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第128話 成長の実感


 二人の言葉と同時にクラウドランは動き出し、その口から雷のブレスを放つ。

 だが、それは二人に届く前に巨大な鋼鉄の壁によって防がれてしまう。


「〝造形金属(アートメタル)〟」


 鋼鉄の壁はルーファスの詠唱と共に形を変える。

 それはスタンフォードの前世で電磁投射砲と呼ばれていた代物だった。


「全魔力解放……〝雷神砲(トールガン)!!!〟」


 スタンフォードが撃ち放った弾丸は一直線にクラウドランに向かって飛んでいく。

 高速で飛来する弾丸、それはルーファスである。


「〝雷狼噛砕(バイゼン・ボルグ)〟」


 目にも止まらぬ一撃を受けたクラウドランは断末魔の叫び声をあげることも敵わずに真っ二つにされた。

 二人はクラウドランの亡骸を目に軽く土埃を払うとため息をついた。


「ったく、手間かけさせやがって」

「ライザルクの上位互換って思ってたけど、案外大したことなかったね」


 スタンフォードはクラウドランとの戦いを振り返り、改めて自分が成長していることを実感する。

 ポンデローザが命がけで足止めをしてブレイブと二人がかりでようやく倒せたライザルク。その上位互換とも言える幻竜をルーファスがいたとはいえ、そこまで苦戦することもなく倒せたのだ。


 余談であるが、このクラウドランは原作においてライザルクとモーションや技が強化されて終盤に出てくるモンスターだ。

 それが原作での中盤にも満たない現在で出現している。

 紛れもなく原作通りの流れは壊れ始めていた。


「とりあえず、使えそうな素材だけ剥ぎ取って街道の邪魔にならないように転がしとくか」


 ルーファスはこなれた様子でクラウドランの亡骸を解体していく。

 使える素材を馬車に運び込みながらボソッと呟いた。


「ベスティアは使えなかった……」


 ポンデローザから聞いていた原作の流れが想像以上に進んでいる。

 本来、順序立ててやってくる運命が一度にまとめて襲い掛かってくる。それをまとめて蹴散らさなければならないのが現状なのだ。

 できることならば新たに手に入れた力であるベスティアを使いこなしたいところだったのだが、自発的に発動するのは難しかった。


「まだまだ鍛錬が必要だね」


 馬車へ剥ぎ取った素材を詰め込むと、スタンフォードはフードを被り直す。


「僕らの動きは黒幕にはバレていると思っていい。今回は幻竜一匹程度だったけど、下手をしたら竜人が来る可能性もある」

「ははっ、そいつは大歓迎だ」

「街中じゃなければね」


 いつどこで敵が襲ってくるかわからない状況は想像以上に精神的に負荷がかかる。

 そんな状況でも軽口を叩ける余裕があるのもルーファスだからこそだろう。

 彼は常に周囲の状況を確認でき、こう見えて臨機応変に対応できる器用さも持っている。

 いろいろと雑なところはあるが、スタンフォードはそんな彼を信頼していた。


「いっそのこと、黒幕潰せば全部まるっと解決するんじゃねぇのか?」

「それで全部解決したら苦労はしないよ」


 スタンフォードは想像以上に厄介な現状にため息をつく。


「それに僕は黒幕が誰なのかを知らない。ポン子もミドガルズオルムの転生体が誰なのかは教えてくれなかった。僕の黒幕に対する態度が変わらないようにってね」

「つーことはスタ坊の知り合いってわけか」

「おそらくね。でも、下手に探りを入れようとして蛇が出てきても困るから、僕らはこれまで通りの方針で動くことに変わりはないよ」


 スタンフォードの言葉にルーファスは肩をすくめる。


「主がそう決めたのなら信じて付き従うのが臣下の役割だ。信じるぜ、大将」

「ありがとう。こっちも君を信じてるよ」


 そう言ってお互いに笑い合っていると、後方から何かが近づいてくる音がしてきた。


「おーい! スタンフォード! ルーファス先輩!」


 何故か巨大化させた魔剣を宙に浮かせ、スケートボードのように乗りこなしたブレイブや氷像に乗ったポンデローザ達がやってきた。


「あのバカ……偽名と変装の意味ないだろ」

「にしても、あいつら馬車はどうしたんだ?」


 呆れ顔のルーファスに苦笑しながらスタンフォード達は手を振って応える。

 二人は合流を果たした仲間達と共に一度、近くの街へと向かうことにした。


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[気になる点] クラウドランで合ってますか?クラウドラゴンじゃなく?
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