表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

9/10

第9話 『私もうおかしくなりそうなんです……』

短めです。

 翌日、昼過ぎに新幹線に乗ることにした俺は早速澪に連絡をとる事にした。


「あ、センパイだぁ~」

「おはよう澪」

「おはよーございまーす」

「早速なんだがな、澪に会いたくて……早めに帰ることにしたんだ」

「ホント……?」

「ほんとだ」

「……もう、仕方ないんですからぁ、センパイは。甘えんぼさんですねぇ♪」


 吹けば飛んでいきそうな灰になっていた澪の声に急に生気が戻る。

 いつもの自信タップリな澪だ。

 やはりこの澪が一番カワイイ。


「ああ、帰ったらすぐに会いたい」

「全くぅ、仕方ないですねぇ♪」


 ビデオ通話ではないが、画面越しに澪が小躍りしてることが分かった。


 さて、人が一番絶望する時はいつか。

 答えは簡単。

 上げてから落とされることだ。


 俺は最大級の爆弾を投下した。


「あぁ、今日の夜にはそっちにつくから明日には会えるな」

「明日……」


 蘇りかけていた澪が再び地獄に落とされる。

 どうだ、俺と同じ気分を味わった感想は。


「どうした澪? 我慢できないのか?」

 

 俺は人の目があるというのに、とんでもないニヤケ顔をしていたことだろう。

 数舜の沈黙が訪れたのち、うぅ……と葛藤するような声が聞こえてきた。


「はい、我慢できません! 私もう……センパイの血が欲しくて欲しくておかしくなりそうなんです!」

「それじゃ、明日まで待つのは辛いなぁ。俺も出来れば今日会いたいなぁ。そうだ、なら今日の夜俺の家に来るのはどうだ?」

「いいんですか?」

「ああ、もちろんだ。一人で先に帰るわけだから今日は親もいないしな」

「センパイ……まさか」


 ここからはずっと俺のターンだ。

 なあ今どんな気持ちだ?

 ずっと手のひらで転がしていたと思っていた相手にいつの間にか転がされるようになってしまった気分は?


「夜遅くに返すのは危ないし、泊っていくのがいいんじゃないかなぁ」

「ケダモノ……」


 俺の意図を察して澪が後退っていくのを感じる。


「ん? どうした? カノジョしないのか?」


 ここで効いてくるわけだ。

 最初に決めた条件──『俺の後払い』という条件が。

 俺の血が欲しければ澪は俺に従うしかないのだ。


「くっ……センパイ謀りましたね?」

「澪が嫌なら仕方ないなぁ。でも明日まで血はお預けだなぁ」


 聞こえた。ココロの折れる音が。


「分かりました……センパイの家に泊りに行きます……」


 弱々しい声で澪が囁いた。


 やった──ついに澪が堕ちた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
新作短編です! サクッと読める短編なのでこちらも是非ご一読ください!

ツンドラ令嬢と呼ばれていた氷上さんと同じ大学に進学したら飲み友になった
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