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生徒会長は戦闘狂(2)

少し遅くなりました…といっても許容範囲ですよね(・・?

今回の話は主人公と会長との戦いです。戦いを描くのは楽しいですね( ´∀` )

けど、書き始めるとずっと書きそうで、どこまでを描くのか、その調整が難しいですね!

 では楽しんでくれると幸いです!

「…はぁ」

「…どうかしましたか。イリヤ様。」

「ん、あぁエステルか…」


 決闘があった日の放課後、俺は会長との模擬戦までの時間を潰すのに、学園内にあるベンチに寝ころんでいた。

 空は晴れ渡っていて、穏やかな気候の中心地よい風が頬を撫でる。


 …が、俺の心は嵐が吹いていそうなほど憂鬱な気分だった。


 その気分を吐き出すように溜息をつくと、思ってもみなかった反応が返ってきて、そちらを向くとエステルが綺麗な姿勢で立っていた。


 まぁ俺がこんな気分に陥っているのはお察しの通りだ。会長との模擬戦自体は強くなるためにも歓迎できることだ。

 だが、それによって発生しそうな面倒ごとが俺の気分を重くさせている。


「いや、俺が決闘を起こしたのは見てただろう?」

「はい。イリヤ様が勝利なさったのでしょう。」

「誰かに聞いたのか?」

「いいえ。」


 いつの間にか決闘のことが広まっているのかと思ったが、ただエステルは俺が負けるとは微塵も思っていなかったようだ。

 そのエステルの信頼…信仰とも言えそうな感情に俺は頬を引き攣らせるしかなかった。


「ま、まぁそれはいいとして。」


 俺はその時の状況を説明した。


 …思い出したらまた気分が落ち込んできた。


「…それで今から戦うことになっているんだ。」

「…そうですか。悪い人ではないんですが…。」

「わかってるよ。」


 あの人は頭も回るし、あのさっぱりした性格も嫌いじゃない。…だけど戦闘狂なんだよなぁ。

 まぁ獣人のほとんどは会長と同じような感じだ。会長は獣人に多い脳筋ではないのが救いだろうか。


「そうだ。エステルの去年の話を聞かせてくれ。」

「そうですね。…去年は…」


 俺はエステルが学園生になってからの一年の話を知らないことに気が付いて、気分転換に色々な話を聞いた。中には知らなかったこともあったし、エステルの知らなかった一面も見れていい気分転換になった。

 そうして会長との模擬戦までを過ごした。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「待ち遠しかったぞ。」

「俺は少しも待ち遠しくなかったですけど。」


 学園の訓練場に入ると会長が腕を組んで仁王立ちをしていた。俺の姿を見つけると会長はおもちゃを見つけたように嬉しそうに笑みを浮かべたのを見て、反射的に言い返してしまった。


 それを聞いても会長は笑みを深めるばかりだ。


 エステルは俺の後ろに続いて入ってきた後、会長に軽く会釈をした。


「じゃあ早速始めようか。」

「いえ、先に確認を。もう俺のことはわかっているんですよね?」

「あぁ当然だ。君も私のことは知っているのだろう?」

「えぇまぁ。」


 まずは本当に俺の情報についてわかっているのか聞いておかないといけない。


 今の俺の見た目は魔道具によって変えられている。具体的には髪の毛はよくいる金髪になり、目の色もそれに合わせて碧眼となっている。

 さすがに身長を変えたり、体格を変えたりしてしまうと、触れられたときに違和感が出てしまうので、そこまでは変えていない。

 まぁでも、髪の毛や目の色を変えているだけで印象は相当変わるし、もしこれでばれるのならそれは仕方がない。


 まぁ俺と会長の身分について確認しておこう。まず俺はこの国…フェルミーナ王国の第三王子で王位継承権は第五位にあたる。

 そして会長は獣人の国…獣国バイロンの王虎族で第二王女だ。王位継承権という制度は獣国には存在せず、獣国は様々な獣人の種族が集まってできた国せあり、獣人は力を重視する傾向にあるため王になるのは性別は関係せず、獣人を纏めるための力を持つものが王となる。

