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生まれる世界を間違えた?

「ねぇ!イリヤ、次あれ見よ!」

「わかったわかったから!手ひっぱんのやめろって!」


 いきなりなんだと思うかも知れないが、今、俺、紺乃威莉夜こんの いりやは幼馴染の白星茜しらほし あかねと高校受験が終わり、時間ができたので出かけている。人によってはデートというかもしれないがどう考えてもそれはない。

 なぜなら、俺と茜はつりあってないのだ。


「どうしたの?」

 

 そういいながら走るのをやめ振り返った茜の髪が勢いよく振れるが、それと同時に揺れる二つの山があり。そこに目が行ってしまうのは仕方がないことだ。だが、目を引くのはそれだけではない。くりっとした大きな目、吸い込まれそうなつやのある唇、きめ細かい赤ちゃんのような肌、光をも吸い込みそうな漆黒の長髪。

 そんな茜に見られると身長が155cmの茜が俺の目を見ようとすると、上目づかいになり、不覚にもどきっとしてしまう。この上目づかいはいつまでたっても慣れない。


「い、いやなんもねぇよ。」

「そうなの?それなら早くいこっ!」


 ドギマギする俺のことは知らずに、太陽のような笑顔で俺の手を引いていく。

 そして俺の容姿は普通の黒髪、と言いたいところだが、なぜか蒼い髪が混じっている。そして、いろいろな方向に髪がはねている。これは、おしゃれに見えるのでわるくない。そして、青みがかった黒い瞳という日本人離れしたようしをしている。なら、ハーフなのかと聞かれると、そうではない。俺の親は生粋の日本人なのだ。なぜ、こんな容姿なのかは俺にもわからないがな。





 見たいところは見た俺たちは、適当に街を歩いていた。そんなに、長い時間歩いていたわけではないが、茜が興味があるものを見つけるたびに、走っていくので、それを追いかけるせいでめちゃくちゃつかれていた。

 

 だが、その楽しい時間も続かなかった。

 いきなりボールが道路に飛び出し、それを追いかけて男の子が飛び出した。そこに、トラックが走ってきた。その時、俺は無我夢中で飛び出していた。

 そのまま駆け抜けるには間に合わないと思った俺は、男の子を守るように抱きかかえていた。何故そこまでして助けるのかというと、ほとんど無意識だった。俺の信条が体を動かしたのかもしれない。

 そんなことを考えている間にも時間は過ぎ続け、トラックの巨体はもう目の前にまで迫っていた。

  ドンっ

 大きな音とともに俺の体は宙を舞った。


「イリヤっ!」

 

 茜が叫んでいる気がしたが、そのことを意識する前に俺の意識は闇に包まれた。

















 目が覚めると白い部屋にいた。

(あれ?ここはどこだ?確か俺は)


「あぁおぬしは死んだよ。」


 ふいに、後ろから声が聞こえて振り向くと、そこには優しそうなおじいさんがたっていた。この人誰だ?俺は、こんな場所は知らないし、こんな人も知らないぞ。


「わしはおぬしの世界で神と呼ばれる存在で、ここは天界と呼ばれる神の世界だ」

「はぁ?俺は神になったとでも?」

「いやそうじゃなくての。おぬしにいうことと頼みたいことがあっての。」

「神が俺に言いたいことと、頼みたいことだって?それより先に助けた子供はどうなったんだ?」

「大丈夫じゃ。地面と擦った怪我だけで、助かっておるよ。」

「そうか…。」


 俺はその言葉を聞いてほっと息を吐いた。さすがに命を懸けて助けに入ったのに、助けた子供も死んでいたら無駄もいいところだ。

 なんだか自分でも、死んだってのに落ち着いて返しているなぁとも思うが、この人、神?の雰囲気のおかげだろう。好々爺とした優しそうな顔に、全てを包み込んでくれそうなオーラが、心が乱れない理由だろう。

 

「それじゃあ話を続けてもいいかの?…まずは、おぬしは昔、体が弱かったじゃろ?」

「あぁ成長するにつれて、治っていったけどな。あれに理由があったのか?」

「あれはの…」


 神に聞いたところによると、俺は本当は生まれる世界が違ったらしい。

 だから、体に魔力があったそうだ。魔力は、俺たちの世界にないもので、それがウイルスのように体を蝕んでいたらしい。それで、本当は、もっと子供のころに死ぬはずだったらしい。だが、俺の体の、適応力が高く、魔力を本当に薄くだが体に纏っていたらしい。そのことにより、世界からの干渉を防ぎ、そして、俺の身体能力が周りより少し高かった理由らしい。

