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異世界征服物語  作者: COCO
第二章 中央編
19/23

#19 王都到着

聖パンゲア王国王都クロスランド。

今、ここは聖女ユニの話題で持ちきりであった。

彼女が到着してからすでに一週間。

彼女は朝から晩まで王都中を飛び回っていた。

大司祭クレメンスの根回しに付き合う形となっているが、訪問先の関係者はクレメンスの話などそっちのけでユニに群がった。

クレメンスは完全にユニの付き人状態であった。

今日も朝から数箇所廻り、その帰りの馬車の中にユニはいた。


「はあ・・・」


さすがの過密スケジュールで疲れが溜まり、ため息が出るユニ。


「今日もすみませんな。ご苦労をかけて。明日は一日、完全にお休みとなりますが、ユニさまに個人的なお誘いが多数来ております。いかがいたしますかな?」


クレメンスは、国中の有力者たちがユニに送ってきたラブレターをユニの前でずらっと見せた。


「全てに応えるのは無理でしょうが、有力貴族からのお誘いは受けても損はないと思いますぞ。例えばこのサルマン殿は、2大勢力の筆頭で、まだ相手が決まっていない息子が何人かいるご様子。決して悪い話ではないと思いますぞ」


数日前、王宮にて大舞踏会が開かれユニも出席させられていた(実際はユニのお披露目会であったが・・・)

国中の有力者が集まりユニに群がった。

その時多数の取り巻きを引き連れて現れたのが、そのサルマンとかいう貴族だったらしい。

あまりに多くの人が一度に現れたので、ユニはほとんど憶えていない。

クレメンスは、暗にユニに見合いしろと言って来ているのだが、彼女にとっては正直迷惑なだけである。

ユニがここまで我慢してクレメンスにくっついて来たのは、ただただセーマに会いたいという一心からである。


それなのに、他の男とくっつけられてはたまったものではない。


「大司祭様、お気遣いありがとうございます。ただ最近疲れが溜まっているのか、なかなか朝起きれない状態なのです。ですので明日だけは一日ゆっくりさせてもらえないでしょうか?」


疲れてるのは事実である。

それに明日はやりたいことがあるのだ。

セーマ以外の男に会っている場合ではない。


「そ、そうですか。いやこれは失礼をしました。どうも歳をとると余計な気を回したくなるようで。どうかお許しを」


丁寧に謝るクレメンス。

老人特有の押し付けがましさではあるが、悪意がないのがわかるので、ユニは特に腹も立たなかった。


「そういえばセーマ殿はいつ到着されるのです?そろそろのはずですが?」


ユニが話題を変えた。


「おお、そうでした!すっかり忘れておりました。先ほどエリックから連絡がありまして、順調なら明後日には到着するとのことです。いよいよやつの化けの皮が剥がされるときがきたようですな。検分の方、よろしく頼みましたぞ」


クレメンスはどうもセーマが気に喰わないようだ。

初めからセーマの素性を忌まわしいものと決め付けている。


セーマの噂はいろいろな形で王都に伝わってきている。

たとえば「待ち伏せを1人で撃退する魔人」「魔導士キラー」「全ての女性が振り返る美男子」「惚れない女性がいない美丈夫」「見ただけで女性を落とすフェロモン男」「フェロモン散布機」「見ただけで女性を逝かす絶倫男」「触ると妊娠」「水子生産機」などなど。


明らかに噂に尾ひれがついているが、ユニとしては心中穏やかではなかった。


「大司祭様、わたし買い物がしたいんですけど、明日午後にでも町に出ていいでしょうか?」


ユニが初めてクレメンスにお願いをした。


「それはどうかご勘弁を。ユニさまになにかあったらただでは済みませんので。その代わりといってはなんですが、通販をご利用なさってはいかかですかな?あとでカタログ持ってきますので」


ユニの買いたい物は、正直、あまり人に言える代物ではない。

なので通販など利用したくないのだが、どこに売ってるのかもわからないのも事実。

仕方ないので通販でもOKということにした。


(はぁ、明後日か。早く会いたいな・・・)


