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異世界征服物語  作者: COCO
第一章 辺境編
2/23

#02 俺が救世主?

「魔が世界を飲み込まんとする時、聖痕せいこんを持つ騎士、馬小屋に降臨す。その剣は一振りで魔を切り裂かん。これが救世主聖十字架セイントクロスの伝説です」


聖馬が助けた少女、アリシアが語るは、この魔法世界パンゲアに伝わる創世の伝説の1つである。

聖十字架セイントクロスとは、大昔、地上に突如とつじょ現れた魔族が、人間を滅ぼそうとしたとき、どこからともなく現れ、瞬く間またたくまに魔族を退けた英雄、らしい。


「私、思ったんです。あなたが聖十字架セイントクロスの再来だと」


目をうるませ、聖馬に抱きつきながら話すアリシア。


年齢としはと同じか少し下か?

なかなかの美少女で、いい身体をしている。

押し付けられた胸の感触からして、かなりの巨乳であることは間違いない。


(こりゃ、妹の美羽みわより大きいかな?)


などと、妄想もうそうにふけりながらも、会話は続けた。



「うん、それで君はどうしてあのオーガに追われていたの?」


その質問に、ハッとしたかのように、アリシアはこちらを向き直りしゃべりだした。


「お願いします、救世主様、私たちの村をあのオーガ達からお救いください」


アリシアが言うには、自分の村は辺境の開拓地で、魔界(魔族領)にほど近いところにある。

これまで、魔族が領境線を越えてこちらに来ることはなかったのだが、先日、大挙して押し寄せてきたとのこと。

村の男たちは武器を手に取り戦ったが、多勢に無勢たぜいにぶぜいで、あっという間に村は占拠されてしまったらしい。


「中央に魔族軍襲来と援軍要請の使者を出したのですが、そちらはいまだ何の音沙汰おとさたもなく、仕方なく、私たち隠れていたものが少数、近隣の村々に救援を頼みに抜け出したのです」


「で、馬を使おうと馬小屋に来たら、オーガに捕まってしまったと」


聖馬はアリシアの、この後のセリフを先読みしてしゃべった。


アリシアはコクンとそれにうなずいた。


「大体、事情はわかった。それで、君の村はどこなんだ?」


「えっ?」


アリシアが驚く。


「助けていただけるのですか?」


「当然だろ?俺は騎士なんだぜ」


聖馬はなんの抵抗もなく答えた。


(馬にも乗ったことないのに、騎士とか言っちゃってるよ。さらに相手について何の情報もなく、自分のこともよく分かってないのに、引き受けちゃましたー!信じらんねー。この世界の俺のこの自信は一体どっからくるのでしょうか?)


