俺の従者兼護衛
すいません。小説書くのをさぼっていました!
「いったい何があった!」
俺の部屋の不ドアを勢い良く開けて騎士団長ヴィルが声を荒げながら入ってきた。
「いやっちょっと待って!」
俺が止めるのも聞かず入ってきたヴィルは俺と全く同じ姿のミミを見て一瞬固まった後、剣の柄に手をかけた。
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「そうか…。まあ一応はわかった。イリヤ様の隣の子とかについて聞きたいことはあるが、それは全員に話してもらおう。」
俺はミミが俺の召喚した魔物だということを必死に説明して、その証明に召喚しなおしたりしてヴィルを納得させた。そして、ヴィルは扉の外に向かって声をかけると、父さんや母さんたちが部屋に入ってきた。
「イリヤ。大丈夫だったか!」
「イリヤ大丈夫っ!?」
「…ごめんなさい。」
父さんと母さんは入ってくるなり叫ぶように声を出し、俺に抱き着いてきた。そして、後ろから入ってきたローラ母さんやシャル母さんは叫びはしなかったものの心配そうに瞳を揺らしていた。俺は、それを見て罪悪感を感じて謝った
父さんと母さんは俺のことを抱きしめていたがしばらくすると俺を離して、話を聞く体制に入った。
「…で何があったのか説明してくれ。」
「僕が城から抜け出して、それで、その抜け出すために創った僕に化けられる魔物を部屋に置いて行ったのを忘れてて、そのまま帰ってきたら、その僕に化けられる魔物と遊んでいるセレスがいてね。そしたら、僕が二人いることにびっくりしてセレスが叫んだんだ。後はそこにヴィルが入ってきて今になるんだ。」
「そうか…いろいろ聞きたいことはあるけど…まずは…」
俺がこんなことになった経緯を掻い摘んで説明すると父さんは頷いた後話を一度切ってパンっ俺の頬を叩いた。
「城を抜け出すのが悪いことだっていうくらいイリヤならわかっていただろう?」
俺は頬に痛みを感じながら頷いた。
「だって、普通に外に遊びに行くといっぱい護衛がついてきて邪魔だし、物々しくて面白くなかったから…」
「…はぁイリヤは…」
「ほんっと聞いてたあなたの子供のころみたいね」
「おいっ!アリア!なんで今それを言うんだ!」
母さんが父さんの言葉を遮って、そんなことを言うと、父さんは顔を赤くした。多分怒っているときに、それをばらされたら威厳がなくなるとか考えてるんだと思う。俺はそれを見て、あぁ子供のころにやろうとすることは同じなんだなぁと、思ってしまった。
「イリヤ。子供が大人に心配かけるのは当然の権利よ。でも、私たちが本当に心配したってことは覚えておいてね。」
「うん。」
母さんはこっちに向き直ると諭すように言った。頷いて、父さんの方に向くと、父さんもそうだぞと頬を掻きながら言うだけだった。それから、父さんは咳ばらいをすると、次はその子のことだとでも言うように、エステルに視線を向けた。
「えっとこの子は、城下町に降りた時に路地裏に魔力の高い子供がいるのを見つけたから拾ったんだ。僕の護衛兼従者にでもどうかなって思ったんだ。…まずは、エステル自己紹介して」
「…エステル…8歳」
俺が自己紹介するようにエステルに促すと、簡潔に応じた。
「拾ってきたってイリヤ…」
父さんは俺の言葉に唖然としている。まあそうなるのは当然だと思う。まあ前世でも俺は子供好きだった。まあ拾ってくるほどでもなかったし、こっちの世界になっても、それをするつもりは当然なかったし、どっちかといえばこっちの世界に染まって冷酷な考え方に近くなったと思う。今回拾ってきたのは、役に立ちそうだという打算的な考え方からだ。
父さんたちは何かを相談しあうと、俺に向かって話し始めた。
「当然反対だよ。その子が間者や悪意の持った者でないと証明できないからね。」
「それは大丈夫。」
父さんは俺が断言したことに怪訝な表情をしている。まぁ当然だろう。こんな子供がそんなことを言い出したんだ。といっても、根拠はある。
「僕は、空間把握が使えます」
「あぁ!そういうことか!」
父さんはそれだけで分かったようだが母さん達は分からないようだ。だから、僕から説明しよう。
「空間把握自体は時空間魔法の基本でもあるんだけどね。少し踏み込むだけで相当な魔法になるん
だ。」
「で、どういうことなの?」
俺が回り道するのが焦れったくなったのかシャル母さんが口を挟んできた。それに、苦笑いしながら俺は話を続ける。
「まぁ焦らないで。空間把握は周りの情報を全て把握できるんだけど、普通にそれをやろうとすると情報量が多すぎて処理しきれないんだ。だから、通常はその量を絞っているんだけど、それを絞らなければ、その人の視線や体の動きとか色んなところから嘘かどうか、悪意があるかどうか位簡単にわかるんだ。」
母さん達はこの話を聞いて驚愕しているようだ。まぁ当然だろう。この魔法は便利だけど読まれる相手からしたら怖い魔法だ。といっても制限がないわけじゃない。さっきもいったように情報量が多すぎて、それをするには他のことを考えられなくなるし、動きも止まってしまう。だから、相手に害意が無さそうなときに使わないといけない。と、まぁ害意が無さそうな相手にしか使えないのなら意味がないと考えるかもしれないが、わからない相手には弱めの空間把握で確かめてからやればいいだけだ。
「この魔法で本当にそういうことができるのは俺も先生に聞いたことがあるから大丈夫だ。後は、それをイリヤが本当に使えるのかだ。」
