何かがあるのだと、その場は口を噤んでいた。


「進、ごめんね……あなたのこと、本当は心のどこかで恥ずかしく思ってた。私があのときあんな態度を取らなければ進は死ななかったのに……!」


 そして、慈理は前世で進がスタンフォードへと転生するきっかけとなった出来事について謝罪した。


「それは違うよ、姉さん」


 スタンフォードは涙を流している慈理へと言葉をかける。


「俺は姉さんの言葉を言い訳に逃げっぱなしだった。だから実際僕は恥ずかしく思われてもしょうがなかったんだ。それを一方的に裏切られたなんて思ったからバチが当たったのかもね」


 苦笑するとスタンフォードは続ける。


「でもさ、悪いことばかりじゃなかった。転生してからは苦労続きだったけど、ポン子達みたいな大切な仲間にも出会えた。そして、姉さんにもこうして出会えた」


 スタンフォードは一度そこで言葉を区切ると、力強い瞳で真っ直ぐ慈理を見つめた。その目には迷いは見られない。

 そして、前世において一度は伝えることができなかった思いを伝える。


 それはスタンフォードにとって長い長い空白の時間を経て伝えられる瞬間であった。


「僕は姉さんが姉で良かったよ」

「進……!」


 慈理は涙を流しながらスタンフォードを抱きしめる。世界を跨いだ久方ぶりの家族との再会であった。

 二人が落ち着いた頃、慈理は自分のことについて話し始める。


「私は巫女――ラクリアの肉体に魂を定着させる実験の過程で生まれた個体。施設の子とは違って、実験の最終段階でラクリアの魂を降霊させようとして異世界の魂が呼び出された入り込んじゃって生まれたの」

「だからブレイブの世界戦で存在しないイレギュラーなマーガレット・ラクーナになったってことか」


 本来、ラクリアの魂は一つしかないため、マーガレットになるかセタリアになるか、二つに一つだった。そこへ降霊術の不具合か何かで紛れ込んだ異世界の魂である慈理がラクリアの肉体を再構築してできたマーガレットの肉体と結びついた。

 そして、実験の記憶を消されたマーガレットは、その後原作通り施設へと預けられることになったのだ。


「でも、今まで黙ってたんだ?」

「忘れてたの。私、前世じゃお婆ちゃんになるまで生きてたし、亡くなる頃には自分が誰かもわかってなかったんじゃないかな」


 慈理は今まで自分が転生者であることを忘れていたと語る。だが、その魂は本能的に弟と親友の気配を感じ取っていたのだ。


「なるほど、欠落した記憶も全部まとめてラクリア様が蘇生してくれたのか……」

「ぶいっ」


 ラクリアは自慢げにピースサインを掲げる。

 元々は原初の魔法の時代を生きていた肉体だ。それを転生した慈理が鍛え上げたこともあり、現在のマーガレット・ラクーナの肉体は光魔法、身体能力、そのすべてに置いてとんでもないハイスペックな状態にあった。


「ねぇ、ちょっと待ってメグ」


 そこでポンデローザがふと思い出したように尋ねる。


「どうしたの?」

「もしかしてスタンってニートの弟君なの!?」


「「今更!?」」


 なんとも締まらない再会に三人は吹き出し、思う存分笑い合うのであった。


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