傲慢な貴族にお仕置き
今週は何も話すことはないですねぇ
てことで楽しんで読んでくれたら幸いです
「ではまずは魔力を感じ取ることから始めましょう。皆さんは『魔力の儀』で適性属性と魔力量は知っていると思います。魔力量の変動は入学時にもう一度測ったことだと思います。ですので自分がどれだけの魔力を待っていると知っているはずです。」
この国の第三王子である俺が…まぁ皆は知らないわけだが…フォーセル男爵家のバカ息子に、実力で決めようと持ち掛けたのは、昼食中だ。そして今は5,6時間目、つまり魔法の実習の授業であるわけだ。
バカ息子…ニコラスと決闘を行うような流れになったが、だからと言ってそれがすぐに始まるわけではない。教師に許可を取りに行ったら、授業で魔法の使えない一期生に模擬戦を見せる予定があり、そのついでに了承された。そして決闘の流れになったわけだ。
「…なぁイリヤ。本当に大丈夫なのか?」
「だから大丈夫だって。」
学園内に存在する訓練場で、教師が魔法を見せながら授業を行っている中でエドが話しかけてきた。これは決闘をするとなってから、何度も繰り返してきたやり取りだ。エドだけでなく、アーシアやエイナも心配そうにしている。エステルは二期生なので今ここにはいないが、決闘を行うとなった時も少しも心配なんかしなかった。というか「力の差を見せつけてやってください。」と言われた。…いや、そんなことのために決闘することになったわけではないんだけど。
「だって相手は貴族なんだぞ。」
「わかってるさ。」
エドは不安さを隠しきれない声色で聞いてくるが、俺は軽く答えた。特に緊張していないのは本当のことだしな。
エドが心配している相手が貴族だっていうことは、権力を持っていることを言っているわけではない。確かにそのこともあるだろうが、それ以上に貴族と平民では子供のころからの教育に差がある。そのため、どうしても魔法の能力は貴族が高くなる。それをエドは心配しているわけだが…どう考えても俺以上の教育を受けて育ったのは俺の兄弟ぐらいだろう。
魔法の実技に授業が進んだので、この話を切り、俺達も実技に移る。まずは自分の中にある魔力を感じ取ることから始めないといけないが、俺は魔力の量が多かったので初めから感じ取ることができていたが、そんなことは本当に稀だ。そのため、魔法を操れるようになるために最初に行うのは自分の魔力を感じることから始める。単に魔力を感じられるようになるといってもやり方は様々な方法があるが、現代で主流になっているのは、師匠に体に魔力を流してもらい魔力の感じを掴む方法か、魔道具を使って魔力を体に流して覚えるかの方法の二つだ。
そのためこの学園では、教師と魔道具によってこの授業を行われる。で、今は教師と魔道具の前に生徒が列を作っている。もう魔力を感じ取れる人は並ばずに談笑に耽っている。俺は当然並ばない。
「イリヤはやっぱり魔法を使えるんだね。というか、使えなかったら決闘なんかしないよね。」
「そりゃな。それに、アーシアも出来るんだな。」
「まぁエルフだしねぇ。」
アーシアが笑いながら話しかけてきた。俺もアーシアはエルフな訳だから使えないとは少しも思っていなかったけど。俺たちは初めて魔法を使った時のことなどの話しあいながら、和気藹々と授業が進むのを待っていた。
「おぉー!これが魔力ってやつなのかぁ!」
初めて魔力を感じ取れるようになって、歓声を上げている生徒はいっぱいいるが、その中でも訓練場に響き渡るほどの歓声を上げている生徒がいた…エドだ。その後ろにいるエイナは恥ずかしいのだろう、エドの服を引っ張って止めている。だが、エドはそんなことは気にも留めず歓声を上げ続けている。俺とアーシアは顔を見合わせて笑いあった。
だが、それを遮るようにふんっと鼻で笑うやつがいた。そちらを見てみると、またあの馬鹿だ。その取り巻きも同じような反応をしているが、そんな奴は数人のみで、ほとんどが馬鹿たちに迷惑そうな目を向けている。エドも少しも気にしていないようだ。
そんな感じでほとんどが楽しく授業は過ぎていき、模擬戦見学の時間となった。まぁ俺は見学だけじゃないけど…。
「皆さんは魔力を感じ取れるようになり、魔力操作の練習法も教えたので自分で練習するようにしてください。」
先生の言葉にはーいと生徒が元気に返事する。この世界の人々は全員が教育を受けられるわけではないので、学園に通える人は自習を当然のように行う。そのため前世より熱心な生徒が多い。
「ではこれから皆さんに魔法を使った模擬戦を見学してもらいましょう。魔法を自分で使い訓練するのも大切ですがどのようにして魔法を使うのか、どのような魔法があるのか、自分の目で確かめるのは大事なことですよ。」