セーマとの再会までの時間に、思わずため息が出るユニであった・・・





「なに?聖女が誘いを断ってきただと!」


そう激高するのは、サルマン・アーレンベルク伯爵である。

エリザベス陣営の筆頭貴族である。

先日の舞踏会でユニを見初めたらしい。

さっそくアプローチを開始した次第だが、残念ながらいまのところユニに見向きもされていない。

歳はイワンとそう変わらない。

だが、容貌・才能に優れた側室はいくらでも欲しい。

政略結婚の駒として優秀な子供が欲しいからだ。

大貴族の当主として、一族を守るために、それは当然のことである。

息子も4人ほどおり、すでに上の2人は世帯を持っている。

三男はちょうど年頃であり、エリザベス王女とうまくいけばいいと考えている。

だがその下から男子に恵まれず、かろうじて幼い四男がひとりいるだけである。

あとは全て女子である。

野心家として知られるサルマンである。

イワンという強力なライバルに勝つためにまだまだ子供が、特に男子が必要だった。


「残念ながら。過密スケジュールによる疲労が溜まっているとのこと。丁寧に断りを入れてきました」


筆頭執事のゴードンが答えた。


「ふん!疲れがなんだ。気取りおって。わしを誰だと思っておる!」


「旦那様、またそのようなことを・・・。悪い癖ですぞ」


ゴードンがたしなめる。


ゴードンは先代よりアーレンベルク家に仕えている。

サルマンよりも年上であり、彼が若いときから接してきた。

先代が他界した今、彼に物が言える数少ない人のひとりである。


「うっ、そ、そうか・・・」


押し黙るサルマン。


「機会はまだあります。明後日には、セーマとかいう無頼漢も来るとのこと。その歓迎の席でもう一度アプローチしてみてはいかがですかな?」


「そういえばそうだったな。よし、そうしよう。しかし、そのセーマとかいう男、一体何者なのだ?あまりいい噂を聞かんが・・・」


「以前から聞く圧倒的に強いという噂は本当のようですな。しかし女にはだらしないようです。まあ、あのエリックが付いているからでしょうが。そういえば奴に関してはもうひとつ耳寄りな情報があります」


「なんだ、それは?」


「奴の護衛部隊があのスカーレットとイワンの部隊だというのはご存知のはず。実は今回の旅の途中で、奴がスカーレットに忠誠を誓ったというのです」


「それは本当か?」


「はい、確かな情報です」


「おいゴードン!それのどこが耳寄りなのだ?あのイワンに強力な味方ができたということではないか!」


「ならなぜわたしが以前、イワンより先に接触し、取り込めるなら取り込み、できないなら早々に葬るべきと勧めたときに動かなかったのです?」


「やったさ。当然・・・」


セーマたちを出発早々に襲撃した暗殺部隊があったと思う(#11)

その黒幕がサルマンだった。

十三人会からの要請だったのだ。

サルマンは多額の資金提供を受けており要請を断れなかった。

先代は十三人会に危機感を感じ近づかなかった。

ゴードンも先代と同じ考えであった。

そのため、一族のためとはいえ、十三人会と付き合いだしたサルマンをゴードンは苦々しく思っていた。

サルマンも、散々ゴードンにそのことで諌められていたので、襲撃はゴードンに内緒で行っていた。


「左様でしたか。まあ済んでしまったことは仕方ありませんな。しかし今回奴がイワンに付いたことは天恵かもしれませんぞ」


「なぜだ?理由を申せ」


「イワンはあのとうりおおよそスキャンダルとは無縁の男。しかし奴は違います。奴の評判が落ちればイワンの足元をすくうのも容易たやすいかと・・・」


ニヤッと笑うゴードン。


なるほど、武力ではなくゴシップで追い落とそうとするならセーマのような者と一緒にいれば、それだけで不利である。

王都のような武器とは無縁の場所での戦い方としては、もっとも適した戦術といえる。


「なるほど。いわれてみればそうだな。ならゴードン、これから奴に対してはどうすればいい?」


先代からの知恵袋であるゴードン。

サルマンもなんのかんの言って、最後は頼ってくる。

それに気をよくしたゴードンが意見を述べようとしたとき、部屋を叩く音がした。

使用人の1人が急な客の来訪を知らせてきたのだ。


「モルドラントさまが折り入って旦那様と話がしたいと参られております」


その名前を聞き、急に顔が険しくなる二人だった・・・





ここは王都手前の宿場町。

セーマたちの宿泊所の一室で、セーマを取り囲んで、イワン、スカーレット、エリック、スーザンが座っていた。


なにやら深刻な雰囲気である。


まずエリックが口を開いた。


「セーマ殿、長旅お疲れ様でした。もう明日には王都に到着します」


「うん」


次にスーザンである。


「セーマ殿の武勇にはこれまで何度も助けられました。改めて御礼申し上げます」


「うん」


続いてイワン。


「ただ少々、噂が一人歩きしているようでして、どうも都のものたちがセーマ殿に非常に敏感になっているようなのです」


イワンは例の噂のことをいっているのである。


「ほう」


最後にスカーレット。


「なのでセーマ殿、お願いですから、王都では何があっても剣を抜かないで欲しいのです!」


「なぬ?」


さすがにこれは厳しい。


いかにセーマといえど、素手では何かあったとき、対処しきれるとは限らない。


「なにもずっとという訳ではありません。最初だけです。みんなの誤解が解けるまでです!」


スカーレットが必死にお願いする。


「誤解って?俺なんて思われてんの?」


(さすがに「無敵の絶倫男」が近くにいたら、どんな親も男も警戒するわな・・・)


