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第129話 ヒカリエへの道中


 全員集合したのも束の間のこと。

 現在、スタンフォードはポンデローザ、コメリナ、マーガレットと共にローブを被って夜の街道を馬車で進んでいた。


「それで、どうやったら馬車を失ってミドガルズの連中から追い回される事態になるんだよ?」


 スタンフォードの質問にポンデローザは冷や汗を流しながら顔を逸らす。

 彼女の隣ではコメリナがため息をつき、マーガレットは苦笑していた。


「し、仕方なかったのよ。ちょっと目を離した隙に馬車が盗まれちゃったの」

「しかも馬車を盗まれた街がミドガルズが裏で拠点にしてる街の一つだったんだよ」

「無事、壊滅させた」

「どこが無事なんだよ」


 ポンデローザ達の話を聞いてスタンフォードは頭を抱える。


「展開が早すぎる……」


 本来、そういった原作での大事件はさらっと起こっていいものではないのだが、スタンフォード達が原作破壊を行ったことにより、順々に起こりうる大事件も頻発しうる。


 せっかく隠密行動をしやすいように配慮してくれたハルバードに申し訳なさを感じつつも、スタンフォードはあることに気がついた。


「ミドガルズを壊滅させた?」

「倒したのは、ほとんどポンちゃんとブレイブ君だけどね」

「ブレイブはともかく、ポン子。お前ホント多対一に強いな」

「ふふん、氷雪系は最強なのよ」


 ポンデローザは自慢げに胸を張る。実際、ライザルクに苦戦していた頃よりも、ポンデローザははるかに強くなっていた。

 心の枷も消えたことにより、彼女の魔法はより自由自在に発動できるようになっていたのだ。


「まあ、いいか。支部とはいえ、敵の拠点を一つ潰せただけでも収穫ではあるしね」

「それにミドガルズを巻き込んだ大騒ぎなら起こした方がこっちは動きやすいわ」

「ハルバード様や国王陛下の胃が心配だなぁ」

「やむを得ない犠牲、南無」


 コメリナは両手を合わせると、そのまま馬車の隅っこへと移動していった。

 相変わらずのマイペースさにその場にいた全員は小さく笑った。


「ブレイブは魔剣の新形態でセタリアとドラゴニル領へ、ルーファスとアロエラは金属魔法で作った鋼鉄四輪で移動、ステイシーとガーデルは次の街まで徒歩で向かってルドエ領からの迎えを待つ、か」

「概ね予定通りね!」

「ポンちゃんとブレイブ君が暴れなければね……」


 マーガレットがボソッ呟いた言葉に全員が同意する。

 そんなやり取りをしつつ、一行は目的地の町へ向かう。


「ラクーナ先輩の育ったヒカリエ。そこに答えはあるはずだ」

「敵が待ち構えてることを考えれば、油断はできないわね」

「慌ただしい里帰りになりそうだなぁ」

「……すぅ……すぅ……」


 マーガレットが育った地ヒカリエ。

 地名もさほど有名ではない、どこにでもあるような小さな町。

 そこにいけば、現状正体が不明であるマーガレットの素性がわかり、さらなる力を得ることもできるかもしれないのだ。


「しかし、コメリナはよくこの揺れで眠れるね」


 スタンフォードは呆れた様子で、馬車の壁に寄りかかりながらすでに寝息を立てているコメリナを眺めた。


「コメリナちゃん、移動中は割とすぐ眠っちゃうんだよね」

「さすがリケジョね」

「いや、理系がどこでもすぐ寝れるなんて偏見もいいとこだからな」


 ポンデローザの発言にツッコミを入れつつも、スタンフォードはコメリナが研究者気質で本の山に埋もれて寝たりしている姿を思い浮かべた。


 その姿があまりにもしっくり来てしまったため、スタンフォードはポンデローザの言葉もあながち間違っていないと思い、心の中でほくそ笑むのであった。


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