02話 ブラックでも給料よかったら倒れるまで働いちゃうよね?
いつからか覚えていないが、都会のコンクリートジャングルの中にある植物が昔から好きだった。
自然は好きだし山へ行ったりもするが、住みたいとは思わない。
やはり現代人としては、近くにコンビニがあり、車ではなく電車で移動するのが楽だし経済的であると考える。
そして、自然の中に植物があるのは普通だと思うが、人工物の中に植物があるというのに何故か魅力を感じてしまうのだ。
まぁ、たまには大自然にも触れたいけどね…
そんな、人と少し違う価値観もあり、大学生活では農学部で学びながら男であるにも関わらず花屋でバイトをしていた。
…
いやー
めっちゃ楽しかったなー
学校では畑を耕しながら大自然の中で学び、バイトでは花といい人達に囲まれながら稼いでいた。
あと…
バイトの子みんな可愛かったし…ね!
大学では時期によっては野菜がたくさん取れて野菜食べ放題!
特にジャガイモをガチで研究してる人がいて色々な品種のジャガイモを沢山もらった。
インカのめざめって知ってる?
あの甘くて中が黄色くて栗みたいなジャガイモ。
あれをジャガバターにするだけで白いご飯が三杯はいけたね!
そんな感じに過ごしてたので、就職も植物関係の仕事に就きたいと思うのは自然なことではないだろうか?
特に花屋には興味があり、徹底的に調べていったが、ある一つの問題にぶち当たった。
それは…初任給安すぎじゃない!
大卒の他の企業に比べると明らかに少なすぎる…
そういえば、バイトの店長のボーナスが2000円とか言ってたような…
普通に暮らす分には問題ないけど結婚とか子供できたりしたら暮らせなくない?
俺はかわいい嫁さんを養いながら子供とわっきゃうふふしたいのだ!
給料低くて家に居場所がない生活なんてしたくない!
そんな中見つけたこんな求人に手を出した俺を誰が責められるだろうか…
…
【未経験者歓迎!】
若手が活躍するアットホームな職場! お花に囲まれた空間で働きませんか? 最初は先輩が一緒について教えてくれます。
業種:冠婚葬祭、空間デザイン、ディスプレイ、サービス…
給与:基本給18万円+職業手当5万円+住宅手当(1万)
休日・休暇:週休二日制
待遇:貸別荘あり、有給休暇、昇給あり、制服貸し
…
給料も他の花屋さんに比べれば5万円くらい高いし、空間デザインもかっこいい。給料もさらに上がるなら結婚を視野に入れても大丈夫だろう。ホームページも綺麗だし、みんな楽しそうだ。
それに…ホームページ見て気になったが葬儀の装飾っていうのも今まで見たことないし、興味がある。店舗もやってるみたいだし経験者はそっちもやるのかな?
会社も花屋さんとしては規模が大きいし、ここなら楽しく毎日が過ごせそうだ。
よし。ここに決めた!
…
…
どうしてこうなった?
ここをブラックと言ったら本当のブラック会社に失礼だから言わないが想像の10倍は大変だった。
まず、若手が活躍ってつまり、年を取るとみんな続かないから辞めるってことでしょ?
本当に若手が活躍してるし…
そして、週休二日制って完全週休二日制でないので、月に週休二日が一回あるってこと。
これ、騙される人多いから!
さらに、給料も他の花屋に比べればもちろん高いがバイトしてた頃の店長の3倍は働いてますから…
さらにさらに、貸別荘って…先輩に聞いたら誰も行ったことがないらしく存在すら知らないとは…
アットホームな職場って書いてあってアットホームな職場だったことがある人がいたら誰か教えてくれ!
パワハラ凄いんですけど!
もう、休みは本当の意味で体を休ませないと続かない…
これは社会人2年目になったときに知ったのだが、昇給って職業手当が1000円上がるだけ…
基本給がじゃないところがポイント!
4年目のとき自宅手当なくなったから実質1年目のときより給料下がったけどね!
唯一の救いが残業代がでるというところ。
…最初の30時間は付かないけど。
出勤時間と退勤時間は決まっているが仕事が終わらないと残業しないと帰れない。
絶対定時に帰らせる気ないだろ!
