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さぁ座って

 彼女は恥ずかしがっているのか少し俯いてしまっている。

 その姿を見ているのも可愛いのだけども、それでは何も聞けない。曲についての話題は少し置いておいて他の話を聞くことにした。


「いつもここでピアノを弾いているのですか?」

「そうですね、この学校は音楽部が無いので、放課後はピアノいつも空いているんです。結構自由に使わせてもらっているわ」


 そう聞くと、彼女は顔を上げてくれた。今の質問なら大丈夫だったのだろう。

 先ほどよりは恥ずかしさが和らいでるのか表情に余裕を感じる。でも少し顔が赤みがかかっている表情を見ているだけで心はドキドキしていた。

 音楽部の無い学校は珍しい気がする。どこの学校でも金管楽器が多少は揃っていそうなものだ。高校にもなれば音楽の先生もいるだろうに、音楽部があっても良さそうなものだ。部員が集まらなかったのか、顧問になる先生がいないのか……、あまり深く考えてみた事は無かったな。

 

「音楽部が無い学校って珍しいですよね。ピアノだったら弾いている結構人いそうですけど」

「そうね。ピアノは結構弾ける人多いはずだから他にも弾きたい人がいるかも、私が使っているから遠慮しているのか恥ずかしがっているのかもしれない。でも弾きたいと言ってる人がいるとは先生から聞いた事なかったわ。あなたは?」

「僕はピアノ弾けませんから、聴く専門ですね」


 ピアノは弾いてみたかった。弾いたこと無いけど。あんな素敵な曲を奏でられるなら自分もピアノに触れてみたい。そんな思いは心の中に芽生えていた。

 でも彼女の腕前を前にして無様な格好を出すのが目に見えていたので聴く専門という言葉を出した。


「弾いてみたいとは思わない?」

「そりゃあ、まぁ、弾けるなら……」


 聞かれて思わず答えてしまった。


「じゃあちょっと弾いてみなよ、私の曲だけ聞かれてフェアじゃないわ」

「いや、でも弾いたことないから、分からないよ」


 僕は手を前に出して、無理というアピールを前面に出して遠慮しようした。


「大丈夫、私が教えてあげる。私もそんなに上手ではないけど何も知らない人に教えるくらいはできるわ。さぁ座って」


 彼女は立ち上がり今まで座っていた場所に座るよう、促すように手の平で指し示した。

 僕はちょっと遠慮していやいや、という仕草を取っていたが、目線をがっちりと合わせられてにっこりと微笑まれると観念するしかないように感じた。

 椅子の上をポンポンと叩いて彼女は僕が座るのを待っている。


 抵抗むなしく諦めて椅子に座ると彼女は僕の肩に手をかけた。

 僕は彼女の手が肩に載っているだけなのに鼓動が早くなる。なぜ肩に手を乗せる必要がある?

 そう思っていたが、そんな事より座る姿勢から指導が始まった。

「椅子の高さは大丈夫?」

「座り方は、姿勢は背中を真っすぐして、深く座らないで浅く腰かけて」

 僕は緊張していたので既に背筋はピンとしていたし、言われるがまま椅子は浅く腰を掛けて座るようにした。


 彼女は形から入る方なのだろうか? それとも初めからきちんとしていないと癖ができて苦労するようなことなのだろうか? 

 それでもライトユーザーであろう僕にそこまでさせるのはちょっとどうなのだろうかとは心の中で思っていた。

 それとも変な我流がついてしまうのを防ごうとしてくれているのか?


「ちなみに楽譜は読める?」

「簡単な記号なら……」


 ほんと基本的な記号しか知らないし、音符も一瞬でどの音か判断するのは難しい。見慣れない言語を前にしてすぐに理解できるほど出来てはいない。

 彼女は今の答えでどこまでわかってくれているだろうか?

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