俺の武器の才能
俺は、あの後馬車に乗って城に戻った訳だが……
「ああ!さすがイリヤだ!可愛い上に魔法の才能もあるなんて最高だよ!」
今、俺の父さん、この国の国王、アルバート・アベル・ロン・フェルミーナに抱き上げられて頬刷りされながら拘束されている。」
俺達が馬車で城に入った途端、父さんが超速い速度で走ってきたと思ったら、馬車の前で止まって、相当気になっていたのか慌てながら、
「アリア!イリヤの、イリヤの魔法の才能はどうだった!?」
そう聞いてきたわけだ。まぁこの人の性格からして、魔法の才能がなければ要らないとかそんなんじゃなくて、無かったのなら励まそうとか、あったのなら褒めようとかそんな考えだったんだろうけど。
まぁこの感じからわかるように、この人は親バカなわけだ。見た目は冷静そうな人なのに、俺たちの前では目尻が下がって親バカな顔になっている。といっても怒るとこは本気で怒ってくれるので、変な方向に育つことはないと思う。
で、まぁその後俺の魔力量と属性を母さんから聞いたわけで……。最初に戻るわけだ。
「時空間属性と召喚属性をもっているなんて!本当にすごいぞ!これなら、時の賢者と召喚王をよばなければ!そして後は宴も!それと……」
「あなたは一度落ち着きなさい!イリヤが見てるのよ!」
「あ、あぁそうだったね……。じゃあ宴の準備をしてもらおう。」
「まぁそれくらいならいいでしょう。」
「イリヤ。楽しみにしてなさい。」
「うん!楽しみにしてる!」
父さんはいつもの冷静の影もなく、顔をだらしなく緩めながら慌てている。
父さんは母さんに一喝されると、俺に声を掛けてから宴の準備をさせるためにか城に戻って……行かずにもう一度こっちに来た。
その行動に母さんも溜息を吐いて、怒るより呆れている。
「もう一つ調べるのを忘れていたよ。どの武器に適正があるのか調べに行こう。」
「そんなの調べられるの?僕がどんな武器を使えるかわかるの?」
「あぁ古代文明の遺産でね……ひとつしかないから僕達王族が使っているんだ。」
「ほんと王族は色々狡いわね。」
「まぁそういわないで。」
父さんはこのために戻ってきたようだ。母さんは口を尖らせて、拗ねているような顔をしたが、父さんに頬を撫でられるとすぐに顔を崩した。…ほんっとアツアツですねぇ。俺が生暖かい目つきをしているのに気が付いたのか、二人とも顔を少し赤く染め、父さんは咳ばらいをして話を進めた。
「…こほんっ…まあついてきて。」
俺たちは言われたとおりに、父さんについていく。途中騎士や侍女たちに挨拶しながら、城の奥へと足を進める。
「ここだ。この中にいくつか古代魔法機械が置かれてあるんだ。」
父さんは他の扉と比べて少し重厚な感じのする扉の前で止まり、俺達にそう説明した。
扉を開け中に入ると、いくつかの武器と何に使うかわからない機械が置いてあった。
「今日はこの機械とかの説明は無しでね。……今日使うのは奥の四角いやつだよ。」
父さんがそう言い、指を指した場所には液晶のついた四角い箱があった。
父さんは線を引っ張りだし、俺を手招きする。父さんは俺にじっとしておいて、と言いその線を俺の頭、手、足の5箇所に付けていく。その後注射のようなものを取り出した。
「これで血を採るから少しチクッとするよ。」
「大丈夫。」
俺の腕にそれを刺して、血を採る。そして血の入った注射を四角い箱の穴の部分に入れる。
「よしっ。これで終わりだよ。」
「え!?これだけで僕の武器の才能がわかるの?」
「ああ。後はスイッチを押すだけなんだ。」
父さんがスイッチを押すと、液晶に数字や文字の羅列が流れた後、文字が浮かんだ。
「へぇ……珍しいものが出たね。」
「ほんとね。刀と投擲術なんて……刀はあの人に頼めば教えてくれるんじゃない?」
「あいつか……確かにあいつならいいね。実力も知ってるし、なにより頼みやすいしね。」
「ねぇねぇ。あいつって誰?」
父さんたちは俺の知らないことを楽しそうに話し出したので、俺は割って入った。
「ん…あぁそれは……まず僕たちは冒険者をやっていたんだ。その時のパーティーメンバーでね。刀を扱うやつがいたんだよ……。僕達は結構名の売れたパーティーでね。そいつは本当に強かったよ。」
「へぇそうなんだ。僕はその人に教えてもらえるの?」
「あぁ多分あいつなら来てくれると思うよ。」
父さんたちは、Aランクに近いBランクとして結構強かったらしい。父さんも、子供の頃から勉強と並行して訓練していたらしく、結構強かったそうだ。
後、刀ってことから分かるようにこの世界には日本に近い国があるようだ。将来絶対に行ってみたいな……。
