ホラー企画 こわいはなし? 『第一話』
今日は父さんと一緒に食事に出かけることになった。
お母さんのかわいい車ではなくって、父さんの大きなハイブリッドって車で出かけると思う。
父さんと私と妹の三人。たぶん、よく行くファミレスかな?
お母さんは一緒に行かない。「用事があるから、3人で行ってらっしゃい」と言っていたけれど、たぶん違うだろう。お母さんは怖がりだから仕方ないと思う。
お母さんは夜に出歩くのは嫌いだ。でも、しかたないよね。
あのね、
私のうちは代々、霊感の強い人が、忘れたころに生まれてくるようなうちだったんだよ。お母さんもそう。
私にも霊感はある。
でも私は、たまに見えることがあるけど、ぼんやりとした影みたいなのが見えるだけで、はっきりと視線を感じるようなことはほとんどない。
お母さんや、うちに伝わっている幽霊を見たという先祖のはなしの人たちみたいな、はっきり人間と間違うようなものを見たことはないんだよ。
ホントに有り得ないほどたまに、その表情がわかってしまい、目が合ってしまったときもある。
そういうのは、ほんとに危ないときで、相手が関心を持って寄ってきたりする。
車に乗っているときなど、走っている車に飛び乗ってくることもあるから、気持ち悪いし危なくてたまらない。
私は車の運転は絶対にしないつもりだ。
しばらくすると居なくなってしまうけれど、彼らのことはなるべく見ないようにしているの。
私は弱い霊感しかないけれど、それで良かったと思う。
幽霊のことは、少し怖い。だから、見えなくて良かったんだって。
見えると、関心を持たれた時はたいへんだ。つきまとわれて、一緒に居続けられると困る。
だって私は助けてあげられないし、言いたいこともわからないから。
うん…。小さい妹は、私とは比べられない位に霊感が強く、はっきりと見えるらしいんだ。
今日もそう。
父さんの運転する車で、夕食に出かけた帰りのことだった。
いつものファミレスでの食事はとっても美味しかったし、季節のデザートは格好も味もとってもいい。また食べたいくらい。
妹が食べきれない分をくれたから、私も交換で、妹の好きなフルーツやアイスをあげる。父さんはいつもみたいに、にこにこと見ている。私だってお姉ちゃんなんだから、分けてあげるよ。
お母さんも来れたら良かったな。ファミレスの中は明るいしにぎやかなので、あまり寄って来ないから。
でもね、行き帰りの暗い道で、私は道の片隅に立っているぼやっとしている白い影に気づいてしまった。
やばい!
そう思った時にはすでに遅く、もやみたいなものが身を乗り出して車に飛び込んで来るところだ。
白いシーツがフロントガラスを覆うように広がってゆくみたいに、視界を白くふさぐけれど、霊感の無い父さんの目には何も映っていないのだろう。
とっさに目をつぶった私と違って、父さんは全くわからない人だから、ハンドルを切り損なうこともなく、そのまま運転を続ける。
父さんは、私のようすには気づかない。
それに相乗りしてきた相手にも全然気がついていない。さっきまでしていた話を続けている。
父さんの言っていることにうわのそらで話をあわせて、あれが気づかないようにする。わからないようにしないと。
振り返ると気づかれてしまうから、そっと後ろを盗み見ると、後ろで寝ている妹のそばにぼやっとした白い影がいる。目を開けていない妹をのぞきこんでいるようにも見える。
目を覚まさないで!藍ちゃんっ。
私は息を止めて、身動きできずにいたけれど、
妹は起きずに済んだようだった…。
しばらく妹のそばにいたものは、すり抜けるようにして出ていった。
ほぼ同時に寝返りをうって小さくうめく妹。
思わず息をつめる。
そして白い影が出ていってくれるのを待つ。
「どうした?」
父さんに聞かれたけど、すぐに答えられずに、戻って来ないことをじっと見ていた。
「ん、なんでもないよ。
藍ちゃん起きたみたい」
乾いていた口のなかを湿らせながら、父さんに聞かれたことをはぐらかす。
家に着いてから、ようやく気が抜けてくる。
…疲れた。帰るまでは楽しかったんだけどな。
敷いてもらっていた、部屋のお布団に倒れこむ。お母さん、ありがとう。
父さんは寝ている藍ちゃんを抱いたまま、二階の部屋へと連れていった。
お風呂、やめようかな。
つい部屋のなかを見回してしまう。やだなぁ、思い出しちゃった。
…眠れない。今日は小さな明かりをつけてるからかな。
なかなか寝付けないので、しかたなく飲み物を取りに行こうとする。
暗い廊下の先のキッチンへ。
明かりがついていて、お母さんがいた。
「寝つけないの?