まあ、まだ五歳の俺が少し応用に入った魔法が使えることは、おじいちゃん…時空間魔法の先生…から聞いていたとしても、それを見るまでは信じることができないのは当然だろう。そのため、俺は空間把握が使えることを証明するために、父さんの虚実を織り交ぜた話の中から嘘の部分を当てることで証明した。そうしたことで、俺の魔法を信用してくれ、エステルに対して完全には警戒を解くことはなかったが、一応は信用してくれたようだ。やっぱり、いつもはただの親ばかな感じだが、こういうところはしっかりと王族なんだなと思った。…まあ、親ばかなところがあるだけで、それ以外は結構スペックが高いことはわかっていたのだが。
「じゃあその子はイリヤの護衛兼従者として育てるっていうことでいいんだな。…エステルでよかったか?君もそれでいいんだな?」
父さんの念押しに俺は頷くと、父さんは、次にエステルに確認した。王族としては別に確認なんて取らなくても問題ない。王族の権力の大きさは平民の命を簡単に握りつぶすことができるレベルだ。まあ、普通は王城で働けるとしたら多くの人が押し掛けてくるだろう。
それに、こうやって民に対して傲慢にふるまったりしないことが、人気の証でもあるのだろう。でも父さんも公式の場や必要な場では王らしく振舞うことにも長けているので、貴族たちにも苦言を言われたりもしていないようだ。
「…当然。」
エステルには何の問題もないようだ。父さんは、訓練のつらさなどを離してもう一度確認をとるが、普通に考えたら、スラムで生きることを考えれば、それ以上に悪いことはないだろう。
「ふう。まあそういうことならまあ良しとしよう。じゃあ次はなぜイリヤと同じ姿の人がいたのかを説明してくれるか?」
「それは、僕の能力なんだ。」
「能力?そんなもの聞いたこともないぞ。」
「それはそうだよ。だって、この能力って僕だけの能力だからね。」
父さんがいくら王として多くのことを知っているとはいえ、存在さえなかったものを知っているはずがない。この能力が俺だけの能力なのは確かだ。…まだ能力の情報の隠されている部分はあるようだが現代では俺だけだ。
「それで、その能力っていうのは何なんだい?」
父さんだけでなく母さんたちも興味津々のようで、全員が俺に集中している。
「その能力は『召喚神術』魔物を作る魔法だよ。まあ、魔物って言っても僕の言うことを聞くし、安全だよ。能力も制限が多く存在しているしね。」
俺が魔物を作る魔法だといった時点で父さんたちは唖然としている。が、すぐに我に返ると、母さんたちも俺に質問攻めだ。それに対して、俺も今わかっている能力についてできるだけ教えていく。…前世のことや神様のことは秘密にして。
「それで、その能力はいつからあったの?」
説明し終えると母さんがそんなことを聞いてきた。多分能力自体は生まれた頃からあったんだろうけど使えるようになったのは、『魔力の儀』からなので、
「『魔力の儀」を終えた後だよ。」
「じゃあなんで今まで教えてくれなかったの。」
「…それは…」
「そうだぞ。なんで言わなかったんだ?」
母さんの問いに俺が口ごもっていると父さんまで聞いてきた。
でもなぜ言わなかったんだろう。魔物を作れるのが異端と判断されて追い出されるのが怖かったから?…違う。殺されたりするのが怖かったから?…違う。じゃあ、なんでだ…。
「イリヤ。私たちはあなたがどんな存在だったとしても何も変わらないわ。イリヤは何があっても、私たちの子であることには変わらないんだから。」
「そうだぞ。そんなことで変わってしまうのなら、そんなもの親とは言わない。」
「そうよ。私も変わらないわ!」「そうよ~。何も気にしなくていいのよ~」
「…父さん…母さん…みんな」
そうだ。ただみんなに嫌われたり、今までの関係が壊れるのが怖かっただけなんだ。そう考えるとすっきりした。それに、この世界の家族を俺は前世関係なしに家族だと思えているんだなと、今改めて思った。
「…あの…僕怖かったんだ…みんなに嫌われるかもって思って。」
「はははは!そんなこと怖がっていたのか!子供らしいとこもあるもんなんだな。」「ふふふふ。そうね。イリヤのこんなに照れるところなんてほとんど見れるものじゃないわ。」「あははは。かわいいわねぇ!」「うふふふ~かわいいですね~」
俺が恥ずかしいのを我慢して絞り出すように答えるとみんなして笑い出した。…ひどいと思う俺がどんなに頑張ったのかわかっていないと思う。でも、悪い気はしない。みんな俺のことを本気で愛してくれているんだって、もう一度認識できたのだから。
その後は、少し雑談した後、父さんは本当に限られた人たちにだけ俺の能力を話し、箝口令を敷いた。そしてその後は、俺が創った魔物を紹介したり、そのことをいろいろ話し合ったり、エステルについていろいろなことを決めた。みんな俺の能力のことを知っても半島に少しも態度を変えなかった…いや、訂正。父さんの親バカ度が増していた。そうやってみんなと楽しく過ごした。
エステルはみんなからいろんなことを聞かれしどろもろになりながらも楽しそうだった。みんなもエステルに対して嫌悪感とかも無いようでよかった。だが、一応エステルは外から入ってきた得体のしれない者だ。そのため王族の寝室に近づけるわけにはいかなく、寝室は離されることになった。
「エステル。これから長い付き合いになると思う。いろんなことがあると思うけど。よろしくな。」
「うん。…一生ついてく。」
エステルは俺の言葉に笑顔でそんなことを言ってくれた。
今日はいろんなことがあった。能力がばれたりもしたけど、逆にみんなとの絆も確認できたし、いい一日だった。俺の従者兼護衛もできたし、これからもうまくやっていけそうだ。




