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異世界征服物語  作者: COCO
第二章 道中編
17/23

#17 既視感

「ごめん、君とはもう会えない」


アル・アーシェフはグロリアを前に別れの言葉を切り出した。


「そんな!ずっとあなたを支えに頑張ってきたのよ!寂しいのを我慢して、やっとここまできたのに・・・」


「いままで忙しいなか色々ありがとう。でも、もうダメなんだ」


「どうして?理由わけを教えて!納得できないわ!」


「君が僕を裏切って、僕を君のお仲間に売ったからさ・・・」


「何を言ってるの?わたしそんなことしてないわ!」


「なら、なんで彼らは僕の正体を見破ったの?僕の術は完璧だったのに・・・」


「どうしたの、アル?あなた変よ?隠密任務中のわたしにいきなり連絡入れて会いに来たと思えば、もう会えないとか、裏切ったとか見破ったとか・・・。一体どうしてしまったの?」


グロリアは、別れを切り出したアルを引きとめたくて、なんとか話の糸口を見つけようとしていた。


だが、アルは彼女の《隠密任務中》という言葉を聞いて、急に顔色が変わりだした。


(そうか・・・。術が完璧とかそうじゃないとかの問題じゃないんだ。連絡を入れた時点でダメだったんだ・・・・)


アルは自分が完璧と思っていた作戦が、作戦の肝となる部分以前のところで、ほころんでいたことに気がついた。


軍隊が隠密行動中に自分たちの居場所を外部に漏らすようなことはしない。

組織の中の限られた人たちしか知りえない情報なのである。

たとえ家族であろうと易々と連絡などとれるはずがない。


そんなところにいきなり魔道通信で連絡を入れたら、怪しまれて当然である。


グロリアを呼び出した時点で、すでにダメだったことに気づいたアルの顔がみるみる老けていく。


「アル、あなた顔が・・・」


老けゆくアルの顔をみて愕然とするグロリア・・・


「いや~~!アル~~~~!」


そう叫んで、手を伸ばすが、届かない。

アルはどんどん遠くへ離れていく・・・

そして暗い闇の中へと消えていった・・・


どんなに叫んでも、もうなにも聞こえなかった。

自分の声すらも。

ふと、そのとき聞き覚えのある声がした。


「グロリアちゃん!聞こえる?グロリアちゃん!」


それはシルビアの声であった。


(シルビアが呼んでる?シルビアが!)


そう思い、声の聞こえる方を見ようとした・・・


(はっ!)


グロリアは目を開いた。


目の前にセーマとシルビアが心配そうにグロリアを覗き込んでいた。


「グロリアちゃん、よかった!目が覚めたのね!」


そう言ってシルビアはグロリアに抱きついた。


ワーワー泣きながら。


「もうね、ずっと目を覚まさないんじゃないかと心配してたんだよ!」


そういいながら、鼻水をすすりつつ、泣きじゃくるシルビア。


なにが起こっているのかまだ良く分からず、キョトンとしているグロリア。


しかし、なにかすごくシルビアを心配させてしまうようなことを自分がしてしまったということは理解できた。


ここはとりあえずシルビアを落ち着かせなければならない。


「(なんだかよくわからないけど)心配してくれてありがとうシルビア。大丈夫。わたしは大丈夫だから」


そういいながら、泣きじゃくるシルビアを軽く抱きしめ、背中をポンポンと軽く叩いた。


そんな2人を見守るセーマ。


グロリアはセーマに話を振った。


「あのう、セーマさま。わたし一体どうしてたんですか?」


「それについては後でゆっくり話すよ。とりあえずグロリア、大丈夫なら服着よっか!」


「えっ?」


グロリアはそう言われて自分の身体を見た。


バスタオルを1枚掛けられているだけの状況に気づく。



「ヤーーーーーーーーーーッ!」



途端に顔を赤らめ悲鳴をあげるグロリアだった。





少し時間を遡る。


ここはスカーレットの部屋。


先ほどスカーレットはシルビアに送られてきたところだ。


スカーレットはベッドで横になり、天井を見上げて先ほどのことを考えていた。


(あたし、なんで泣いちゃったんだろう・・・)


セーマとグロリアのキスを見て驚いたのは確かだが、なぜかとてつもなく悲しくなったのだ。


(なんか昔、どこかで見たことがあるみたい・・・)


スカーレットは、キスシーンを見た瞬間、激しい既視感きしかんを覚えた。


そのシーンが、頭の中で蘇る。


それはセーマときれいな金髪の女性のキスシーンである。


それを思い出すたびに、胸が苦しくなり、同時になんともいえない郷愁が身体中に湧き上がるのだ。


(わたし、やっぱりどこかでセーマ殿と会っている。でも、それがいつのことなのかわからない・・・)


彼女もまた、この奇妙な記憶と既視感がなんなのかわかるのはずっと後のことである・・・





場面変わって、またセーマの部屋。


シルビアはスーザンとテレパシーで交信中。


セーマはベッドに腰掛け、グロリアを抱き寄せその頭を軽く撫でていた。


グロリアは病み上がりという立場を口実にセーマに甘えまくり。


女に甘いセーマのこと、グロリアに介抱を求められて断るわけがない。


そのイチャイチャ状態に、ちょくちょくシルビアの怒りの目線が送られてくる。


(こいつ、ようやく正気に戻ったと思ったら、もうこれかよ!心配して損したわ!)