 とまぁ他にも色々あるが今は置いておこう。


 俺は指につけた偽装の魔道具を外した。外すとぶれるように金髪、碧眼が、元の蒼い髪の混じった黒髪と青みがかった黒目へと元に戻った。それと同時に雰囲気が変わる。


 …久しぶりの自分の姿だ。普段は寝るときも着けているから、自分の姿は一週間ぶりだ。


「では改めまして、ユリア・ベルトリーニ・バイロン王女殿下。フェルミーナ王国第三王子、イリヤ・アベル・ロン・フェルミーナだ。」

「では一応。獣国バイロン第二王女、ユリア・ベルトリーニ・バイロンだ。」


 俺は今は『イリヤ』ではなく『イリヤ・アベル・ロン・フェルミーナ』として名乗った。いつもの雰囲気ではなく上に立つものとしての風格を漂わせていた。

 …と言っても前世が庶民だったので普段の態度も素の一つではあるが。


 ユリア王女も俺の意を汲み、名乗った。いつもの不遜な態度とは変わらないのは、常に会長という人を導く立場にあるからだろう。


「まぁでも学園ではただの『イリヤ』でお願いします。俺も会長として接するので。」

「心得ているよ。」


 『イリヤ・アベル・ロン・フェルミーナ』としての雰囲気は鳴りを潜め、いつもの『イリヤ』に戻る。

 会長も俺と同じように偽装して入ってきているので、笑みを浮かべて肯定した。

 公式の場だとか偽装していない時だと王子として接する必要はあるが、今は『イリヤ』としてっ接するのが正しいことだ。


「では始めようか。」

「わかりました。」


 楽しみで待てないといった様子の会長が急かすので苦笑する。

 ほんっとどうしてここまで戦闘狂なんだろうか。もったいない…。


「じゃあエステルは上に行っておいてくれ。」

「わかりました。」


 俺は誰もいない観客席を指さしながらエステルに命じると、エステルは慇懃な態度で綺麗に礼をした。

 この模擬戦は部外者に見られると面倒が起こるので俺たち以外は訓練場にいない。


「イリヤ様。ご無理をなさらないように。」

「わかっているよ。それに俺が負けると?」


 エステルは少し不安そうにしていたので、俺は自信を示すように不敵な笑みを浮かべた。

 俺の今までの頑張りをエステルは良く知っているためほっとしたような表情を見せた。その可愛い反応には、つい頭を撫でてしまった。


 この行為はエステルを拾った頃。情緒不安定だったエステルを宥めるときや、褒めるときの癖が久しぶりに出てしまった。エステルが大きくなって、恥ずかしがるようになってから控えるようにしていたのだが…

 エステルも頬を赤く染めていて、満更でも無さそうだ。


 エステルは我に返ると、取り繕いながら観客席に上っていった。顔を赤く染めたまま。


「仲がいいようだな。」

「昔からの付き合いですから。」


 会長は微笑ましい笑みを浮かべていて、少し恥ずかしく、はにかみながら返した。

 こういう会長の反応を見ると年上なんだなぁ、と思わされる。戦闘狂でなければ良い先輩なのに。


 会長の「ではやろうか。」の言葉で位置に着く。


 …じゃあ武器を用意するか。

 俺は空間に現れた切れ目に腕を突っ込み、引き抜いた。その手には木刀が握られていた。

 さすがに模擬戦に真剣を使うのは危なすぎるため木刀を使う。


 会長は俺の魔法を面白そうに見ていた。時空魔法が珍しいからだろう。

 この魔法は異空間を創造し、未生物を入れておくことができる魔法だ。上級時空魔法『異空間倉庫』だ。この空間の中では、こちらの世界と繋げた時、つまり物を出し入れするとき以外時間は止まっている。

 便利じゃん、となるがただ、時間が止まっている状態の方が難易度が低いというだけだ。いうなら、絵を描くのとアニメを描くような違いとでも言えばいいのかな?まぁ時間軸を作製するのが難しいということだ。


