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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

さよなら、即席悪役令嬢

自然災害描写あり。


王子は婚約者を婚約破棄する・・・


@短編89

久々に書いてみた。またちょっと暇ができたので、いくつか書こうと思います。

「お前とは婚約破棄だ!!」

「えっ・・殿下、あ」

「ええい!!言い訳はいいわ!さっさと宮殿を出ていけ!!」


祝賀パーティー会場に、この国の王子の怒号が響き渡った。

怒鳴られているのは、婚約者であるシーレン嬢。

端正な顔は、今はぽかんと小口を開けて茫然自失だ。


「お前とは前から合わなかった。気に食わなかった!さあ、私の前から消え失せろ!!」


そう言うと王子は会場から出て行ってしまった。



王子はそっと物陰に隠れ、婚約者を見る。

体を微かに振るわせ、侍女に付き添われて会場の別の出口から出て行くところだった。


王子は自室に籠り、ソファにどすんと腰掛け、大きなため息を吐いた。



これでいい。

侍女と馭者には『ここからうんと離れた高台の別荘にでも連れていけ』と言いつけてある。

シーレンは・・・

シーレンだけは・・・生き残ることが出来るだろう。



彼は転生者だった。

と言ってもつい先ほど覚醒したばかりだ。

彼は同じ王子に転生したのだ。

彼は前世でこの国が間も無く地震による津波で滅亡を体験していた。

目の前で婚約者が波に攫われ、己も崩れる建物に潰された。

それが今日、もう間も無く起こる。

悲しいかな、国民全員を助ける遑など無い。

ただただ、心から愛する婚約者だけでも、そう思った。


そして、大きく宮殿が揺れる。

シャンデリアが落ちるほどの揺れで、ガラス窓も割れ、家具も音を立てて倒れた。

遠くに聞こえるのは、人の絶叫だろうか。


ああ、来たな。

シーレンは高台まで逃げる時間があって良かった。間に合った・・


ガラスの破片であちこち傷を負った王子だが、儚げに微笑んだ。

壁に飾られた婚約者の肖像画が足元に落ちていて、愛おしげにそれを持ち上げる。

本当なら、彼女に似合うピアスをプレゼントするつもりだった。


ああ、勿体ぶらずに昨日渡せば良かった。私の形見に・・

いや、怒鳴りつける男のプレゼントなど、さっさと捨てたかもしれない。


ぼんやりと思いに耽る彼の耳に、聞いたこともない雑音が微かに聞こえ、それはどんどん大きくなって、迫ってくる。


津波だな。

前も苦しかった。またあの苦痛を味わう事になるとは。

でもシーレンが苦しむ事にならないなら・・これくらい甘んじよう。

怒鳴ってごめん。

悪し様に言ってごめん。

私を許さなくてもいい。

だけど、少しでいいから覚えていて。


砂利に泥や木切れが混じった大量の水に、彼は押し潰された。




高台まであと僅かのところで、令嬢は変な音に気付く・・間も無く、ぐらっと激しい揺れに慌てて馬車の壁で体を支えた。侍女も必死で彼女を庇うようにしてしがみ付く。


「お、お嬢様!ご無事ですか!」


馭者が馭者席後ろの小窓から声を掛けるので、戦慄きながら返事をする。


「え、ええ。地震?」

「そのようで・・・ああ!!き、き、宮殿が」


令嬢は車窓に目を向けると、荘厳な宮殿は半壊しているではないか。

慌てて今来た道を見ると、大きく引き裂け、馬車はもう戻る事が出来ない。

そうこうするうちに、津波が宮殿に向かって行くのが見え、あっという間に飲み込んでしまった。






「本当、お婆様は運がいいわね!」


孫娘が膝に乗って笑う。

確かに私は運が良い。

王子に振られ、高台に追い払われたお陰で、こうして長生きして孫娘とのんびり過ごす事も出来る。

あの腹立たしい王子は、あの後宮殿と共にこの世から消えた。


「ええ。清清したわ」


そう。

清清したはずなのに・・・

なぜ今もこうしてわだかまりが消えないのかしら。

あの頃本気で愛していた、だからかしら?いやんなっちゃうわ、全く。





はたして・・王子の最期の願いは叶ったのだった。



いやはや、半年ぶり。

艦これやって、刀剣やってたら小説脳が衰退してました。

本当、艦これって頭使う・・・

もうすぐ投稿1周年やな。

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