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学園の入学式(2)

みなさん休日は何をしていますか?俺はカラオケで喉をつぶしてきました(´・ω・`)

彼女がいる人はデートとかですか?ばくは…いえ何でもありません。

俺は彼女のいない悲しみを小説にぶつけたいですね(^^♪

では読んでください!

 講堂についた俺たちは中に入ると、中にいた多くの人からの好奇の視線が注がれた。まぁ当然だろう。俺はもう一度一緒にいる二人を見た。エステルは儚さを感じさせる美少女でアーシアは花のような可愛さの美少女だ。当然その二人を引き連れている俺にも目が向けられてしまうのは避けられない。…目立ちたいとも思わないが、別に目立たないでいようなんて考えてはいないのでどうでもいいことだ。

 俺たちは空いてる席に俺を真ん中にして座ると、丁度一つ開けたところに座っていた男子が無邪気に話しかけてきた。


「なぁなぁ!俺はエドワルドっていうんだ。エドって呼んでくれ!よろしくな!…それでお前の名前は?」

「俺はイリヤだ。よろしく。それでこっちがエステルで、こっちがアーシアだ。」

「エステルです。よろしくお願いします。」

「ボクがアーシアだよ。よろしくね。」


 エドワルド…エドに対して左右に座る二人を紹介すると、エドはうんうんと確認するように頷いた。


「こうやって近くで見ると、やっぱり二人ともびっくりするほど可愛いなぁ」


 エドはしみじみとそう呟いた。だが、二人とも聞こえていたようでエステルは眉をピクリと動かしただけだったが、アーシアは頬をうっすらと染めていた。


「あ、そうだ。こいつも紹介しておかないと!こっちにこいよエイナ!」

「え!?ちょ、ちょっと待って!待っててば!」


 エドはエイナと呼ばれた少女を無理やり引っ張ってきた。その少女は身長が低く黄色に近い金髪を持った小動物のような雰囲気を漂わせる少女は人見知りなのかエドの服を掴みながら背中に隠れて連れてこられた。年齢は二人とも8歳のようだが、エドは8歳としては大柄で赤茶色の髪の毛を短く切りそろえていて無邪気な少年といった風貌で、それに対してエイナと呼ばれた少女は8歳としても小柄なので年の離れた兄弟のように見えてしまう。


「こいつはエイナって言ってさ、俺と同じ村の出身なんだけどさ昔から人見知りでさ。ほら自己紹介しろって」

「…エイナです…」


 エドはエイナの頭をポンポンと叩き、笑いながら紹介すると、エイナはエドに従って顔をちょこんと出して自分の名前を言うと、またすぐに隠れてしまった。俺達も自己紹介をしたが少しだけ顔を出して「…よろしく…」と呟いてすぐに隠れてしまった。エドはエイナの頭を何度も撫でていると、エイナが手を弾いて抗議するがエドは笑うだけで意にも介していないようだ。エイナは慣れている人に対しては意外と活発なようだ。


『それでは席に着きなさい』


 お互いのことを話し合っていると魔道具によって拡声された声が講堂に響き渡り、新しくできた友達と話し合っていた者たちや、親と一緒にいた者たちなど席を立っていたり、楽しく喋っていた者たちは一斉に席に着き黙った。静寂に包まれた講堂にカツカツっと靴音が響くと部隊の脇から黒いスーツに包まれた女性がが現れ舞台の中央で立ち止まり、講堂全体を見渡すと良く通る声で話し始めた。


「それでは入学式を開会します。まずは学園長からのお話です」


 秘書風のスーツを着た女性はそれだけを言うと舞台から出ていくとそれと入れ替わるように紺色のローブを纏った白髪の老女が現れた。生徒は学園長が出てくると色めき立った。英雄とまではいかなくても魔法を勉強する者にとっては夢のような存在でもあるのだ。なぜならその老女は前宮廷魔術師長で現在は学園長かつ宮廷魔術師顧問でもあるからだ。


「皆さんこんにちは。私は学園長のエリザ・フォシエルです。まずは言っておきましょう。この学園では貴族や平民だということは忘れてください。」


 学園長はその長く生きたことを感じさせる鋭い目つきで講堂全体を見渡しながらそう言い放った。これに対して反応したのはごく僅かな馬鹿な貴族の子供やしっかりと知らされていなかった平民だけだ。大体の貴族はそんなことは子供のころから教えられてきている。この国は死の森に隣接しているため貴族のほとんどが実力主義という考えが浸透している。…当然馬鹿という者たちはどこにでも一定数いるものだが…。そのため貴族の子供たちはここで実力のある平民たちを勧誘したりする。そのため馬鹿な者たち以外はこの言葉には反応していない。


