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主を失ったテニスラケット

作者: 空き缶
掲載日:2008/06/27

 部活の引退式。

 三年の先輩が泣きながら最後の練習をしていた。

 泣いた先輩はいなくなり、誰もが泣かずにもくもくと練習に励む。

 残されたのは青のラインが入った、三年間丁寧に使われてきた、主を失ったテニスラケット。


 ラケットは見ていた。三年間。

 そしてこれからどうなるのかも知っていた。

 想像通り、ラケットは捨てられた。それなりにラケットとしての役割を果たしていた。

 そんなことは関係ない。

 古いものはただ去るのみ。


 ラケットは暗闇にいた。

 植物の中で埋もれていた。

 何も見ず、音だけが聞こえていた。

 一体どれくらいがたったのだろう?

 それすら分からない。

 グリップが外に出ているのは知っていたけど。だからといって何ができるわけでもない。


 ――声が聞こえた。聞いたことのないような高く、鈴を鳴らすような声だった。

「先輩! 何でこれ捨てられてるんですか?」

「さぁ? よく分からないな」

「もったいない……。これもらっていいですか?」

「いいよ。どうせ誰も使ってないし。でも、そんなぼろいもんでいいの?」

「いいんです!」


 ラケットは引き抜かれた。握られた感じが初心者だった。

 光を得たラケットは歓喜の叫びと悲しみの声を上げた。

 久しぶりに見た景色は、昔インターハイで握られていたときと変わらず、青く青く澄んだ空だった。

 この少女もすぐ、このラケットとお別れするのだろう。それまで、ラケットはラケットであろうとするだろう。


                再び主を失うときまで。

なんとなく部活の風景を見ていたら思いついた話です。

至らない点が多々あるでしょうし、むしろだめだめだと思いますが、読んでいただきありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
[一言] 鳥肌立ちました。ラケットの孤独と諦念、そして未来につながる淡い期待のようなものが丁寧に織り込まれていて、短いながらによい作品だったと思います。「グリップが外に出ているのは知っていたけど。だか…
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