月の残業時間120時間は当たり前。
家はシャワーを浴びて寝るだけの場所になりつつあった。
…
さて、ここで俺の仕事内容と一日の流れを説明しよう!
◆仕事内容
・基本の出勤時間と退勤時間
8:50~17:50(休憩1時間)
・葬儀の現場でお花の装飾。【花祭壇】の作成、施工。
・花束、フラワーアレンジメント、スタンド花の作成。配達。
◆具体的な仕事内容
①花祭壇装飾(お通夜がある日)
7:00 出社
7:10 仕事内容の確認
7:30 会社で花祭壇、供花(お札がついている祭壇の横のカゴに入ったお花)の作成。
8:50 朝礼
9:15 お客様と電話で打合せ
9:30 花祭壇の続き作成。
11:30 作った花祭壇をばらして、車に積み込み。供花の札の確認。
12:30 現場(葬儀会場)へ出発
13:30 現場到着
14:00 現場装飾開始
16:00 装飾完了
16:30 御宗家の到着、供花の札確認と札のセッティング
17:00 スーツに着替えて現場待機
18:00 会社へ出発
19:00 帰社、終了報告。翌日の現場の確認、打合せ
19:30 明日の現場の準備、休みの人の準備、手伝い等
22:00 退社
②花祭壇片付け(告別式がある日)
8:40 出社
8:50 朝礼
9:15 出棺用の花束や道具の準備
9:30 現場(葬儀式場)へ出発
10:30 現場到着
11:00 告別式開始
11:30 お別れの準備、葬儀屋さんの手伝い
12:00 片付け
13:00 自宅飾りの準備、出発まで待機
15:00 自宅飾り終了
16:00 帰社、終了報告。翌日の現場の確認、打合せ
16:30 明日の現場の準備、休みの人の準備、手伝い等
19:00 退社
…
これが主な業務だ。
このスケジュールはほんの一例にすぎず、お通夜の時間や飾りの開始時間は場所によって変わってくる。
さて、これを見てどう思うだろう?
葬儀の花屋の場合は上記の①と②に分かれるのだが、②は1年目とか2年目の新人のお仕事である。
そして、4年目、5年目となれば一人で行くことが多い。
もう少しベテランになると下の子を連れていけるので逆に楽になる。
よし、気になる部分にどんどん突っ込んでいくぞ!
①での業務だが、まず定時に出社したら間に合わない。
よって、一時間くらい早く出社するのである。
さらに、お通夜が18:00からがほとんどでこの時点で定時こしてるぞ!
帰ってからもいろいろ業務があるし…
なんだって?
休みの人の準備とか手伝いとかしないで早く帰ればいいだって?
馬鹿を言ってはいけない。
世の中ギブ&テイクなのだ。
人の手伝いをせずには自分の仕事を手伝ってくれるなんて甘い世界ではない。
よって、必然的に自分を助けるためにも人の手伝いをしないといけないのだ。
それを知らない最初の頃に休み明け仕事終わらず大変なことになったのは言うまでもない。
あと突っ込むところは…
ああ…休憩がない。
この際、休憩がないのはいいだろう。
よくないのはしっかり休憩時間は計算されていて1時間多く働いていることになる。
つまり、一か月で23時間…およそ3日くらい多く働いてるのと一緒だ。
給料が他の花屋より多いって話はしたが、俺はとても嫌な計算をした。
およそ給料は引かれるもの引いてない場合で34万くらいもらっていた。
しかし、残業120時間で1日の働く時間が8時間だとしよう。あと、休憩時間分の23時間を足すと143時間である。
すると、約18日分多く働いていることになる。
1か月30日として出勤は23日くらいだから、毎日働いて88時間残業しているのと同じである。
…
別の考え方をしよう!
要は1か月41日出勤して34万円もらっているのだから日給約8300円。
つまり時給にして約1037円。
…
うん。
時間で考えても給料で考えても駄目だった。
これが、正社員の現状であると理解してもらえたら幸いだ。
なので、繁忙期で睡眠時間を削ってがんばった俺が出勤中にふらふらして階段から転げ落ちてもしかたないと思う。
うん。
しかたないのだ。
まあ。
これが俺の人生を大きく変えるきっかけになったのだからよしとしよう。