「ここに居るもの達は皆、魔法勉強するためにここに来ているでしょう。魔法を何のために勉強をしているのかは人それぞれでしょう。しかし、皆が魔法をうまくなりたいというこころざしは変わらないと思います。ですからここでは身分差は関係ありません。実力をつけなさい!魔法の実力は身分に関係ないと証明しなさい!それでは皆さんが魔法の頂に至ることを」


 学園長は新入生の反応を気にもせず、話を続けた。学園長は話を言い終えると舞台から降りて行った。新入生達、特に平民の新入生たちは学園長の言葉に心を震わされたのか講堂が揺れるほどの拍手が響き渡った。

 だが少し学園長の言葉には嘘があった。貴族と平民の人数の差は1:9程の大きな隔たりがある。だが、そこから上級と呼ばれるほどの魔法使いになるころには貴族の割合が大きくなる。それは実力のある平民の魔法使いは貴族として取り立てられる。そして魔法使いが生まれる確率は魔法使いの親の方が高くなる傾向にある。そのため実力のある魔法使いは貴族に多くなる。

 まぁだからと言ってそれが全てに当てはまるわけではない。今の生徒会長のように魔力が少ない獣人族から実力のある魔法使いが産まれることもあるのだ。そして俺の従者のエステルのように。


「では、これから規則について説明します。」


 学園長と入れ替わりに出てきた秘書然とした先ほどの女性が説明を始めようとすると、保護者が座っていた席から数人の男女が話を遮るように立ち上がると、その中の数人が魔法を行使した。俺がその魔法を消そうと行動する前にその魔法は舞台からの魔法によってかき消された。それを行使したのは学園長だ。その魔法を行使した数人の男女は魔法が消される間に着替えたのか、体全体を隠す黒いローブに白い仮面をつけていた。そうこの特徴的な格好は邪神を信仰する『ジェネシス教団』だろう。

 新入生やその保護者達は魔法がかき消されたことで再起動し、パニックになった。俺はそちらを落ち着ける前に今にも飛び出しそうなエステルの肩を掴んで止めた。


「っ!?離してください!あいつらっあいつらがっ!」

「エステル!今は待て!」


 いつもの冷静なエステルの姿はそこにはなく恨みに身を任せ暴れていた。俺は両肩を掴んで俺の方に顔を向けさせた。


「落ち着け!ここで暴れたら周りにも被害が出るんだ!」

「っでも!」

「それにもう終わってる。」


 俺がエステルを落ち着かせている間に事態は収束していた。パニックになっていた一般人たちは学園長の一声で鎮められ、落ち着きを取り戻し、そして賊は保護者のうちの荒事に慣れている者たちによって捕縛されたいた。さっきも言ったように魔法の適性は魔法使いの親から生まれやすい。そして魔法使いは荒事関係の仕事に就きやすい。なので保護者の中のそういう人たちによって捕縛されたのだろう。

 それにしても腑に落ちないことがある…。


「っ…」

「エステル。俺もあいつらが許せない。だからと言って周りに被害を与えてはあいつらと変わらないんだ。俺が復讐の機会は与えてやる。だから落ち着け。」

「…っ申訳、ございませんでした。」


 エステルは俺の説得に感じるものがあったのだろう唇を噛みしめながらではあるが落ち着きを取り戻していた。俺はエステルの頭を抱き、撫でて落ち着かせた。このときエステルが動かなかったのは羞恥からだったのは誰にも気づかれることはなかった。


「にしてもすぐに収まったな!やっぱ学園長は凄いんだな!」

「そうだよねぇ。こんなすぐに捕まえられるなんてね」

「あぁさすがの一言だったよ。」


 エドは俺が空間感知で確認していた中ではエドは動揺はしていたがパニックになることはなくエイナを宥めていた。アーシアは魔法に対抗するために魔力を練っていたようだがその前に学園長によって魔法が消されたので周りを警戒していた。エドがどうかは知らないがアーシアには荒事の経験があるのだろう。対応が早かったしな。

 空間感知を講堂内に広げてみると怪我人はいくらかいるようだが、死人や重症人は出ていないようだ。もし重症人がいたら俺が対応しなければならない所だ。王族の責として力を隠すことよりも大切なことがあるからな。

 空間感知のことを気付いた人たちがいたようだが、ほとんどが気づいてもいないので気にしなくていいだろう。…その中にいるとは思ってなかった知人がいたことには驚いたが、その人の役職を考えればおかしくないと納得した。


「皆さん。落ち着いて席に着いてください。」


 そうして周りの確認をしていると新入生たちが周りと今起こったことを話していると学園長の声が響き渡った。もう賊が捕まったこともあり、新入生やその保護者は素直に席に着いた。


「皆さん。講堂内の襲撃はもう収まりました。ですので私は学園内の警戒に行きます。」


 学園長のその言葉に講堂内がざわついた。当然だ。賊たちが捕縛されたとしても何が起こるかわからないのだ。それなのに自分たちを守ってくれる存在である学園長がこの講堂から出ていくというのだ落ち着けというほうが難しいだろう。


