初の能力行使
遅くなってしまいすいません。
国王の名前を入れるのを忘れていたみたいで、五話の『俺の武器の才能』に追加しておきました
国王の名前は、アルバート・ロン・フェルミーナで愛称はアルです。
たまに名前がないときなどがあれば教えてください!
魔方陣から浮かび上がってきたのは、真珠のような少し光沢のある純白の羽が幾重にも重なった神秘的な翼、足の指は三股に別れ獲物を捕まえるための鋭い爪、全てを容易にに喰いちぎることができそうな先の曲がった大きな嘴、猛禽類の鋭い眼をもった三メートルほどの鳥が出てきた。
「キュイ~」
その鳥は、見た目に反して小鳥のような産声をあげた。
そして、その大きな体から火花が散り、炎が吹き上がり始めた。
「ちょ、ちょっと待てっ!ここで炎は出すな!」
「キュイっキュ~!」
俺が反応したのが嬉しいのか、片翼二メートルにもなる大きな翼を羽ばたかせながら、俺に飛びついてきた。
「いや待てっ!お前でかいっ!」
「キュイっキュイ!」
俺の言葉を理解しながらも、俺のことを突いたり、羽で叩いたりしてくる。そうして不死鳥とじゃれついて(一方的にじゃれつかれて)いると、廊下が騒がしくなってきた。なぜ気づかれたかはわからないけど、こちらに向かってきているのは確かなので、不死鳥を隠さないといけない。
「えっと、不死鳥。」
「キュイっ!」
「名前つけろって?いや…今は時間が…」
「キュキュキュイっ!」
「わ、分かったから!……お前の名前は…ローズだ!」
「キュイ~!」
「じゃあ一度戻すな。また呼ぶから」
俺は不死鳥……ローズに一声かけて、魔力に変換して、体に吸収する。その直後、部屋のドアが勢いよく開けられる。
「イリヤ様!大丈夫ですか!」
「イリヤ様!いったい何があったんだ!!」
ドアを開けて入ってきたのは、宮廷魔術師長と騎士団長の二人だ。二人とも血相を変えて飛び込んできた。
「カール!ヴィル!い、いや魔法の練習がしたくて、魔力の動かす練習をしようとしていたんだよ」
「えっ!?いや、イリヤ様は今日、魔力の儀をしたばかりのはずでは?」
「う、うん。そうだよ。だから少しでも魔法が使えるようになったらと思って…何かおかしかったのかな?」
「いえ。普通はそう簡単に魔力の操作ができるものではないのですよ。」
「え!?そうなの?」
「ええ。魔力操作は師がついた状態で一週間ほどはかかるものですよ?…それを独学ですぐにできるなんて、一体…」
「何難しく考え込んでんだよ!できたもんはできたんだからいいじゃないか!なぁ!イリヤ様!がははは!」
二人は正反対な反応をした。神経質そうな男は考え込むのに対し、もう一人の男は豪快に笑い飛ばしている。
そして、この少し神経質そうな三十代の男は、この国、フェルミーナ王国の宮廷魔術師団の団長を務めている、カーリウス・ルーシュと言うルーシュ伯爵家の次男だ。肩まで伸びる青みがかった銀髪に、金色の瞳、すっと鼻筋のとおった美青年といった顔立ちで四角い眼鏡を掛けていて、学者のような雰囲気がある。
そしてもう一人の頭の悪…脳が筋肉でできていそうな(言い直せていない)豪快な男が、この国の騎士団の団長を務めているヴィルジール・ベリスカという、俺の父さんの元冒険者仲間で、力を認められ騎士団に入り、騎士団長にまで上り詰め男爵位を貰い受けた人だ。短いツンツンとした赤髪に、炎を宿したような赤い瞳、角ばった精悍な顔立ちをしている。190センチほどの筋肉の詰まった体をした巨人みたいな人だ。
「えっと、なんで魔力を使ったことが分かったの?」
「それはですね、魔力を使えるようになれば魔力を感じることができるようになるのですよ。」
俺はまたばれるのは困るので、理由を聞いたら、凄く単純な理由だった。…まさかそんな単純なことだったとは…考えが及ばなかった。多分浮かれていたんだろうな。
「それ!僕にも教えてよ!」
「それは国王様方に許可をもらってからです。それと、魔力の操作などは教えてもらうまでは、お一人でしないようにしてください」
「わかったよ…。」
俺は魔法の練習を禁じられて少し落ち込む。それを、ヴィルが
「いいじゃねえか!教えてやれよ!折角使えてるんだからよ!」
ヴィルの適当ともいえるその言葉を聞いて、俺は目を輝かせた。
「あなたは適当すぎます。王子に魔法を教えるのに、国王様に許可を取らないでどうするのですか」
「いいじゃねえか!アルはそんなことでいちいち何か言ったりしねえよ!」
「それは聞いてからでも遅くありません。それに、何名前で呼んでいるのですか。国王様と呼びなさいといつも言っているではないですか!」
「いいじゃねえかそんな細かいこと!」