「おぁ魔法を使った試合だってさ!」「魔法って名前は知っているんだけど、どんなのか知らないんだよ」「だよね。」「楽しみだねぇ。」「先輩の試合を見られるんだもんな」
先生の言葉に生徒は興奮を隠せずに隣の人と話し合っている。
「今日は生徒会の人に模擬戦をしてもらいたいと思いますが、それより先に一期生の生徒同士で模擬戦をしてもらおうと思います。昼休みの時に申請があったのでイリヤ君とニコラス君にしてもらおうと思います。」
その言葉に生徒たちは先ほどとは違う意味で騒がしくなった。中には昼食時のやり取りを知っている人もいるみたいで、その人たちは近くの知らない人に教えている。
「いよいよだね。」
「だな。」
隣にいるアーシアが声をかけてきた。アーシアは心配そうにしているが、どういっても心配を解くことはできなさそうなのでもう諦めている。エドもエイナも心配そうに声をかけてくれた。
「では二人以外の方は上に上がってください。」
この訓練場には見学のために観客席が設けられているため、俺とニコラス以外をそこに上がらせる。
生徒が上に上がっていくのを横目に俺とニコラスは中央で対峙する。
「はっ!さっさと女を渡していればよかったものを。」
「お前も俺にちょっかいをかけなきゃ。プライドを傷つけられなかったのにな。」
「っ!そんな口を叩けるのも今のうちだ!」
ニコラスが見下すように言葉を吐くが、俺の言葉にすぐ逆上し顔を真っ赤に染め、ぎゃーぎゃーうるさく騒いでいるが俺はその言葉を聞き流しながら扉の方を見ていた。
「その決闘。私たちも見させて貰ってもいいかな。」
「そうですね。そのほうが二人もやる気が出るでしょう。それに、外で待っといてもらうのは悪いですからね。」
その扉から、会長が入ってきた。俺は扉が開く前に会長の気配を感じ取ったので見ていたのだ。そして、会長に続いて3人の男女が入ってきた。
会長は先生に尋ねると、先生も快諾した。
「ありがとうございます。…もしよろしければ私に審判をやらせてもらえませんか?」
「…そうですね。一人よりも危険が減りますしね。私と共同で審判をやることにしましょう。」
会長が入ってきたことで、生徒たちは色めき立った。それはニコラスも例外ではなく、野心を目に宿しながらやる気を燃え上がらせていた。多分、生徒会にはいれば権力が振るえるとでも考えているのだろう。ほんと浅慮な奴だ。
会長は先生に許可を取ると、俺の横を通って先生の横に向かっていった。交差する際「君の力を見させて貰うよ。」と言い残していった。ははっどうやら相当興味を持たれたみたいだ。まぁそれでも、こいつの高くなった鼻っ柱を折って、誇りを持った貴族へと出来れば矯正したいから、負けて興味を無くさせようとは考えないけど。
「では、ルールを説明します。致死性のある魔法を使うことは禁止し、危ないときは私と生徒会長のユリアが止めに入らさせてもらいます。そして武器の使用を禁止し、気絶または行動不能で敗北とさせていただきます。」
先生が一歩前に出て決闘のルールを説明した。俺たちは、異論がないと頷き、向かい合う。
「そうだ。俺の適性は召喚魔法だけど、魔物は使わないでおくよ。」
「…舐めてるのか?」
俺の突然の提案に、ニコラスは頬を引き攣らせた。
「いや。俺自身で戦わなければ納得しなさそうだから、使わずに勝ってやろうと思ってな。」
「ふんっ!どちらでも俺が勝つ!」
俺の言葉に顔を真っ赤に染め怒りを顕わにしたが、今回はギャーギャー叫ばずに一言で我慢していた。
「では、両者。位置についてください。…初め!」
先生の宣言と同時にニコラスは詠唱を開始した。俺はそれを見ても動かずに見ていた。今回は召喚魔法を使わず、隠している時空魔法を使ってはいけない。だが、それで俺が魔法を使えなくなったわけではない。魔法には誰もが使える無属性という属性が存在している。他の魔法に比べて、魔法の種類も少なく威力が低いとされているが、利点もある。それは魔力をそのまま扱うことが無属性であるため、魔力操作が得意であれば、属性魔法よりも難易度が低く、連射性にも優れている。クリストフじいちゃんとリーゼロッテ先生とともに魔法の改良、開発もしていて、俺は魔力量が多く、そして自分でいうのもなんだが魔力操作がうまい。それだけでなく難易度が高い時空魔法で無詠唱が可能なので、無属性の魔法は簡単に発動できるのだ。
「--ファイアーボール。くらえ!」
ニコラスの詠唱が完了し火の玉が数個飛んでくる。一つではないことからニコラスが、そこそこできるのが読み取れる。だが、それでも未熟だ。ニコラスは俺が詠唱をしていないのを見て、勝利を確信したように優越感に浸っているので、まずはその驕りを破壊しよう。
