#18 グロリア
次の日の夜。
部隊はすでに3日目の移動を終え、宿場町に到着していた。
で、グロリアの解術であるが、追いついてきたスーザンたちが昼間のうちに執り行い無事に終了。
グロリアは危機から逃れることができた。
そして今回の元凶である魔導士アルゴンゾは、厳重に封印され魔導刑務所に送られることとなった。
一応そこで色々取調べを受けるらしい。
「おそらく、何も聞きだせないだろう」
スーザンがいうには、仮にもプロをうたう暗殺屋がその口を割ることはありえないらしい。
そのため、アルゴンゾが化けたアル・アーシェフなる男がどうなったのかは、まずわからないだろうとのこと。
グロリアの地元に問い合わせてみたが行方不明らしい。
どんな経緯で知り合い、このような事態となったのかは闇の中だそうだ。
そして宿泊所のセーマの部屋では、グロリアがセーマに抱きついて泣いていた。
「つまり彼氏だと思っていた男が、いつの間にか倍以上年上のじーさんとすり替わっていたと・・・」
グロリアの遠距離恋愛の相手アル・アーシェフは、売れない画家だったらしい。
魔法学校に入る前から付き合っており、グロリアが地元を離れて学校の寮に入ってからは年に数回会えるかどうかという状況だった。
魔法学校は、セーマのいた元の世界でいうところの高校と大学が1つになったような所で、入学は16歳からということになる。
それから7年間魔法漬けの生活となるため、彼らに恋人がいないのはある意味当然であった。
なので、恋人がいる学生は入学前からいる場合がほとんどである。
つまりグロリアは10代前半から付き合っていたことになる。
それだけにショックは大きかった・・・となるところであるが、実はそれほどでもなかった。
もちろん好きではあった。
彼の存在があったからこそ、ここまで頑張ってこれたのは紛れも無い事実である。
しかし、いかんせん出会いが10代前半である。
恋に恋する年頃に出会い、その後滅多に会えない状態では、愛を深められるわけがない。
学生時代の彼女にとって、彼氏が好きというよりは、彼氏がいるという状況の方が大事であった。
特にシルビアというライバルを抑えるには、重要な要素であった。
出会いはこれからもある。
なにもアルだけが男ではない。
その辺ドライに考えれるのがグロリアなのである。
彼女がシルビアよりも評価が高かったのは(卒業寸前でシルビアに抜かれたが)その性格に拠るところが大きい。
そして目の前にはセーマがいる。
アルがいなくなった今、彼女の目にはセーマしか映らなかった。
「セーマさま、どうしよう、彼がいなくなっちゃいました・・・」
「まだ、そうとは限らないだろ。彼の家族とか知らないの?消息を知ってそうな人に片っ端から連絡してみなきゃ!」
「そんなひといませんよ。親や友達にも内緒の交際だったんですから」
グロリアは結構なお嬢様だったらしく、親が厳しかった。
売れない画家の卵など、連れて行っても認めてくれるわけが無い。
友達もその手の人が多く、迂闊に情報をもらせない状態であった。
「彼氏がいる」
そう公言できたのも、地元を離れ、寮に入ってからである。
そんな時、スーザンがセーマの部屋にやってきた。
ここに今、グロリアがいると聞いて。
そしてスーザンの口から衝撃の事実が語られる。
◇
スーザンがゆっくり話し出した。
「グロリア、落ち着いて聞いてね。アルゴンゾがゲロったの。実はあなたの恋人アル・アーシェフはね、初めからこの世に存在しないの」
グロリア&セーマ(はぁ?)
固まるグロリアとセーマ。
「つまり、あなたがアル・アーシェフと思っていた人物は、初めからアルゴンゾだったというわけ」
ドサッ!
