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この作品には 〔ガールズラブ要素〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

あの日の約束、繋いだ手

作者: 夕張時雨

お久しぶりです、アリスです

短編ですが、投げておきます(っ^ヮ^)╮ -

え?魔女はどうしたって?あっはっは、ナンノコトダカ?


うるさいくらいに鳴り響くスマホのアラーム音。うっすら目を開けると、窓から差し込んでくる朝日が眩しい。

「うぅ……もう朝なの……?」

近くに置いてあったスマホを手に取り、アラームを止めた。気を抜くとまた夢の中へ落ちてしまいそうな眠気と戦いながら、時間を見てみる。

「なんだぁ……まだ八時じゃん。おやすみ……って、もう学校に行かないと間に合わないじゃん!」

と、寝落ちしかけたところで私はベッドから飛び起きた。急いで学校に行く準備を始める。もう眠気などとっくにとんでいた。

家から学校まで約十五分。今からだと、なんとかギリギリ間に合うくらいだった。

(昨日、遅くまで夜更かししてネトゲのイベントやってたのがいけなかったかなぁ…)

昨晩のことを後悔しながら準場を進めていると、ガチャリとドアが開いて双子の妹である(かえで)が部屋に入ってきた。

(今日もサラサラなショートの黒髪と、紅い瞳が綺麗だなぁ…)

そんなことを考えながら慌ただしく準備している私を見て、呆れたように声をかけてきた。

「お姉ちゃん、なんで制服を着てるかは何となく察しがつくから一応言っておくね。今日、土曜日だから」

「……へ?」

私は少し惚けてから、もう一度スマホの画面を見た。そこには、今の時間と一緒に土曜日と出ていた。

「………………二度寝するね」

「いや、起きたんだから朝ごはん食べちゃいなさいってお母さんが言ってたよ」

着替え途中だった制服を乱雑に脱ぎ捨てて、布団にダイブしようとした所で楓に止められた。

「昨日からイベント回ってて、あんまり寝てないんだけどぉ……」

私、霧雨さくら(きりさめさくら)はリアルに友達が少ししかいなく、休日はもっぱら部屋にこもってゲームという典型的なネットゲーマーだった。

楓とは違う、手入れが行き届いていないボサボサの長い銀髪に蒼色の瞳。自分も、楓のような綺麗な黒髪が良かったと何回思ったことか……

そして、もう一つ周りに秘密にしていることがある。それは、双子の妹の楓が好きだという事だ。

きっかけは何だったか覚えていないが、妹に対しての好意が一人の人間としての好意に変わったのだろう。

自分でも、おかしいということは分かっている。同性同士、しかも実の双子の妹に恋をしているのだから。

「ま、ゲームもほどほどにしないとまたお母さんに怒られるよ。お姉ちゃん」

「……分かってるよ、楓」

私の部屋から出ていく楓の背中を見つめながら、私はそう呟いた。早くこの気持ちを伝えたいのに、一歩が踏み出せない。そんな気持ちと、葛藤し続けてきた。



数日後、学校の創立記念日で休みだから、ということで私は楓と遊園地に出かけることになった。

「んー、遊園地に行くなんて久々だなー」

私は、まだ少し眠気から覚めていない頭を無理やり覚醒させたところだ。秋も半ばということもあり、少しずつ肌寒くなってきた。

「まぁ、お姉ちゃんはまず外に出ないもんね」

「しっ、失礼な!私だってたまには外にだって出るんだぞ!……一ヶ月に一回くらいは」

外に出る用事だって、新作ゲームの販売とか即売会だけどね……

「はぁ……それより、早く行こうよ。バスに間に合わなくなるよ」

楓にそう言われ、小走りでバス停まで向かうと丁度バスが来た時だった。そこそこの距離を走ったからか、暑いくらいだった。

「危ない危ない……ギリギリだったねー」

「まったく……もう少し余裕をもって家から出ないからだよ。起きた時間もギリギリだし……」

私は、楓のお小言を半分聞き流しながら今日のデート(一方的)に胸を踊らせた。

「つぎはーランドパーク前ー」

そうこうしているうちに、目的の遊園地まで着いた。

「ね、ねぇ楓。チケットってどうやって買うんだっけ……?」

「はぁ……私が買ってくるから、お姉ちゃんはここで待ってて。絶対にどこか行っちゃダメだからね?」

「わかってるってばー。あ、あれ美味しそうだな」

はぁ……とため息が聞こえる。

「分かったよ、一緒に行こ。危なっかしいんだから、手ぇつなご?」

そう言いながら、楓が手を差し出してくる。

「あ、うん……」

私は少し気恥しく、俯きながら楓の手を取った。

(はわわわ……楓の、手を……)