 会長と対峙し、構えをとる。

 会長は獣のように体制を低くし左手を前に伸ばし、右腕は引き絞るように構えた。

 俺も右半身を前に半身になり、軽く腰を落とし左手を会長に向け、右腕はそれに交差するように構えた。


 俺と会長は互いにその場から動かずに時間だけが過ぎる。先に焦れたのは会長だ。


「はぁっ」


 会長は獣人族特有の鋭い八重歯をのぞかせ、低い姿勢のまま突っ込んできた。俺は牽制するために会長に向けた左手から魔力弾を連続で放つ。

 別に手を向ける必要はないが、どちらかと言えば向けていた方が狙いがつけやすいのは当然だろう。


 結構な速度の魔力弾を会長は軽く横に跳んだり、体を逸らすだけで避けながら一直線に飛び込んでくる。

 ほんとその動きは獣みたいだ。


 俺の前にまで近づくと連続で拳を放ってくる。俺は|軽く≪・・≫身体強化を発動して、攻撃を避け続ける。その攻撃の隙間に右手に構えた刀を振りぬくが、会長も刀に手を添えて逸らすだけで攻撃を止めない。


 いつまでも続くと思われた攻撃の応酬も終わる。俺が押され始めたのだ。


 …やっぱり体格の差って大きいなぁ


 会長は未だ10歳であるが、体格は大人のそれだ。獣人の体は戦いのために成長が早いため、2歳の差だが身長では30センチ近い差があるのだ。

 俺たち人族も前世よりは成長は早いようだが、それでも135cm程度だ。会長とは比べ物にならない


 俺は仕切りなおすために会長を蹴り飛ばし、その勢いで俺も後ろに跳びさる。


 ふぅやっぱり会長は侮れないなぁ…


「…クク、クハ、ハハハハハっいいな!もっとだ!」


 会長は俺との距離ができると顔を伏せたかと思うと。狂ったように笑い出し、顔を上げると歯を剥き出しにしながら獰猛な笑みを浮かべていた。楽しくて仕方が無いようで気分が相当高揚しているみたいだ。

 …この反応は怖すぎる。


 会長はもっとだ、の言葉とともに体に炎を纏った。

 ここからが本番だろう。俺も身体強化のギアを上げ、中級時空魔法『空間把握』を発動させ警戒する。時空魔法の基礎から中級魔法という難易度から時空魔法の難しさが窺える。

 

 会長は獰猛な笑みを浮かべたまま声を上げるのだけは潜めると、もう一度突っ込んでくる。

 次はさっきと反対で会長から炎を飛ばしてきた。その炎に俺は冷静に魔力弾を当てることで排除し、会長の攻撃に対応する。会長の速度はさっきよりも数段速い。

 会長も今までは身体強化に注ぐ魔力を制限していたようだ。


 会長はその長くしなやかな体を生かし、突き、蹴りと体を回転させ威力を上乗せさせながら連続で攻撃を繋げる。その動きはまるで鞭のようにしなって俺を狙ってくる。

 俺は炎を纏った攻撃をそのまま受け流すと炎によって体を焼かれてしまう。そのため俺は魔力で強化した木刀と中級時空魔法『空間障壁』を掌の前に小さく発動して受け流しながら下がっていく。木刀や障壁と魔力によって強化された拳がぶつかり合い、訓練場に音が響き渡る。


 ドンっと俺の背中が訓練場の壁にぶつかる。それと同時に会長の拳に纏った炎が増し、俺の目の前にまで迫る。会長の少し失望したような表情を見て、俺は軽く口角持ち上げた。

 ――思った通り!


 ドガンッと訓練場を揺らすほどの音が響き渡った。煙が黙々と舞い上がり姿を隠す。その煙から天井に向かって影が飛び出した。

 会長だ。

 その会長を回り込むように一人の影がいきなり現れ、木刀を振りぬいた。会長とぶつかると同時に普通ではありえない衝撃波が木刀から放たれ会長を地面にたたき落とした。


 何が起こったのかは容易に想像ができるだろう。会長の拳が目の前に迫った時に、準備しておいた転移を発動して会長の後ろに跳び、驚愕して動きが止まった会長を魔力で強化された木刀で弾き上げたのだ。その後はさっきの状況だ。


「…クハっすまなかったな。そうだ君は時空魔法使いだったな。…あぁいい!楽しませてくれる!」

「…今ので倒れていてくれたらよかったのに。」

「ハっ冗談だろ!こんな楽しい戦い、簡単に終わらせられるわけがない!」


 会長は相当な勢いで地面に叩きつけられたのにも関わらず、びくともしていないようだ。ありえない程頑丈な体している。会長は上空に立っている俺に謝ると、今まで以上に獰猛な笑みを浮かべた。心が弱い人が見るとそれだけで気絶しそうだ。