牛乳、温めようか?」
「うん。お願い」
お母さんの出してくれたミルクを飲む。
温かい…。ほっとする。
黙っていたお母さんがおもい口をひらいた。
「ねぇ碧ちゃん、何かあった」
「何もないよ。なんで?お母さん」
鋭いなぁ。
でも、わかるよね。私変だもの。
しょうがない、お母さんに話そう。
「あのね、お母さん。今日ね…、」
眠そうに目をこすりながら、妹が二階の部屋から階段をとんとんと降りてくる。
「どうしたの藍ちゃん?」
いつもは朝まで起きない妹は、お母さんにこう答えた。
「知らないおじさんが部屋にいるから、わたし今日は下で寝るの」
【めざしさまホラー企画】
タイトル名:『訪問者』
-あとがきと解説など-
みなはらです、初ホラー作品として書いてみました。
でもこれ、怖くないですね(苦笑)
このお話はフィクションですが、
お話の元になった出来事は、現実にあったことだそうです。ネタもとは昔の親友の言ったお話です。
特に、「知らないおじさんが部屋にいるから、わたし今日は下で寝るの」という言葉は、自分が聞いたセリフそのままです。親友の妹は、リビングにいた彼と両親にそう言ったそうなのですね。背筋に冷や汗が…( ̄▽ ̄;)
自動車に乗ってきたことも、脚色はありますが、まあだいたいそんな感じだったと思います。
本当に飛び乗って来るのだそうです。怖いですね(;´д`)
中学の時の親友、彼のことは、拙作の『修羅になる』という文章で棋士を目指していたことを書かせて頂いたこともありましたが、実は彼は弱いながらも霊感のある人物だったのですね。多少見える、感じるくらいだったと思います。
昔、彼が地元の場所で、あからさまに雰囲気の危ういところとして挙げていたところは、過去に女郎宿(遊女の居た場所)のあった所でしたので、知ってか知らずか、負の想いの集いやすい場所について、彼感じたり判ったりするのは確かだったと思っています。
自分は鈍感だからわからないのですけれど、今考えると、あそこの路地裏は、他の場所よりも一段暗く感じられるような薄暗く思える道でした。
彼にお話のの出来事について聞いたのは成人した後のことでしたから、まあ、嘘ではないでしょう。からかう事を言うような年齢ではありませんでしたし、妹さんが(霊感のおかげで)一時期ノイローゼだったことも聞き及んでいます。
今思うと、彼の家はなんとなく、どんよりとした印象もありましたね。敷地の一角が元墓地だったそうですし(乾笑)
自分自身は鈍感ですが、こんなふうに自分の周りには幾らか霊感のある人がいたようです。
まあ、一番の身近な力の持ち主は元パートナーでした。
彼女と共に自分自身が体験した(鈍感なので全くわからなかった)出来事は、
日光東照宮に行った時に体験した二つの、いや三つの出来事ですね。今思い出しました。
三つのうち二つは、以前にモチーフとして【妖怪大戦争企画】に書いた拙作の『聖域の鏡 -昔の友人のこと-』で書いています。
一つめは、日光東照宮の社務所脇にある御守りの供養箱。
あの時、なぜか惹かれるように覗き込もうとしたんですね。
あいつに強い声で引き止められましたが、供養箱から延びて、自分の頭を掴んで引き込もうとするかのような手が見えたのだそうです。
低くたしなめるあいつの声の響きには、心底ぞっとしたのを覚えています。
そして同じ日にあった二つめ。
東照宮にある墓所、家光公の墓所を参拝したときに、拝殿の畳の間で、あいつは何者かに頭を押さえつけられて土下座させられたと言っていました。
その場では語らず、後で、と低い声で言いましたから何事かと思ったのは忘れていません。
相手がなんなのかついにわかりませんでした。三代様に仕えていた人物でしょうか。
三つめは今回初めて話します。
別の機会に日光へと参拝したとき、東照宮内のあるお寺の一角で撮った写真に、東北地方などで撮れる、座敷わらしと言われるものに似た、群れ光る玉のようなものが取れた事があったのですね。
現像後、直ぐ処分したので、今まで忘れていました。美しい写真でした。
元奥に、「悪いものではないけど、念のため処分しよう。燃やして供養すれば大丈夫」といわれたのでした。
あいつは聞こえないけれど、ときおり見えるらしく、一緒にいると、たまに不思議な事にあったりしました。タロットやホロスコープを使った、予知も含む占いもしましたしね。
あの時は、大変だなと見て思いながら一緒に日常?を過ごしてました。
あとは、彼女が突然、どこかから家に入ってきたらしい幼い子供の霊と話始めたことですね。
「私は聞こえないから。(家に)居てもいいけど、言いたいことが解らないからなぁ」と、そういい始めたときは、
「居て良いのかよ!」と心の中でツッコミを入れましたよ(笑)
シャレにならーん!!とおもいながらも、自分、鈍感だから、居ると言われても何もわからないんですけどね(苦笑)←あいつの話では、その後、出ていったそうでした。
うーん。こうやって書いてみると、鈍感のくせに、いろいろと体験してますね(苦笑)
ほとんどは、あいつと居たときの不思議体験でした。←鈍感でわからないから、果たして体験と言えるかは疑問ですけれど(笑)
そんなところです。
それではまた、