「あぁそうだ。この武器のて適正なんだけどね。この二つが特に、ってだけで他の武器が使えないってわけではないからね?だから他に習いたければ言ってくれれば、僕がなんとしてでも!師匠をよんであげるから!」
「はぁー本当にあなたは子供のこと好きすぎでしょう……まぁ私も好きだけど……」
「ははっ」
本当にこの父さんは子供に甘い。まぁ悪い気はしないけど……。
「あぁそうだ。僕はまだ執務が残っているから、もう行くよ。」
「わかったわ。私も少しやることがあるのよ。」
「そうかい。イリヤは宴まで部屋でゆっくりしていてくれ。魔法の練習をしていてもいいよ。まぁ魔力の使い方とかも分からないから無理だろうけどね……。」
父さんは笑いながらそう言って、執務室に向かって行った。
「じゃあ部屋に行きましょうか。」
母さんがそういって、俺の手を引く。そして、俺の部屋についた後、母さんは出かけて行った。
俺は母さんが近くにいないことを確認した。
何をしようのかというと、俺の能力を試そうと思っているのだ。
「うーん…。魔物を創るかー。どんな魔物がいいだろ…。やっぱり相手を倒せないと意味無いよなー。…でも俺は王族だし、何かあった時に傷とかを治せないと困るだろうし…。龍…は攻撃ってイメージだしなー……。」
そんなの龍に回復能力を付ければいいと考えるかも知れないが、それはできないのだ。何故かというと、その創る魔物の姿を思い浮かべる。そして、その見た目とか、自分の知識からの一番強いイメージに沿ったものしか創れないのだ。だから、龍は今創る魔物の用途にあっていないということだ。
そうなると、回復ができて、魔物や人も倒すことが出来る魔物………………。あ、そうだ。条件にぴったりのやつがいるじゃないか。
じゃあ早速始めるか。
その創り方だが、まず鮮明にその姿を思い浮かべなければ、思い浮かべなかった部分が消えていたりしてしまう。だが、これは俺はクリアできる。なぜなら、前世では体が弱かったことから、よく家で絵を描いていて、特に幻獣やモンスター、神話の神など伝説上のものを好んで描いていたからだ。中二病とかそんなんじゃないからな!
次にその魔物の能力を考える。この時、無敵とかそんなのは付けられない。使う魔力に見合った分で、その魔物の姿やイメージに合っていないといけない。
「えーと。まずは魔法陣を描いてっと……。」
指に魔力を込めて、地面に円を2つ、その中に六芒星を描く。
この魔法は魔方陣を必要とする魔法だ。魔法の発動にはいくつか種類があるが、今は魔法陣について説明しよう。
魔方陣発動には、転写型魔法陣、即席型魔法陣がある。それと、もう一つあるが、失われた技術なので今は置いておこう。
転写型魔法陣は、魔法陣を鮮明に寸分の狂いなく思い浮かべて、そのまま空中などに魔力でその魔法陣を転写し魔力を通して発動する。特徴は、魔力消費が少なく、発動が早いことが挙げられる。だが鮮明に思い浮かべなければならない事から、普通の魔法より多くの集中が必要で、何度も使ったことのある魔法陣でないと、細かい間違いが出てしまい発動ができない。
というかこの方式を使う魔法使いはほとんど存在しない。なぜなら、そんなことをするより普通に詠唱を行った方が結果的に早くなるからだ。その上、魔法陣自体が失われていて、ごく少数しか判明していないのだ。
即席型魔法陣は、指や足、杖でもいいが、魔力を込めて、地面に描いて魔力を通して発動する。特徴は、魔力消費が少なく、いくつかを組み合わせれば、複合魔法が使えることだ。だが、魔法陣の知識が必要なことと、その場で書かなければならない事から、隙が出来やすい。が、書きながら他の魔法が使えるほどになれば連続で魔法がつかえるようになる。
今回の魔方陣発動は少し特殊で図系だけ書いて後は。詠唱で埋めていく。言うなれば詠唱型魔法陣になるだろう。これが失われた技術《 ロストテクノロジー》ではないので悪しからず。
「よしっ!書き終えた。」
その部屋の床には、直径5m程の図系だけの魔法陣が書かれてあった。
「次はイメージに合った詠唱を……」
この詠唱も自分のイメージに沿ったものにしなければならない。
『我は神の力を扱いし者 我は魔より生を創り出す』
俺は魔法陣に魔力を込めながら詠唱を開始する。
『 其は炎と生を司りし怪鳥
その炎は傷を癒し生へと繋ぐ
その炎は万物を燃やし破壊へと繋ぐ
其が纏いし炎は生と死の象徴
あぁ燃やせ 燃やせ 燃やせ
世界の理をも焼き尽くせ
世界を業火で喰らい尽くせ
召喚ーー 不死鳥 フェニックス』
魔法陣が眩いばかりに赤い光を発する。そのまま俺の体から魔力を吸い出していく。その魔法陣は俺の魔力をほとんど吸い出し、そして一際強い光を放った後、魔法陣から浮かび上がってきた。