 

 あぁ言ってなかったが、俺は子供のころ体調を崩すことはよくあった。その原因は病院に行っても首を傾げられるだけで、体に不調は見当たらなかったのだ。

 そして、俺の体調がいい時に幼稚園に行っても髪と目の色で、からかわれ続けた。茜とは、赤ちゃんのころからの付き合いで、いつも守ってもらってたんだ。それから、小学校に入って三年生になったころに、急に体調を崩すことがなくなった。そのころから茜と一緒にいることが、からかわれている一つの理由だということも気づいた。だから、俺は茜を避けるようになった。

 でも、避けるようになったのはそれだけが理由ではない。俺は、今まで色々と茜に助けられてきた。だから、茜を守れるようにと子供ながらの考えで力をつける。そう決めた。

 そして、その頃に俺は、俺に良くしてくれた人、そして茜のように未来ある子供たちを手の届く範囲は何としてでも守る。それが俺の信条だ。

 俺は、茜を守れる程強くなったら、謝ろうと決めて、いろいろなトレーニングをするようになった。そして、俺は強くなったと思う。だが、そのころは、思春期真っ盛りだったから謝るのが恥ずかしかった。


 そして、中学生になって気持ちの整理もついて、謝ろうと決めて、帰りながら茜を探した。見つけた時、茜はいかにも不良という風貌の奴らにからまれてた。それを見て緊張、不安、恐怖、そんなものは一切なかった、俺は茜を守る、その気持ちしか湧いてこなかった。そして、そいつらを撃退した後、茜に謝った。茜は気にしてない、と許してくれた。それから色々あって今…いや死ぬ前の関係だ。

 まぁ俺の過去は良いとして、纏めると生まれる世界が違った。その一言に尽きる。


「すまんが、その違った理由は、今は言えん。こちらにも事情があっての。」

「いや、まあ生まれる世界が違ったといっても俺には実感がわかないんで、別になんでもいいんですけどね。」


 お爺さん神は申し訳なさそうに言ったが、本当に気にするようなことは何もない。死んだのも自分の行動が原因だしな。


「そらそうじゃのう。それでの、おぬしには、産まれる世界だった世界に、そして、その世界で発現する予定だった能力をつけて、産まれ直してもらおうと思っておるのじゃ。」

「そういうことなら、別に俺に聞かずにやってしまえば良かったのでは?あなたは神なのでしょう?」

「いや、それにも事情があっての。すまんが聞かんでくれ。」

「はぁ、まあいいですけど。それで?そんなこと言うってことは、何かして欲しいんですよね?」

「もうすぐあちらの世界に魔王が現れる。その時に勇者召喚を行ってもらいたい。」

「魔王を倒すとかじゃなくてですか?」

「あぁ、おぬしなら倒せると思うが、あえて召喚して貰いたい。」


 その言葉を聞いて疑問に思うのは当然だろう。やって欲しいのが、魔王を倒せではなく間接的な勇者召喚を行えなんて。それも俺が魔王を倒せるだろう力をつけるのにだ…。

 …まぁだからと言って折角、もう一度人生をやり直させてくれるんだ。茜のことは気になるが、仕方がない。神の存在が信じられていない日本で茜に、信託とかされても意味はないだろうし。

 というか、頼みごとをしている時点で俺は記憶を受け継ぐのだろうか…。


「あぁそのつもじゃ。」

「…てか、俺に勇者召喚の方法なんて知らないんですけど。」

「それはあちらに行けばわかる。」


 心を読まれて、その上、返答されたので少し詰まってしまったのは仕方がないだろう。

 

「…それで、行ってもらえるかの?」

「…わかりました。」

 

 一応聞いてきたが、これは決定事項なのだろうことは俺にも分かった。俺も少し考えたのは、転生するか、しないかではなく他に聞くことが無いか考えたからだ。


「すまんの…では、おぬしにその能力を発現するようにしておく。使い方は発現と同時に流れ込んでくるから大丈夫じゃ。それと、少しだけあちらの常識も入れておくわい。」

「ありがとうございます。」

「ではの。」


 おじいさん...もとい神がそう言うと、視界が真白く染まり、意識を失った。















 威莉夜がここから消えた後、


「本当にすまぬの...勇者召喚とはいったが、本当はそれだけではないのだ。威莉夜には、厳しい未来がまっておるだろう。次に会うときには、そのことを謝らせてもらおう。」


そう呟き、神もこの世界から消えた。



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