今ごろ、私の顔は真っ赤に茹で上がっているであろう。顔が暑いし。

「すみません、チケット大人二枚で」

ササッとチケットを買うと、ゲートの前まではけた。

「お姉ちゃん、はいこれ。失くすと再入場出来なくなるから」

「あ、楓。お金渡すから……」

そう言い、バックの中から財布を取り出そうとした。

「いいよ、チケット代は私の奢り。その代わり、お昼ご飯奢って?」

「わ、分かったよ。あんまり高いのはダメだからね……?」

私たちは、そんなことを言い合いながら手を繋いだまま遊園地の中へ入っていった。

「遊園地に来たのなんていつぶりだろうね。私もう覚えてないや」

「しばらく来てないからね。特にお姉ちゃんはろくに外にも出ないから」

正論すぎて、ぐうの音も出ない。まったく、私と楓の間にはこうにも差があるのだろうか。お姉ちゃんの威厳というものが全くないじゃないか。

「と、とりあえず何から乗る?」

「私はなんでもいいよ。お姉ちゃんこそ久しぶりの遊園地、楽しんだら?」

そういわれても、何が楽しいのかさっぱり分からない。こんなことになるのなら、ネットで調べておけば良かったかなぁ……?

「じゃあ、まずはお化け屋敷行こうか。楽しそうだし」

私は、パーク内の地図を見ながらそう言った。

「別にいいけど……お姉ちゃんって、怖いのとかビックリするやつ大丈夫なの?」

「まぁ、ホラゲとかはよくやるから慣れてるよ。そういう楓こそ、怖いんじゃないの?」

「そ、そんなことないよ?ほら、お化けとか所詮幻だし!人が作り出した幻想だし!」

なんで、そんなに焦っているか分からないが、大丈夫と言ってるのだからいいのだろう。「じゃあ、行こうか」

私は久々の遊園地に心を踊らせながら、お化け屋敷へと向かった。


入り口で懐中電灯を渡されると、中へ進んでいった。

「うわぁー、やっぱり中は暗いね……なんか過ごしやすそう」

「そう思うのは、多分お姉ちゃんくらいだよ」

真っ暗な中を、懐中電灯の光だけを頼りに進んでいく。正直、道に迷わないかが心配だ……

「なんか、ひんやりするね。今にも出てきそ……」

そんなことを言いかけた瞬間、近くの井戸から血塗れの人が突然出てきた。

「うぎゃぁぁぁぁぁぁぁ!」

びっくりしたのか、楓は私の手を握ったまま突然走り出してしまった。

「ちょ、ちょっと待ってってばー」

結局、そのあと一度も止まること無く出口まで来てしまった。普段から引きこもってばかりだからか、私はゼェゼェと肩で息をしていた。

出口にいたキャストの方に懐中電灯を渡し、(呼吸が荒い私たちのことを不思議そうに見ていたが)近くにあったベンチまで移動した。

「ねぇ……ゲホッ、大丈夫?いきなり……走り出した……けど」

「う、うん。大丈夫だよ、というかお姉ちゃんこそ大丈夫……?」

正直、大丈夫じゃないです。飲み物が欲しい……

「楓……怖いの苦手なら先に言ってよ……無理なら違うアトラクション行ったのに」

「何言ってるのお姉ちゃん!別に怖くなかったってば!」

そう言っている楓の顔には、冷や汗が浮かんでいて顔からは血の気が引いていた。

「ほら、楓。こうしてると落ち着くでしょ?」

そう言って、私は楓の頭を撫でてあげた。今日が平日で良かった、と改めて学校に感謝した。

「うぅ、もう子供じゃないんだからやめてよ……」

そう言って俯く楓の頬には、薄く赤みがさしていた。

私たちは数分間そのままでいた。

「それじゃ、次は何しようか?」

「お姉ちゃん、今何時?」

そう言われ、手につけている腕時計を確認した。時刻は十二時手前。

「そろそろお昼になるぐらいだね。お腹も空いたし、ご飯食べよっか」

「そうだね、どこにしよう」

そう言って、貰ったパンフレットを楽しそうに眺める楓。その楽しそうな横顔を見ているだけで、今日ここに来て良かったと思ってしまう。

「あ、あんまり高いとこはやめてよね……?私持ちなんだから」

「んふふー、分かってるよー。お姉ちゃん」

(楓さん、その笑顔むちゃくちゃ怖いです……)