グロリアが倒れた。
◇
さすがにこれはショックだった。
いくら気持ちが揺らいでいたとはいえ、一度は好きになった相手が実は存在していなかったとは・・・
茫然自失のグロリア。
そんな彼女を抱きかかえ介抱するセーマ。
「じゃ、あとはよろしく」
そういうとスーザンは部屋を出た。
なんとも無責任で冷たい対応のように見えるが、この場合、彼女にはこれ以上どうしようもない。
セーマに任せるしかないのだ。
それがわかっていたのか、セーマはスーザンを目礼で見送った。
「セーマさま、お願い。今日は一人にしないで・・・」
グロリアはさすがに動揺が収まらないといった感じである。
「わかった。ずっと側にいるよ」
そういうとセーマはぎゅっとグロリアを抱きしめた。
◇
ここは宿泊所とは別の高級宿。
例によって泊まるのはエリックである。
いつもと違うのは、今日はシルビアと一緒ということである。
「シルビア、ワインでもどう?」
「変なもの入れないでね」
「はい・・・」
さすがエリック、学習能力を上回るスケベっぷり。
昨日の約束どおり、シルビアはエリックに抱かれに来ていた。
昨日の事情が事情なだけに、さすがにあの約束は反故にしても文句はいわないだろうとシルビアは思った。
しかし、相手がエリックである。
自分に有利な約束を簡単に諦めるわけが無い。
「確かに昨日はグロリアのことがあり、大変だったのはわかる。だが約束は約束だよ。それに僕は君の気持ちを尊重して昨日ダメな理由を聞かずに引き下がった。その僕の誠意にキチンと誠意で応えて欲しい」
ただ聞いているだけだと筋が通っているように聞こえるが、100%屁理屈である。
しかし、ここでエリックと揉めると立場が悪くなり、復活してきたグロリアにセーマを取られかねない。
なんやかんやいってもエリックは力がある。
こちらがエリックをセクハラで訴えても、逆にこちらが追い詰められる可能性もある。
最悪、本当に辞めざろうえなくなる。
せっかくセーマと関係を持つことができたのに、それは困る。
そのため仕方なくエリックの今日の誘いに乗ったのである。
「きゃ!」
後ろからいきなりシルビアを抱きしめるエリック。
背中には硬くなったあそこが当たっている。
「いいだろう?」
そのままベッドに押し倒そうとする。
「待って、シャワーを浴びさせて」
「このままでいい」
「いや!」
抵抗するシルビア、さすがに本気で抵抗する。
「このまま強引にするなら帰ります!」
シルビアがついにキレた。
それを見てまずいと思ったエリック。
「ごめんよシルビア。君があんまり魅力的なんでつい歯止めが効かなくなったんだ。君の言うとおりにする。約束するよ」
シルビアの機嫌が悪くならないように大急ぎで取り繕う。
「本当ですか?」
「本当さ」
さすがのエリックも強引にシルビアを犯すようなマネはしたくないと思っているようである。
「なら、わたしが「いい」というまで、いたずら防止にこれをつけていてもらえますか?」
そういうと紙の目隠しと手錠を差し出した。
「これが破られたら、約束を破ったということで帰らせてもらいます」
「これってなにか魔法で細工されているんじゃ?」
「なにもしてませんよ。ただの紙細工です」
「わかった。するよ。君を信用する」
しなかったら、そのまま帰られそうな雰囲気だったので、エリックは素直にその言葉に従った。
エリックに目隠し、手錠をつけるシルビア。
エリックはベットに腰掛けている。
「じゃあ、わたしシャワー浴びてきますんで」
「ああ、手早く頼むよ」
そんなやり取りをしつつシルビアはシャワールームへと向かった。
シャワーの音がする。
あのトビラの向こうにシルビアが裸でいると思うと、あそこがフル勃起してしまうエリック。
シャワーの音が止まりシャワールームの扉が開く。
そしてこちらに向かってくる。
その足音がする。
そのままエリックの服の前をはだけ、乳首を舐める。
そしてベッドへと押し倒し、ズボンを脱がす。
いきり立ったあそこを丁寧にさすり上げる。
「うお・・・」
予想外の積極的サービスに圧倒されるエリック。
しかし、手錠も目隠しも取れない。
ここまできて怒らせて帰らすわけにはいかない。
「くっ・・」
しかしサービスはますます濃厚になる。
今度はあそこの先から裏まで舌で舐められているのだ。
そしてついに、彼女の口によるご奉仕が始まった。
(だっだめだ!もう我慢できない)
辛抱たまらず、エリックは紙の手錠を破り、目隠しを外してシルビアに抱きついた。
「シルビア、愛してるぜーーー」
そう叫びながら、そのままベッドに押し倒した。
だが、なぜか身体全体が妙に大きい。
(シルビア、こんなに大きかったっけ?)