聖馬は頭の片隅で、今までなら考えられない自分の言動に、驚いていた。

まるで、誰か別の人がもうひとり自分の中にいるのでは?と思えるほどの変わりっぷりであった。


そんな聖馬に抱きつくアリシア。


さっき以上の密接に心躍こころおどる。


「ありがとうございます」


アリシアは泣きながら礼を言った。


「そうと決まれば、早いほうがいい。早速出発しよう。詳しい話は道中聞くことにするよ」


「はい!」


聖馬とアリシアはすぐさま出発の準備にかかった。





アリシアは破れた服を捨て、予備に持ってきていた服に着替えた(オーガに見つからないように行かねばならないため、長期間の旅路を覚悟していた)。

馬小屋には1頭だけ馬が留めてあり(聖馬の頬をめた馬のこと)、それに手綱、鞍、あぶみを取り付け、走れる状態にした。

聖馬に馬の扱いの経験なんてないはずなのに・・・

これまた手馴れた手つきで全て行った。


「アリシア、こっちはOKだ。そっちは?」


「はい、こちらもOKです」


聖馬は先に乗り、手を差し伸べアリシアを馬上に引き上げた。


「では、出発しよう」


「はい、救世主様!」


「おいおい、救世主はよしてくれよ。俺はそんなご大層な者じゃないぜ」


「私にとっては救世主様ですが・・・。わかりました、なら騎士様でよろしいでしょうか?」


「それもなんか、名前で呼んでくれ」


「そういえば騎士様、お名前をお聞きしていませんでした。なんとお呼びすればよろしいでしょうか?」


「俺の名前は、十文字聖馬じゅうもんじせいま。セーマでいい」


俺は元の世界でいつもそう呼ばれていた。


「では、セーマさま。避難所にご案内します」


「頼む、アリシア」


セーマとアリシアは道中を急いだ。





道中、セーマはアリシアから、詳しい状況を聞いた。

魔族軍は、なんの前触れもなく、村に現れ、蹂躙じゅうりんしだした。

男たちは総出で、女子供老人を避難所(天然の要害)に逃がすため、魔族軍に立ち向かった。

だが、歯が立つわけはなく、むなしく殺されていった。

彼らの犠牲で稼いだ時間で、大半の女子供老人は、避難所に逃げ込めたが、そこまでだった。

襲われてすぐ、中央に援軍要請の早馬を飛ばしたが、連絡はなく、時間だけが過ぎていった。

手をこまねいていても仕方ない。

避難所の指揮をとる村長が、娘である姉エミリアと妹のアリシアに救援要請の使者として、近隣の村々におもむくように命じたのだ。

この後、アリシアはセーマと出会うのである。


「なるほど、そうだったのか。で、お姉さんは無事なの?」


首をふるアリシア。


「わかりません、でも、無事でいてほしいです」


急に涙ぐみ、セーマの背中にぎゅっとしがみつく。


(おお、たまらん!)


こんなことではいかん!アリシアにスケベ心がバレてしまう。

セーマは話題を振り、スケベ心を打ち消そうとした。


「お姉さん、どんな人なの?」


「美人で、頭が良くて、責任感が強い、私の自慢の姉です。オーガは性欲が強い種族です。あんなのに捕まったら、一生慰み者にされてしまう。ああ、姉さま・・・」


スケベ心を打ち消そうと話題を振ったつもりなのに、かえって刺激が強い話になってしまった。

セーマの頭の中は、妹に隠れて興じていた、オーガによる陵辱もののエロゲーがフラッシュバックしまくっていた。


「助けるよ」


「えっ?」


「必ず君の姉さんも助けてみせる!」


「はい!」


セーマは馬にむちを入れた。





ここは避難所。

自然の洞窟を利用して造られた要害である。

地形が狭隘きょうあいであり、大人数で攻めることができない。

そこに生き残った村人たちは立てこもっていた。


ちょうどセーマ達がそこに到着しそうな距離まで近づいていたときだった。

そこにオーガの斥候せっこうらしきものたちが訪れ、年配の男となにやら話しこんでいた。

やがて、もめ出し、オーガが若い女性を何人か連行しようとしだした。

年配の男は突き飛ばされ、そのオーガの蛮行を止める者は、その場にはいなさそうだった。

そこにセーマたちが到着した。


「なにやってんだ」



セーマはまた、何のためらいもなく、剣を抜き去りつつ、オーガに近づいていった。


「ああ?」

「なんだこのガキ」

「一丁前に剣持ってるぜ」


3人の武装したオーガは、セーマを完全に見た目でめきり、ゲラゲラ笑い出した。



「ああ?」


不愉快そうな声をあげつつ、オーガ3人に近づくセーマ。

前回と同じだった。

セーマはあっという間に2人を切り伏せた。

そして、最期の1人の剣を跳ね飛ばすと

そいつに剣を突きつけ、動けなくした。



「おい、ブタ。お前らの大将に伝えろ。これからお前ら全員殺しに行くから。探すのめんどくせーから全員集まってろってな」



いきなりの決戦要求である。



そして、そいつの尻を蹴り飛ばして、伝令として逃がしたのだった。



その一部始終を見ていた避難所の人たちは、オーガが逃げ出した瞬間に大歓声!