その鋭い視線を承知の上で、更にか弱くセーマに甘えだすグロリア。


内心、その左目が光る。


(ちょっと出遅れたけど、勝負はこれからよシルビア・・・)


セーマはセーマで


(思ったとおりグロリアもいい女だわ・・・)


と、下半身ビンビン状態であった。


とはいえ、今の状況を忘れたわけではない。


シルビアの交信の様子をうかがっていた。


そしてようやく、交信が終わったようである。


「シルビア、スーザン先生はなんて?」


「はい、やはり正式な解術をしなければ危険とのことで、グロリアちゃんには一度合流してもらわなければならないとのことです」


「そうか、まあ、仕方ないね。だってさ、グロリア」


そういって話をグロリアに振る。


グロリアはセーマに抱きついて甘え続けている。


「え~~。グロリアやだな。セーマさまと離れたくない・・・」


そういうとさらに強く抱きついてきた。


「わがまま言わないの。早く治さないと危ないだろ?」


諭すセーマ。


「ブー」


セーマを意識して、できるだけ可愛らしく膨れてみせるグロリア。


そんなグロリアの服の襟首をシルビアが掴む。


「もうその辺にして。そろそろ帰るわよ。セーマさまもお疲れでしょうし」


シルビアはグロリアを引っ張って帰ろうとした。


「え~~。やだ~~。もっとセーマさまと一緒にいたい~~」


「わがままいわないの!明日朝一番にスーザン先生の所に行かなきゃいけないんだから!セーマさま、申し訳ありませんが今日は部屋に戻らせていただきます。グロリアちゃんはわたしが面倒見ますんで」


そういうと駄々をこねるグロリアを強引に引っ張って、シルビアはセーマの部屋を出て行った。


シルビア&グロリアを見送るセーマ。


(仲がいいんだか悪いんだか・・・)


ひとまず嵐は去った。


セーマにもようやく落ち着ける時間が訪れていた・・・





嵐の大海原を一隻の大型帆船が行く。

ユニと大司祭クレメンスを乗せた船だ。

行き先は聖パンゲア王国の首都である。


夜、ユニは夢を見ていた。

セーマとともに天界にいた頃の夢を・・・



「セーマ、お帰りなさい!」


ユニは、そういいながらセーマに抱きついた。


「ただいま、ユニ」


「よかった無事に帰ってきて・・・」


「心配しすぎ。こんな短時間のテストでどうにもならないよ」


「でも、ここのところ立て続けじゃない!あたし父様ミカエルに文句言ってやるわ!」


「どこも人手不足だからね。使われるってことは、ようやく僕も役に立つと思われてきたってことじゃない?それにイカロスはこんなもんじゃなかったんだろ?はやく追いつきたいんだ、僕は」


明るく自信に満ちたセーマ。

ユニはそれが愛おしくて堪らない。

セーマをさらに強く抱きしめる。


「どこにも行かないで・・・」


ユニが呟く。


そんなユニの頭をやさしく撫でるセーマ。


「また親馬鹿って、ミカエルたちに笑われるよ」


「もう、あたしはあなたのママなの!心配してなにがいけないのよ!」


「はいはい、育てていただき感謝しております!」


そういうとセーマはユニを抱きしめ返しキスをした。


「落ち着いた?」


セーマはユニを一旦離す。


「うん」


そういってまたセーマに抱きつくユニであった。




セーマはそのまま何か思い出したように話題を変えた。


「そういえば、さっきのテストで下(人間界)に降りたとき、スカーレットとリリスがいたよ。また例の連中に狙われてたよ」


例の連中とは、ラグナロクで敗北した神族の一派のことである。

彼らについて詳しいことは良く分かっていないが、ここ最近、やたらと活発になってきており、人間界の秩序を乱している。

ひとつわかっているのは、転生中の神族が狙われているということである。

彼らは人間界の秩序維持のためのキーパーソンとして転生しているのである。


「2人ともまだ小さくてね。可愛かったよ。襲った連中始末した後すぐ呼び戻されたけど、あの後大丈夫だったのかな?気になるよ」


そういって笑うセーマ。

セーマはミカエルの命令で、テストも兼ねて、下界(人間界)に秩序維持の名目で短時間、現界を繰り返していた。

現界先が、どの世界のいつのことなのかはセーマには一切知らされていない。

スカーレット、リリスが転生した先がいつのどこなのかも知らない。

ただ、現界先の明らかなる敵を殲滅せよ、とだけ指示されているのである。


「きっと大丈夫よ。2人とも強いから」


ユニはセーマに抱きついたまま呟いた。


「そうだね。またいつかみんなで会えるといいな・・・」


そういうとセーマは以前のことを思い出していた。


幼い頃、自分の世話をしてくれた2人・・・


転生中の今、2人はセーマもユニも憶えていないだろう。


同時に、いづれ近いうちに自分も下界のどこかに転生しなければならないことも覚悟していた。


(守るよ、君を、みんなを・・・)


そう心に誓うセーマだった・・・




ユニは目が覚めた。

まだ夜は明けていない。

いつの間にか嵐は過ぎ去り、外は静寂を取り戻していた。


「夢か・・・」


寂しそうにため息をつく。


「セーマ、早く会いたいよ・・・」


セーマへの思いを募らせるユニ。

船はもうすぐ目的地に到着しようとしていた・・・


登場人物紹介


スーザン・アントニオ

T159

シルビアとグロリアの魔法学校時代の教官。

魔導士としてはかなりの凄腕。

ある人物が旦那。

その人物が出世できたのも、アントニオ家の後押しがあったればこそ。

故に彼女には頭が上がらない。

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