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リンゴ

 目を覚ますとリンゴと書置きが残されていた。


「リンゴがダメにならないうちに食べて下さいね。それとピアノは弾けないけどピアノを録音したテープを置いていきます。はやく良くなって下さいね」


 僕は眠気に勝てなかったのを申し訳ないと思った。

 せっかく来てくれたのに大したた会話もできなかった。

 挙句リンゴを切るようにお願いしたくせに、切って貰っている間に眠ってしまったのだ。


 リンゴを食べるとちょっと生温い。

 冷蔵庫に入れていたわけでもないので当然か。

 皮がウサギの形になっている。

 ただ切り込みを入れるだけでは無くて丸く切ってある。

 可愛いな。手先も器用なんだな。志村さんはウサギが好きなのかな? リンゴを切りながら何を考えていたのかな? リンゴを見ながら感傷に浸る。


 しかし、考えて見ると包丁を使わせて指を怪我させたらどうするんだよ。

 彼女の手はリンゴの皮を剥くためじゃなくてピアノを弾くための指なんだ……

 そう思うと、どうしようもなく申し訳なくなると同時に、そんな事にすら気づけない自分に辟易した。

 手切ったりして無いかな? 大丈夫だったかな?

 志村さんの料理の腕を疑っているつもりじゃない。そもそも志村さんの料理の腕なんて分からないし、そんな話をしたことも無かった。次に会った時は聞いてみようかな? 


 隣に置いてあるテープに目を移す。

 カセットテープとプレイヤー、イヤホンがグルグル巻いてある。

 ゆっくりとイヤホンをほどいてカセットテープを入れた。

 表面には「DEMO」と可愛らしい字で書かれてある。


 イヤホンを耳にして再生ボタンを押した。

 少し雑音が混ざったような音がサァーっと流れた後にピアノの音が奏で始められる。

 この間、志村さんが弾いてくれた曲だ。イヤホンに優しい音が流れてくる。

 いったい何時録音したものだろうか?

 不甲斐ない僕にこんな事までしてくれるなんて志村さんは優しい人だ。

 彼女の録音してくれたピアノを聞きながら心を落ち着かせていた。



 急にむずむずとしてきてトイレへ行きたくなった、

 さっきはほとんど体が動かなかった。しかし今は体は動かせそうだ。しっかり眠ったので体が回復したのだろうか? 僕は良くないとは思いつつも志村さんのピアノを聴いていたくてイヤホンをしたままトイレへ向かって歩いて行った。


 何故かトイレは埋まっていてなかなか空きそうにない。

 僕のむずむずはどんどんと大きくなっていく。通路に戻るとすぐ傍に階段があった。

 仕方が無いので、下の階へ行くことにした。


 階段を下りている途中で急に頭痛が襲ってくる。

 うぅ、またか。そう思って瞬きをして意識をしっかり持ち直そうとするがどんどん激しくなった。

「なんだこれ?」

 顔が引きつって目の前がふらつく。

 そして意識が一瞬飛んだ。

 ふわりと心地よいような気分になったが、直ぐに殴られたような痛みが走り目が覚める。

 意識が戻った時には目の前の階段を転げ落ちていた。

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