大挙して避難所を出て、セーマに殺到しだした。

そんな中、アリシアが年配の男に近づいていった。


「パパ!」


「ア、アリシア!、お前、無事だったのか!」


「パパ、喜んで、すごい人連れてきたから」


「すごい人って・・・。そうだ、援軍は?どこか援軍を出してくれたのか?」


「援軍は、彼だけだけど・・・」


「はあ・・・」


その顔に明らかな落胆の色が見える。


「なんてことをしてくれたんだ!やつらをこれ以上刺激してどうなる!」


「で、でも、パパ。あたしを守ってくれたのよ。セーマは。」


なにかおかしい、セーマは私たちを守ってくれたというのに。

それに、姉エミリアの姿が見えない。

アリシアはそのことを聞くことにした。


「パパ、一体何があったの?そういえば姉さんは?姉さんは無事なの?」


一瞬、顔を曇らせる村長。しかし思い切ったようにしゃべりだした。



「その姉さんが、エミリアが敵に捕まったんだ!」



「姉さんが・・・」


目の前が暗くなっていくアリシアであった。





「昨日、エミリアが捕らえられたとオーガ側から連絡があった。手を出して欲しくないなら、代わりに若い女を数人よこせ。それが嫌なら、要害を出て決戦せよ、とな」


村長は、セーマに現状を語った。

ここは要害のため、残った若い男20名で何とか守っていられる。

だが、それ以上の戦力はない。

援軍が来るまでは、彼らをいたずらに刺激しないのが、エミリアを助けるために必要だったのだと。


セーマはその村長の判断に呆れ返った。


「そんなことしても、足元見られて、次々に無理難題吹っかけられるだけだぜ」


「それはわかってる、だからできるだけ、時間を延ばしてだなあ・・・」


「時間延ばしに、若い女の子差し出すのかよ」


「それは違う!そんなことしたいわけではない!」


村長の苦しい胸の内もわかる。

だが、結局、オーガたちの思う壺なのだ。


「丁度良いじゃないか。向こうも決戦したがってたんだろ?ならさっさと片付けちまおうぜ!」


周りで聞いていた村人たちから歓声が起こる。


「簡単にいうな!相手は200人はいる軍団だぞ!いくら腕が立つといっても、貴様一人加わったところでなにができるというんだ。!」


わなを仕掛けよう」


即座にセーマは返答した。


「ただ、みんなの助けが必要だ」


セーマは2人の若者が、そのセリフに目を輝かせたのを見逃さなかった。


2人の名は、ジョルジュとヨシュア。


この村の若者の中心人物である。





「また、斥候せっこうられました。」

オーガ陣営に沈黙が流れる。

斥候の1人が、1人の若い剣士セーマに決戦要求されたことを伝えてから、1週間。

毎日、斥候が襲われ、ほぼ全員の首が野山にさらされていた。

オーガ陣営では、もはや見過ごすことができない事態に発展していた。

更に悪いことに、中央からの奴らの援軍がここからほど近いところまで来ているという噂を斥候が聞きつけてきていた。

この事態を受けてオーガ軍団の団長ゲド・ゲドーは、決断した。


「そのガキに決闘を押し込む。バル・バドー、お前が相手をしろ」


「ははぁ!」


バル・バドーは、オーガ軍団最強の戦士である。


オーガ側からすれば、敵はセーマただ一人。

日時、場所、武器等は向こうに選ばさせざろうえないが、向こうは動ける兵が20名ぐらい。

こちらの方が人数は多い。

小細工をしてきたとしても、たかが知れている。

セーマが神出鬼没だから厄介なのだ。

決闘を口実に、奴を引きずり出せれば、あとは数でごり押しできる。

ゲド・ゲドーはまともに決闘する気など、端からなかった。




「セーマ様、敵から決闘状が届きました」


ジョルジュがセーマに連絡してきた。


「来たか、なんかしらリアクションがあると思ってたが、決闘状か」


セーマはなぜか浮き浮きしながらその報告を聞いていた。


「どうします?」


ジョルジュがセーマに問いかける。