カール…宮廷魔術師団長とヴィル…騎士団長は、俺のところで何があったのか聞きに来たはずなのに、もう俺のことをほったらかしで言い合っている(ほとんどヴィルは聞き流しているみたいだが)。この二人は、性格が反対で、色々なところで衝突している。仲が悪いというわけではないみたいだが…。
二人とも、このまま放っておいていたら、昔のことにまで遡ってまで言い合いを始めそうだったので、二人の言い合いを止めておく、カールは俺がいたことを今まで忘れていたのか、慌てて姿勢を正す。
「では、このことは国王様に伝えておきます。魔法の授業については、国王様に許可をもらえればお教えしますので、ひとまず魔法の練習はしないでおいていてください。」
「まあこいつは頭が固いが、魔法のことに関しては一流だ。だから、いうことを聞いておけ。」
カールに魔法の練習を禁止されて、不満が顔に出ていたのか、ヴィルがカールの言っていることを後押しする。まさか、ヴィルが頭の固い意見んに賛同するとは思ってもみなかったので、目を大きく見開く。
「…そんなに驚くことか?…まあ俺は頭の固い意見は好きじゃねえが、魔法のことに関しては、こいつの言っていることは正しいからな…。」
「…そう、だよね…。分かったよ。…カール…今度僕に魔法を教えてね?」
「ええ。許可をいただいたら喜んでお教え致しますよ。」
カールが苦笑を浮かべながらも約束してくれたので、俺は笑顔を浮かべた。
…ていうかこれじゃあまるっきり子供みたいだ…。いや、まあ魔法を教えてもらえるんだ…興奮しないはずがない。俺が子供みたいなんじゃあない…みんなこうなるはずだと心の中で言い訳をする。
俺が下らないことで葛藤している間に、二人の話も纏まったのか、
「では、今日はこのところでお暇させていただきます。本当に魔法の練習はしないようにしてください。」
「そうだな。イリヤ様。今度俺のところに来な!得意な武器は違うみたいだが、教えられることは教えてやるからよ。」
二人は、それだけを言い残し部屋から出ていく。二人が出て行って見えなくなったのを確かめて、俺は息を吐く。
「はあ~危なかったー。この能力はできるだけ隠しておきたいからなー」
そう。俺はこの能力については、できるだけ知る人を少なくしたい。いつかはばれるだろうが、厄介ごとは増えないほうがいい。だから、どこかのタイミングで両親たちに教えて、そこからできるだけ信頼できる人だけに教えるつもりだ。
「…まぁローズの能力の確認と、次に能力を使えるようになるまでの時間を確認しとかないとな。」
この能力には、一度使うと創った魔物の能力に応じて、次に使えるまでの時間が長くなる。ゲーム風に言うと、強いスキルほどクールタイムが長くなるみたいなもんだ。
「ローズの能力は……っと」
ローズの能力の確認方法について知識から探そうとすると、目の前にウィンドウのようなものが現れた。そこには、ローズについて書かれてあり、
・ローズ―――不死鳥―――0歳―――
特殊能力―――癒しの炎、破壊の炎、炎吸収、炎操作
こうなっていた。この他にも、普通のフェニックスの能力としての、飛行や鋭い爪、嘴、高い身体能力、炎を纏うなどとある。特殊能力の癒しの炎はその炎に触れたものの傷をいやす。それは、魔力続く限りなら、どんなものでも治すことができる。破壊の炎は触れたものを燃やし尽くし、魔法も優位性のあるものなら燃やし尽くすことができる。そして、この炎がついたとき、普通の炎ではないので、消すには魔法や魔力で消す必要がある。
そして、この能力で造られた魔物の特徴は、生まれた時から知性はあるが、戦いでは力任せの戦いしかできない。そして、能力は存在するものより強く創られているが、戦いになると負けてしまう。理由としては、経験だけでなく野生の本能も存在していないからだ。だから、自分の力の及ばない相手の時に、その時に新しく創ることは、悪手としか言えないことになる。他には、魔物と言葉は違うが、意思疎通ができる。これらが、能力で創られた魔物の特徴だ。
…まぁ召喚魔法でも契約した相手と話せるらしいが。
次に、クールタイムだ。今回のクールタイムは、約二年となる。これは、どちらかといえば長いほうにあたる。強めの魔物を創ったとき、一年ぐらいが基準となる。今回は、破壊と再生の相反する力を持たしたことや、普通より基礎能力を高くしたからこうなったと考えられる。
他にもいろいろあるが、今は必要ではないので、これぐらいにしておこう…。
この夜、いきなり父さんが俺が魔力を扱えたことを聞いて、親バカが発動したり、母さんたちに褒められたり、ロザリー…第二王女と魔法の話をしたりして、楽しい宴を終えた。
今日もこんな感じで騒がしく一日を終えた。…転生してから毎日が騒がしすぎるような気もするが、こんな毎日もいいかなと思っている。…このまま騒動なく楽しく暮らせたらと願わずにはいられない今日この頃である。