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純白のクーペ
「お前、どうしたの、コレ」
「どうしたって、買ったに決まってるし」
「オレのと同じモデルの二枚ドアか。よく見つけたな、古い車なのに。しかもターボじゃないのか、コレって」
「ダサいって。『クーペ』って言ってくれるかな、二枚ドアじゃなくて」
助手席にオッチャンが乗り込んだのを確認して、キーを捻る。
右ウィンカーを点滅させながら、明け方の幹線道路に合流。ギアをセカンドからサードへシフトアップしてアクセルをグッと踏み込み、右車線を疾走する。ターボチャージャーのタービン音が甲高く鳴いている。
「おい、ラジオつけていいか」
「ん? ないよ」
「……は?」
「納車の時に外してもらった。エンジン音聴くのに邪魔だし。車体も軽くなるから」
「お前な……」
「運転しながら音楽聴くとか、車嫌いなんじゃないの。もったいない」
最近、オッチャンは母と会っていないらしい。二人の間に何があったのかわざわざ尋ねる程、オレも子供じゃなかった。
オッチャンはオッチャン。
ただ、それだけで良かった。