 その顔を見て戦いが終わることを願ったのは仕方がないだろう。

 だがその言葉も会長に笑い飛ばされた。


 会長は俺に向かって足元で炎を爆発させて飛び上がる。俺の上まで飛び上がると体を回転させて踵落としを俺に向かって放ってきた。

 だが上空では俺の領域だ。

――このまま懐に踏み込んでっ

 俺は会長に踏み込むように体を半身にしながらよけようとする。


「くっ」


――が、思い通りにはいかなかった。

 その足から炎が爆発し次は俺を叩き落とした。飛び上がる時に足元で爆発を見ていたのに迂闊だった。

 転移は上級空間魔法にあたるためそこそこの集中と時間を要するため、とっさに発動することが難しく避けることができなかった。が、腕を交差させ空間障壁を発動させて防御したのでダメージはほとんどない。


「君を叩き落せた。さっきの仕返しだ。」

「くっなら俺もやってやる!」


 会長は地面に降り立つとそう言い放った。さすがにその言葉には俺もむかっとさせられた。俺は戦うことが好きなわけではないが、そういわれると頭にくる。

――もう一度上空に上がり戦えば一方的な戦いができるだろうが、それは嫌だ。だから地上で会長を叩きのめす!


 その後の戦いは熾烈を極めた。俺は転移と障壁を駆使して三次元的な動きで会長を翻弄し、会長は肘から炎を噴出させたり、蹴りの軌道に沿う様に炎を飛ばしたりと炎をうまく使った格闘技で俺を翻弄した。

 お互いに傷という傷はできず、代わりに服がボロボロになった。

 それと訓練場がの地面が隆起したり、陥没したりぼこぼこになった。

 

 戦いは会長の魔力が尽きるまで続いた。


 会長の魔力は上級に値するほど多いが、継続戦闘能力では俺には及ばない。俺の魔力はまだまだ残っている。そのため会長は肉体のみで戦おうとしたがエステルによって終了となった。

 魔力がない状態で戦い続けるのは相当体に負担をかける。

 そのため明日からの会長の仕事に差し支えると諫められると、渋々だが納得してくれた。

 …魔力がない状態なのに戦おうとするとか…どんだけだよ。


「あぁ…君との戦いは良かった…心が沸き立った。…ふふっふふふ」

「…うわぁ」


 会長はさっきまでの戦いを思い出しているのだろう。虚空に視線を彷徨わせながら、恍惚とした表情と艶のある声呟き、うっとりとしながら笑っている。

 その会長にさっきまで以上に引いた。戦闘狂のレベルが性癖にまで達しているとは…まじでうわぁ、だわ。


 しばらくすると会長は我に返り、少し赤面していた。可愛い部分もあるんだなとは思ったが口には出さない。この人は照れると、照れ隠しに手を出してきそうだ。


「…そうだ!イリヤ君生徒会に入らないか?」

「お断りします。」

「なんでだ!今ならエステル君も一緒にどうだ!」

「お断りします。」


 会長は誤魔化すように勧誘してきたが、即答で断らせてもらった。一年で生徒会に入るとかどんな面倒ごとが来るかわからい。だが、普通に学校生活を過ごす以上の面倒ごとが起こるのは確実だ。

 エステルも一緒にと言われるが、それはメリットなのは生徒会だろう。エステルの能力は相当高いのだ。

 だがどうしても会長は俺を生徒会に入れたいようで、ぐぬぬと唸っている。


「なら私が付いてくるぞ!」

「馬鹿ですかっ!?」


 会長はいいことを思い付いたという様に顔を上げると、自分を差し出してきた。

――どんだけ話が飛躍してんだよ!


 どうしたらその思考にたどり着くのかが謎だ。その言葉には俺以上にエステルが反応して、俺の背中に鋭い視線を向けてきた。

 俺は悪くないのに俺を責めないでほしい。


 その後は会長はどうにかして俺を生徒会に入れようとして、俺はそれに突っ込み続け、エステルは会長が自分を使って誘惑すごとに俺を刺す視線を強くし、と俺の精神をすり減らせた。

 戦い以上にその後が疲れるとか…

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批判もいい勉強になるので…。

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