「よし、ここにしよう!ほらお姉ちゃん、行こ?」

私は楓に手を引かれ、目的のお店へと向かった。

幸い、お化け屋敷から近いところだったためそんなに歩かずにすんだ。

「走ったせいで足がもう痛い……疲れたぁ」

注文を既に済ませ、テーブルに突っ伏しながら料理を待っていた。

「ほら、お姉ちゃん行儀が悪いよ。きちんと座って」

「だって、ほんとに疲れたんだもーん。それに、テーブルは冷たくて気持ちいいし」

そうこうしているうちに、注文した料理が運ばれてきた。ちなみに、私はオムライス。楓はなんとかドリアだった。

「あ、このオムライスふわふわで美味しぃ。はぁ、天国ぅ……」

「あ、このドリアも美味しいよ。ほらお姉ちゃん、ひと口食べてみてよ」

どれどれ、と私は楓からひと口貰った。そう、楓が口をつけたスプーンで。そう意識した瞬間、私は顔が熱くなった。我ながら、免疫が無さすぎると思う。

「どうしたの、お姉ちゃん?顔が赤いけど」

「っ!な、ななななんでもない!ほんとに美味しいね、これ!」

正直、味なんてまったく分からなかったが不自然なのでそれとなく感想を言っておく。

その後、黙々と食べ続け店を出た。

「次はどこに行く?ちっちゃい水族館もあるみたいだけど」

地図を見ながら楓が言ってくる。

「んー、じゃあそこ行こうか。のんびりできそうだし」

水族館の中に入ってみると、そこはまるで幻想の世界に迷い込んだようだった。

小規模ながら、たくさんの魚がいる大水槽に三百六十度ぐるっと見回せる透明トンネルなど楽しい要素ばかりだった。

特に楽しかったのが、クラゲ展だった。

「わー、クラゲが沢山いるよ!ねぇねぇ、楓。ほら見てみてよ!」

「お姉ちゃん分かったから。少しテンション落として、恥ずかしい……」

光るクラゲや不思議な形をしたクラゲ、はてまた巨大なクラゲなど様々な種類のクラゲがいた。もちろん、水族館の売店でクラゲのキーホルダーをお揃いで買いました。

「えへへ、楓とお揃い……ふへへ」

「……まったく、お姉ちゃんったら」

私は、あまりの嬉しさに楓がなんと言ったか聞き取ることが出来なかった。

時刻は四時手前、そろそろいい時間だ。

「ねぇ、お姉ちゃん。最後にあの観覧車乗ってから帰ろうよ」

「おぉー、大きい観覧車だね。綺麗な景色が見れそう」

パンフレットによると、日本でも大きい方らしくかなり遠い所まで見れるそうだ。

ゆっくりとゴンドラが上に上がっていく。時間は、夕日が少し差し込めて来たぐらいだ。

「あぁー、こんなに綺麗な景色を見れるなんて……それだけでもここに来れて良かったなぁ」

「ほんとに綺麗だね。このまま溶けて消えちゃいそうだよ」

私たちは、その後も観覧車でのんびりと景色を堪能した。時間は丁度いいくらいか。

なにせ、この後には楓に告白するという重大なミッションが残っているのだ。

「ね、ねぇ楓。久々にあの公園寄ってみない?」

「ん、いいよ。帰り道だしね」

帰り道をのんびりと歩いていく。もちろん、手は繋いだままだ。帰り道の途中に、昔よく遊んでいた公園がある。

「この公園懐かしいね。よく二人で遊んだよね」

そんなことを言いながら、二人でベンチに座る。秋ともなると、夕方にかけて冷え込むのでお尻にひんやりとした感触がある。

「そうだね、あの頃は楽しかったなぁ……あ、あのさ楓。聞いて欲しいことがあるんだけど…」

「いきなり改まってどうしたの?」

言うんだ……今日こそ伝えなきゃ。楓が離れてしまう前に。

「楓、私は貴女の事が好き。姉妹としてじゃなくて、恋人として。愛してるって言ってもいいぐらい。だから、私と付き合ってくれませんか?」

私の心臓は緊張のし過ぎで今にも破裂しそうだ。

「………ふふっ、お姉ちゃんらしい告白の仕方だね」

「わ、笑わないでよぉ……本気なんだから」

「答えは、もちろんだよお姉ちゃん。私も大好き。いや、愛してるよ、お姉ちゃんの事を。でさ、まさか好きな人にすることくらい出来るんでしょ?」

「え?なにを……」

(なんだろう、全くわからない)

というのは嘘だが、少し気恥ずかしくてしたくない……

「もー、キスだよ。キス」

「あ、あぁ……そうだよね」

やっぱりしなきゃいけないのか。しかも、こんな人目につきそうなところで?

「ちょ、ちょっと待ってこんなところでやったら誰かに見られるんじゃ……」

「だーめ、待ちませーん」

私と楓の顔の距離が縮まっていく。そして、二人の影が重なり合う。

どちらからともなく、顔を離す。楓の頬は、赤く染まっていた。きっと、私もそうなのだろう。

「……ねぇ、お姉ちゃん」

「ん?どうしたの、楓?」

「これからもよろしくね。私のお姉ちゃんとして、彼女として」

そう言って笑う楓の顔は、もう一度惚れ直してしまいそうなほど綺麗で可愛かった。

夕日に照らされ、オレンジ色に煌めいているキキョウの花が風に舞っていた。

それの光景は、まるで私たちを祝福しているかのようだった。きっと、この先もたくさんのことが待っているのであろう。それでも、この手だけは離さないと心に誓った。


はい、ぶっちゃけ前挙げたやつの大幅改稿版ですね

はいそこ、手抜きとか言わない

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― 新着の感想 ―
[良い点] チュッもしているんだけど、手を繋いでいるところが印象的ですね。やはりこの二人は元気に手を引いて歩いてるところが良いです。しかしそんな二人の、恋人らしい事をしたときの照れている姿ドキドキしま…
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