「無論、受けて立つ!」



そのいさぎよい姿にジョルジュは見とれていた。


「早速だが、ジョルジュ。やってもらいたいことがある」


「なんなりとお申し付けください!」


ジョルジュは自分も浮き浮きしていることが不思議だった。


ひとつ間違えば、いつ全滅してもおかしくない状況にあるのに・・・




ここはオーガ軍団司令本部幕舎、今、軍の主だった者たちが集まっている。


「団長、奴からの返答がきました。日時は明日の夕方、場所はトウト盆地、武器は剣、決闘の立会い人は双方2人までとする。以上です。」


それを聞いて、ゲド・ゲドーは笑い出した。


「返答が遅いから、さぞ策を練っていると思っていたが、トウト盆地とは。あそこはやつらの要害の近くだが、小さく見渡しがいい場所だぞ。兵を伏せるにも、何かを仕掛けるにも全く不利な場所ではないか!」


ゲド・ゲドーは、セーマが戦術がない、ただ腕が立つだけの剣士と知って少し安心した。

戦術には、定石というものがあり、そこを見ることで、相手の力を推し量れるのだが、セーマは戦術においてはただの素人ということがわかってしまったのだ。


「ならば、こちらの手も決まった。決闘前にトウト盆地を囲む森に兵120名を伏せさせよ。決闘の勝敗の如何いかんを問わず、頃合をみて、奴を全員でほふるのだ。奴に返答しろ。その条件で受けるとな!」


「本当に大丈夫でしょうか?」


バル・バドーがしゃべりだした。


「トウト盆地に行くには、奴らの要害に行くための細長い道を途中まで通らないといけません。ここで何かされたら・・・」


バル・バドーの発言にゲド・ゲドーは笑い出した。


「なら、奴らが盆地を選んだ理由を説明してくれ、バル・バドー」


少数の兵で戦果をあげるなら、伏兵しやすい、障害物の多い場所を選ぶのが戦術としてはセオリーである。

それをしなかった時点で、奴らが素人であることがわかる。

あの細長い道で何かするにしても、あの少人数では、爆薬を使っても、与えられるダメージは少ない。攻撃のタイミングが難しいからだ。それに何かされるのを見逃すようなヘマを、この軍団がするわけはない。


「考えすぎだ、バル・バドー。それより奴の相手、よろしく頼むぞ!まあ、奴が、最強戦士のお前に勝てるわけないがな!」



相手の力量を看破かんぱし、万全の対策を立てたゲド・ゲドーの笑い声が幕舎中に鳴り響いていた。




登場人物紹介


アリシア

T156 B88(Fcup)W55 H86 17歳

辺境の村の村長の次女。

魔法世界におけるセーマの初めての彼女。

姉のエミリアに比べるとやや地味で内気だが、十分美少女である。

元々は、地元の名士グレーブス家に輿入れの予定であったが・・・


エミリア

T160 B85(Dcup) W56 H88 21歳

アリシアの姉。

辺境きっての美女の呼び声が高い。

屋敷の従者ジョルジュと真剣恋愛中。

頭が良く、責任感があり、気風がよい。

親同志の決めた妹の縁談に、妹の気持ちを思い心を痛めている。


村長

T170

辺境の村の長。

表向きは村のトップだが、本当は?

いつも周囲に翻弄されるかわいそうな人。


ジョルジュ

T180 23歳

村長宅に仕える使用人。

エミリアと真剣恋愛中。

村長に結婚を反対され、それを認めさせるチャンスを狙っている。

村の若手のリーダー格。

後に「セーマの片腕」と呼ばれる。


ヨシュア

T175 25歳

名門グレーブス家の跡取り。

村の若手のリーダー格のひとりだが、性格にやや問題あり。

所詮お坊ちゃんか・・・


ゲド・ゲドー

T185

オーガ軍団団長。

外道、下衆の卑劣漢。

しかし、その実力を発揮するには相手が悪すぎた・・・


バル・バドー

T190

オーガ軍団最強戦士。

脳筋、猪武者。

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