「皆さん落ち着いてください。この講堂には私がいなくても賊を退治できる実力者の方々がいます。それにここには生徒会長を残していきますので。」


 生徒会長の強さを知っている者たちはほとんどがその言葉で落ち着いたが、自分の身の事しか考えていないような馬鹿もいるわけで…。


「ふざけるなっ!僕は男爵家の息子だぞ!僕に何があったらどうするんだ!」


 はら、いた。それに同調する馬鹿貴族ども。というかここにはそれ以上の爵位のものだっているし、貴族の責として自分より周りのことを考えるのが義務だ。それなのに貴族だと誇示して守れとは馬鹿としか言いようがない。学園長も前宮廷魔術師長だ。爵位であれは法衣貴族ではあるが子爵の位を持っている。どう考えても馬鹿の所業としか言いようがないのだ。


「はぁ…」


 学園長は出ていこうとしていたのをやめわざとらしく溜息を吐き言葉をつづけようとするが、それを遮り怒りのこもった声が響き渡った。


「静まれっ!お前ら貴族として恥ずかしくないのかっ!自らの責も忘れ、挙句の果てに守れだと?甘えるなっ!」


 舞台脇から出てきてそう言い放ったのは先ほども会ったこの学園の生徒会長のユリア・ベルトリーニさんだ。獣人族では実力重視で貴族のようなものは民を守るための存在だ。それを放棄し自己保身に走る輩が許せないのだろう。

 その言葉を聞いて改心…なんてわけもなく…。そのバカ息子は怒りで顔を真っ赤に染めながら必死に言い返した。


「だまれっだまれっ!お前みたいな獣ふぜぐはっ!」


 馬鹿は侮辱しようとしたが言い終わる前に生徒会長によって殴り飛ばされた。…今の動きは相当早かった。この中で今の動きを視認できた奴はほとんどいないだろう。ちゃんと手加減もされているので特に怪我を負ってもいないだろう。会長は俺の空間把握にも気づき、達人レベルの動きをしていた。強いとは聞いていたがこれほどとは思ってもいなかった。

 会長は周りを見渡すときに俺を見て獰猛な笑みを浮かべたのは勘違いだと思いたい。


「…他に文句のあるやつは出てくるがいい。この国の貴族がこんな馬鹿ばかりではないこと祈りたいものだ。」


 生徒会長の言葉にバカ息子の親が立ち上がろうとしたが周りの貴族によって取り押さえられていた。まぁその貴族たちは会長が獣王の娘だと知っているのだろう。あんな普通なら外交問題になりそうな言葉を発したんだ爵位が取り上げられる可能性も低くはないだろう。…まあ外交問題にはなることはないけど。

 会長は周りを見渡し反論がないことを確認すると舞台に戻った。舞台には学園長がもいなかったので信頼されているのだろう。…まぁだからと言って10歳の子供に任せてほっていかないでほしい。見た目ではわからないとしても。


「今学園の確認は学園長がおこなっております。安全が確認できるまでここで待っていてください。…戦える保護者の方は数人扉に配置してもらいたい。」


 会長の言葉に従い戦える人たちは扉に配置された。俺は一応何かあったときに動ける状態にはしておいて席に着いた。

 その後は学園長が返ってくるまで俺たちとエド、エイナといろいろな話をしながら過ごした。学園長が戻り、説明があったが特に他が襲われたということもなく何が目的かもわからずじまいだった。ジェネシス教団魔力の多い子供を狙っているので、全員が多い魔力を持っている学園を狙ったのはわかるが、どう考えても無理に決まっている。学園長もいて保護者もいる。…もしかしたらうまくいけば良しの適当なテロ行為だったのかもしれない。


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 暗く光の入らない部屋の中で蝋燭の光だけで、二人の男が話し合っていた。一人は跪きもう一人は椅子に傲岸不遜な態度で座っていた。


「計画は失敗したようです。」

「まぁ当然だよね~成功するとも思っていなかったし、ちょっとした余興だったからね。」


 跪いた男からくぐもった声の報告に、男とも女ともとれるような声で椅子に座った少年が楽しそうに返した。


「こんな計画とも呼べない計画が成功したら逆に笑っちゃうよ。」


 少年は負け惜しみなどでなく本当にそう思っているのだろう。本当に楽しそうに笑いながらそう言った。


「邪神を蘇らさせることにこだわりはないけどそのほうが楽しそうだ。」


 少年はそんな不遜なことを楽しそうに言った。跪いた男は何も反応を示さない。


「この世界は僕の舞台だ。僕は脚本家だ。みんな僕の舞台を盛り上げてくれ!」


 少年は椅子に座りながら芝居がかった態度で腕を大きく広げ、自分勝手なことを言いながら笑い続けた。

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