俺は無造作に右手を持ち上げると、俺の周囲に魔力弾が火の玉より多く形成される。俺は見せつけるように手をゆっくりと振り下ろすと、魔力弾が全てニコラスに向かって飛び出した。魔力弾は火の玉全てにぶつかり消し飛ばし、残った魔力弾はニコラスに襲い掛かった。
「うぉ!」
ニコラスは身体強化を発動し、必死に転がって避けると、こちらに意味の分からない罵倒してくるが無視して、魔力弾を飛ばす。それを避けるために、ニコラスは罵倒をやめ、必死に避ける。すぐに立ち上がると、次は罵倒は吐かずに詠唱に移った。今回の詠唱は先ほどよりも長い詠唱だ。
「--ファイアーアロー」
その言葉どおり、矢の形をした炎がニコラスから飛び出し俺に向かってくる。その魔法に込められた魔力は先ほどよりも多く、数も多い。だが、この魔法を避けたり、防ぐことは俺にとっては簡単なことだ。しかし、防ぐよりも、それ以上の威力の魔法で迎撃したほうがいいと考え、俺は右手に魔力を凝縮させた球を作り出すと、矢にぶつけると、そこを中心に爆発するように魔力弾が四方八方に飛び出しすべての矢を迎撃した。
ニコラスは簡単に防がれたことが信じられないのか唖然としていたが、観客席から聞こえてくる俺のことを評価する言葉に、すぐに我を取り戻し怒り狂った。
「…このっ!舐めやがってっ」
俺が攻撃してこないのが舐めていると感じたのだろう。ニコラスは今まで以上の魔力を込め、詠唱を開始した。その魔力量は上級魔法に匹敵するほどだ。だが、詠唱が長すぎるので実践的ではないだろう。
「やめなさい!その魔法は威力が高すぎます!」
先生が止めに入ろうとするがそれを会長が遮った。俺の実力ならこれぐらいでは、どうにもならないと察しているのだろう。まぁ正解だけど。
ニコラスもそんな言葉では止まらずに詠唱をつづけた。
「----ファイアーエクスプロージョン!…死ね!」
その言葉とともにニコラスの手から炎が凝縮した球が打ち出された。その魔法は上級に近い中級魔法だ。これほど魔法が使えるのなら、この歳にしては相当だろう。性格が可笑しくなければ、将来、宮廷魔導士に推薦できただろうに…。
この魔法は範囲魔法だ。さっきまでのように魔法をぶつけてしまっては、衝撃が広がってしまうだろう。その球は地面にぶつかると爆発した。俺はその球を囲う様に魔力障壁を展開した。そして、その障壁から光が爆発するように広がり観客の眼を焼いた。全員の眼が元に戻ると、そこには一か所が少しへこんでいるだけで何も変わりはなかった。
ニコラスは息も絶え絶えに肩を上下させながら、目を白黒させて唖然としていた。先生も生徒も少しの間放心していたが、会長の言葉により我に返った。
「この勝負。ルール違反によりイリヤ君の勝利とする。」
その言葉に観客席の生徒が沸き、俺には祝いの言葉をニコラスには凄かったぞと慰めを投げかけた。それでもニコラスは放心しており、微動だにしなかった。今までぬくぬくと育てられ挫折なんて味わうこともなかったのだろう。俺も同じじゃないかと思うかもしれないが、俺が調子に乗りそうになると師匠たちにすぐに鼻っ柱をへし折られてきたので、驕るようなことはない。
会長はニコラスに近付くと言葉をかけた。
「ニコラス君。君の魔法は凄かったよ。努力も才能も感じさせてくれた。」
ニコラスはその言葉に野心をもう一度目に宿した。
「だが、君はもっと謙虚に行くべきだ。自分の力を過信し、周りを見下し、権力を振りかざす。それではいくら力があっても周りもついてこないし、どこかで躓くだろう。君がもし生徒会に入りたいというのなら、まずは考え方を治すことだ。」
だが、会長のきつい言葉にニコラスは羞恥に顔を赤く染め、そして俺の方を見て怒りに顔を赤く染めた。だが、先ほどまでのように罵るようなことはなく、ニコラスは唇を噛み、俺をキッと睨みつけると踵を返して、観客席の奥に座った。
ニコラスが俺のことを目の敵にすることはあるだろうが、少しは前までのような選民意識を直してくれるだろう。そう願いたい。
「イリヤ君。素晴らしかったぞ君の魔法の使い方も、制御も、発動速度も。やはり私の見込んだとおりだった。」
「ありがとうございます」
会長は俺に近付くと、称賛し、獰猛な笑みを浮かべて唇をペロリと舐め挙げた。俺はその獲物を見るような目から視線をそらして、話を変えた。
「…次は会長方の模擬戦ですね。俺も観客席に上がって見させて貰います。
「いや。観客席に上がらなくていいさ。」
俺は会長の言葉に怪訝な表情を浮かべていることだろう。だが、会長の先程以上に凄みのある獣のような笑みを見て嫌な予感に駆られた。まるで、肉食獣に獲物として見定められたように。
「君には私と模擬戦をしてもらおう。」
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