~第二の錦織圭たちに贈る言葉(23)~『ストロークはスクエアスタンスで打つことを心掛けよ』
〜第二の錦織圭たちに贈る言葉(23)〜
『ストロークはスクエアスタンスで打つことを心掛けよ』
1. まえがき;
2019年全豪オープンの決勝はジョコビッチ選手VSナダル選手であった。
しかし、結果は6−3、6−2、6−3でジョコビッチ選手の圧勝であった。
ジョコビッチ選手も『完璧な出来だった。』と述べていた。
ナダル選手の何が悪く、ジョコビッチ選手の何が良かったのか。
私の分析を述べる。
2. 贈る言葉;
グランドストロークのスタンスは一般的に4つに区分される。
スクエア、セミオープン、(フル)オープン、クローズドである。
前方への体重移動が出来るのはスクエアかセミオープンである。
打点が低い時はスクエア、打点が高い時はセミオープンでストロークするのが良い
が、インパクトの瞬間の前方への体重移動に優れているのはスクエアである。
全豪オープンの決勝でのナダル選手のフォアハンドストロークはほとんどがオープンスタンスであった。この為、インパクトのボールに体重が乗らないので相手コートに落下後の打球に勢いが出ない。おまけに、トップスピンが効いているのでジョコビッチ選手には打ち頃のボールになっていた。
一方、ジョコビッチ選手は低い打点では確実にスクエアスタンスで打球し、高い打点ではセミオープンで撃っていた。追い詰められたボールには止む追えずオープンスタンスになっていたが、ナダル選手にとっては伸びのあるボールを打たされる場合が多くあり、ミスショット、イージーボール返球がジョコビッチ選手より多くなっていた。
このため、ジョコビッチ選手は自分のリズムを壊すこと無くプレーできていた。
これが『完璧な出来だった。』の言葉になったと思われる。
また、二人の対戦は数多くされているため、ジョコビッチ選手の予測がほとんど当たっていたので、ナダル選手のエース級のショットにも追いついていたのが印象に残る。
オープンスタンスの場合、インパクトの瞬間までボールを注視することが難しい。
スクエアスタンスなら、顔と胸はボールと正面に向き合ってインパクトできるが、
オープンスタンスでは、顔を胸に対して90°曲げていないと顔の正面でインパクト出来ない。通常は45°くらい顔を横にひねって打球する。この為、インパクトまでボールを注視せずに目をボールから離してしまってインパクトする。最後まで注視したとしても、目がボールを斜めに見てしまうのでインパクトの精度が落ちる。
同時に、オープンスタンスで体重移動したら、体のバランスが崩れるので、インパクトの瞬間に前方への体重移動が出来ないので、打球に伸びが無く、相手選手にとっては打ち易いボールになってしまう。
また、体重移動が出来ないため、所謂『手打ち』のストロークになってしまう事が多い。ナダル選手もジョコビッチ選手の伸びのある打球に『手打ち』で返球する場面が目立った。
ナダル選手の敗因は『身に着いてしまったオープンスタンスの癖』であった。
3.あとがき;
錦織選手は4回戦でカレーニュ・ブスタ選手に6−7、4−6、7−6、6−4、7−6(10−8)でやっと勝利した。苦戦した理由はブスタ選手のバックハンドストロークのスピードと精度であった。ブスタ選手のバックハンドストロークはスクエアスタンスでテイクバックが小さく、インパクトまでのラケットスピードが速く、インパクトがスイートスポットの真ん中で捉えられている事であった。これからのストロークを象徴している打ち方である。対戦相手は打球方向の予測が遅れる打ち方である。
予測がしにくい訳は、通常はテイクバック位置からラケットを振り始める時に打球の種類と相手コートへのプレースメント位置を決める。その瞬間に頭脳の海馬から気の玉がプレースメント位置に向かって飛んで行く。その気の玉を相手選手が感じることで相手選手は予測ができる。そしてインパクトポイントに向けてラケットを振る。テイクバックが小さく、ラケットスピードが速いと気の玉が飛んで行った瞬間からボールをインパクトするまでの時間が短くなる。この為、相手選手は予測してから一歩を踏み出す時間遅れがある分、相対的に一歩の踏み出しが時間的に遅れることになり、思ったより早くボールがプレースメント位置に到達するので追いつけなくなるのである。
テークバックが大きく、フォロースルーが大きいテェイム選手が伸び悩んでいる理由もここにある。
また、錦織選手のフォアハンドストロークがオープンスタンスが多かったのも気になる点ではあった。
『諸君の健闘を祈る』
目賀見勝利より第二の錦織圭たちへ
2019年2月26日
追記1:2019シティーオープン(ATP500ワシントン大会)の準決勝をTVで見た。メドベージェフ選手VSゴヨブチック選手の試合でゴヨブチック選手が2-6,2-6であっさり負けた。敗因はオープンスタンスのフォアハンドストロークによるバックアウトミスの多発であった。ゴヨブチック選手のフォアハンドストロークはすべてオープンスタンスであった。このため、メドベージェフ選手からの返球に強打したが、自打球からの反力で体が微妙に押し返され、ラケットが微妙に上向きになってバックアウトしてしまったのである。スクエアスタンスならインパクトの瞬間に体を前に押し出せるので自打球の反力で体が押し返されることはない。練習で確認してみてください。 (2019年8月4日 追記)
追記2:2021マイアミオープン(ATP1000)の望月選手(17歳)の1回戦をTVでみた。3-6,3-6でコキナキス選手に敗れた。敗因は望月選手のフォアハンドストロークがすべてオープンスタンスであったこと。スクエアスタンスで打てるタイミングでもオープンスタンスであった。せめてセミオープンで打っていればもう少し打球に威力が出たのだろうが、それもなかった。悪い癖が身についたものである。あと、ストロークからのネットダッシュの出球でもランニングショットで、出球が有効かどうかの判断がないままネットに向かってに走っていた。これは、出球を打つ前からネットに走ることを決めているからのプレーで、このようなネットダッシュではパッシングの洗礼を受けることは必定である。17歳という若さ故の欠点であるが、指導者の知識不足が責められる。TVの解説者は良いことしか言ってくれない。長所はプロにとっては当然のことで、褒められても何の意味も持たない。少年少女のテニスプレーヤーがTVを見ているのであるから、解説者は何が悪いのかをしっかり説明しないと将来に強い日本人プレーヤーが育たない。才能ある望月選手の1年後のプレースタイルがどのように変化しているだろうか、期待すること大である。 (2021年3月28日 追記)