エリックは自分の事を棚に上げてそう思った。


ほとんど王都のマスコミが作り上げた虚像であるのだが、無敵の強さは本当であることはわかっているので、みんなの警戒心がそのようなおかしな噂をもっともらしく育て上げてしまったのである。


その強さが恐ろしくて、もしなにかされても、どうすることもできない・・・


その恐怖心を和らげるためにも、セーマの武器の携帯、使用はなんとしても控えてもらいたいのだ。


「お願いします!」


王女のスカーレットに、こう頼まれては聞かないわけにはいかない。


「わかりました。殿下を信用して、私の剣を一時殿下に預けましょう」


ほっと胸をなでおろす4人。


(なんだ?俺そんなに心配かけてたのか?)


別にセーマはなんにも悪くない。

いや、みんなを助けてる。

この隊で1番の功労者は間違いなくセーマであろう。

しかし、その圧倒的な強さとフェロモンが、各宿場町で、得意気にセーマの周りを飛び回る

エリックによって、エリックによって、エリックによって、エリックによって


エリックによって、誇大に喧伝されたのだ~~~~~~


この事態は、つまりその結果なのである。





「ユニさま、通販の荷が届いてますよ」


クレメンスがわざわざ届けてくれた。


「ありがとうございます。大司祭様。助かります」


満面の笑みでお礼をするユニ。


クレメンスの顔が溶けるようにほころんでいく・・・


荷を受け取ると、ユニは一礼してすぐ部屋に閉じこもった。


(よっしゃー。さすが王都!さすがマアゾン!明日に間に合ったー!)


内心ガッツポーズのユニであった。





次の日、ついにセーマは王都の門をくぐった。

長い旅だった。

辺境を出発してから12日、ようやく中央へ到着したのである。

そこから馬車は一直線に王宮へと向かった。

すでに王宮には歓迎式典の準備が済んでおり、一行の到着を今か今かと待ち受けていたのである。


「このまま馬車で会場近くのホテルに行きます。そこで荷を降ろしたらすぐ会場に駆けつけることになりますので」


迎えのものが途中で合流し、段取りを説明した。


それを聞くと女性陣はコンパクトを開いてパタパタと準備を始めた。


(この際仕方ないか・・・)


男性陣はそれを黙って見過ごす。


そうこうしているうちに馬車はホテルに到着した・・・



登場人物紹介


サルマン・アーレンベルク


国内2大勢力アーレンベルク派の筆頭貴族アーレンベルク家の当主

エリザベス陣営の筆頭貴族でもある。

爵位は伯爵。

歳はイワンとそう変わらず、旧知に仲でもある。

イワンと違い、側室を多数持ち、養子縁組で勢力を伸ばしている。

ただ男子が少なく、才能のある男子を産んでくれる優れた側室を求めている。

一見、子供を駒扱いにする冷徹な男の印象を受けるが、弱肉強食のこの世界で、一族を守るためには当然のことなのだ。

エリザベスの母ロザンナは、彼の実妹である。


ゴードン


アーレンベルク家の筆頭執事

先代よりアーレンベルク家に仕えている。

サルマンよりも年上であり、彼が若いときから良き教師であり兄であった。

先代が他界した今、彼に物が言える数少ない人物である。

アーレンベルク家が、先代よりどうしても敵わなかったモロゾフ家に伍する家になれたのも、彼の老獪な戦略があったからである。

彼の戦略は物量戦である。

人材の質と歴史で敵わぬのなら、金と量で勝てばよい。

養子縁組で支持層を広げ、収益基盤を拡大し、謀略を仕掛け、正室と目されていたアグライヤを側室に追いやったのも、彼の暗躍によるものである。

ただ十三人会には、貴族間の勢力争いうんぬん以前に国の根底を覆すような危険性を感じており、資金のためとはいえ彼らと付き合うサルマンを苦々しく思っている。





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