そう思いつつ、顔を上げる。
目と目が合う。
「はあ~い、あ・な・た」
なんとそこにいるのはシルビアではなく、スーザンだった。
一瞬で凍りつくエリック。
「ずいぶんと気持ちよさそうだったわね。そんなに溜まっていたの?」
「ス、スーザン・・・どうしてここに?」
「シルビアにどうしてもって頼まれたの。エリックが欲求不満気味で可愛そうだって」
(嵌められた・・・)
エリックはそう思ったが、もはや後の祭りである。
「まさか教え子たちにちょっかいかけてないでしょうね?」
明らかにちょっかいかけていることを知っていて、聞いて来ている・・・
「も、もちろんだよ」
「そう、ならいいわ。じゃあ、今晩は久しぶりにサービスするわね」
「お、お手柔らかに頼むよ、スーザン・・・」
歯をガタガタ震わせ、ビビリまくりのエリック。
こうして2人の熱い夜がはじまった・・・
◇
またセーマの部屋。
セーマは丁度、グロリアを抱き終えたところである。
ただ、どうも様子がおかしい。
経験があるはずなのに、やたらぎこちないのだ。
「グロリア、あの、もしかして初めてだった?」
その問いに、顔を赤らめて頷くグロリア。
彼氏がいたということなので、てっきり済ませているものとばかり思っていたが、実はそうではなかった。
彼氏と思っていたアルゴンゾとは実は年に1~2回しか会っておらず、そこまでの雰囲気にはならなかった。
なおかつ、こう見えてグロリアは10代前半の頃は「結婚まで大事にしたい」と考えていたのだ。
故にアルゴンゾとの性交渉はなく、魔法学校に入ってからも、それは同じであった。
そのため処女のままであったのだ。
シルビアを意識して、非処女を演じてきただけであった。
「お願い、セーマさま。このことシルビアには言わないで」
さすがに、これまで散々このネタでシルビアを口撃してきただけに、彼女にだけは知られたくないのだろう。
「あははは、わかった、誰にも言わないよ」
セーマは笑って、グロリアの不安をかき消した。
「よかった・・・」
その表情がとてもかわいい。
思わずグロリアを抱きしめてキスしてしまうセーマ。
「セーマさま」
「うん?」
「大好き・・・」
そういいながら、セーマに抱きつく。
2人の熱い夜もまだまだこれからであった・・・
◇
ここはいつぞやの薄暗い広間。
十三人会のメンバーが集まり、またなにやら話し合っている。
そこにはモルドラントの姿もあった。
「アルゴンゾがセーマ暗殺に失敗しました」
モルドラントが主要メンバーを前に報告した。
失敗の原因が、アルゴンゾの間抜けさにあることも続けて報告された。
彼を嫌っていたモルドラント、容赦が無い。
「やはり失敗したか。評判どおりだな」
「やつには荷が重すぎたのよ。初めからわかっていたことではないか」
「まあまあ、そこまで馬鹿にすることもあるまい。魔導士相手にどう戦うのかというデータが取れたではないか」
「警戒心が強いというか、とにかく頭がいいな。ちょっとした変化も見逃さない。今回も見破られていたようだしな」
「直接襲ってもダメ。間接的もダメ。今のところ打つ手なしか」
「しかし、このまま放っておくわけにもいかんだろう。なにか手を打たねば。イースターの前に、不安要素は取り除いておかねばならんからな」
「かといって、どんな手がある。下手に手を出しても、返り討ちにあうのがオチだぞ」
「確かに。力押しはもうやるだけ無駄でしょうな。ならば目先を変えてみてはいかがですかな?」
「というと?」
「倒せないのならその強さを、いっそのこと我らの目的のために利用してしまうのです」
その発言にニヤッと笑うメンバーたち。
「詳しく話を聞きましょうか?」
メンバーたちのうすら笑いが薄気味悪く広間に響いていた・・・
◇
次の日、移動中の馬車の中。
セーマの両脇にはシルビアとグロリアが座っていた。
2人ともセーマの腕に絡まり、安心しきった表情で寄り添っている。
向かい側にはエリック&スーザン夫妻。
スーザンの顔はテカテカ、エリックの顔は干からびていた。
「エリック、今日は元気がないな?」
「そ、そんなことはないぜ~セーマ殿~」
明らかにおかしい・・・
「まさかスーザン先生がエリックの奥さんとは知りませんでした」
セーマがスーザンに語りかける。
「も~、うちのひと迷惑掛けてませんでした、セーマ殿?」
「いえいえ、エリックにはいつも色々教えていただき、感謝しております」
「そ~ですか。それならいいんですけどね~。変なこと教えられたりしてませんか?例えば若い娘を手篭めにするとか~。まあ、セーマ殿がそんなことするわけないんでしょうけど~」
セーマはスーザンの言葉に苦笑いをするしかなかった。
まだ旅は4日目。
中央までの道のりは遠いが、スーザンが加わった今、襲ってくる連中はいないだろう。
セーマの気持ちはすでに中央へと飛んでいた。
そこでどんな運命がセーマを待ち受けているか?
期待と不安にセーマは胸を躍らせていた・・・
◇
聖パンゲア王国王都港。
今ようやく、ユニを乗せた船が寄港したところである。
そこには大勢の報道陣、一般大衆が待ち構えていた。
みんな聖女ユニを一目見ようと集まっていたのである。
ユニ到着の報は都中を駆け巡った。
中央政府も王宮も聖十字教会本部も、そして秘密結社・十三人会にも。
司祭モルドラントは、教会本部内の十三人会が掌握している部屋の一つを目指し歩いていた。
そして、その前で止まりノックをして部屋に入った。
部屋の中には1人の少年がいた。
その少年に一礼してモルドラントは話し出す。
「聖女ユニがただいま港に到着したとのことです」
「そうですか、わかりました。ではせいぜい働いてもらいましょう。ゴンドワナでのイースターのために。監視は頼みましたよ、モルドラント」
「承知しました。グランドマスター」
そういうとモルドラントは深々と最敬礼をした。
首都の華やかな雰囲気に下で、黒い陰謀が蠢きだしていた・・・
第二章 道中編 END
登場人物紹介
グランドマスター
T140
秘密結社・十三人会のボス。
見た目は完全に子供。
それ以上のことは一切情報なし。




