【HAPPY BIRTHDAY・前編】
このお話は、ヨーコとアースレイの結婚1ヵ月後ぐらいの設定です
【登場人物】
ヨーコ:異世界に召喚された『女神』。現在アースレイの奥さま
アースレイ:ヴェルドゥール国の国王さま
ジェラルド:宰相補佐官。アースレイの幼馴染み
グリンダリア:光の神殿の大巫女。300年以上は生きてます
シュカ:『霊獣』と言うより大きな子供?
それは、グリンダリアと他愛無い会話を楽しんでいた時の事――。
“私の世界では四季というものがあって、きっと今頃はクリスマスシーズンでイルミネーションが綺麗で、雪なんか降ったりしたら素敵だよ”
という話を菫色の瞳を持つ少女(外見だけ)に熱く語ってしまった。
ここヴェルドゥール国には四季は無く、朝晩の気温差はあったとしても、一年を通して安定した天候と気温。
そして、この異世界も1年365日。意外に、初めて知る事実。
同じなんだ~っと感動しつつも、こんな事も知らないなんて、王妃として、『女神』として一抹の不安が過ぎる。
この世界で生きていくと決めたからには、きちんと勉強しなくては!!
「どうかしたの?ヨーコ」
「え?あ、何でも…、無いよ」
とりあえず、にっこり笑う。
「それより、今日はどうするの?」
「?……今日?」
え~っと、暦はこっちとあっちと同じだから――今日は12月9日のはず。
「そうよ、今日!」
「12月…9日よね」
12月9日。
何度も何度も頭の中で呪文のように繰り返してみる。
特別な何かある日だっけ?
「ヨーコ。まさかとは思うけど…、今日はレイの誕生日でしょう」
「え?――えぇっ~~~?!」
本気で驚いてる私に“全く、あの子は何も言ってないのね?”と呆れ顔でグリンダリアは小さな溜め息を付いている。
「仮にも貴女は王妃なのだから、ね?」
“仮”って、何?
ちゃんと結婚したのよ!!
だから、“仮”じぇないわよ!!王妃よ!!妻なんだから!!嫁なんだから~!!
「ちなみに、ルドも今日なのよ」
「はっ?」
「あの子達、1年違いで同じ日に生まれたのよ」
「お、同じ…日…」
「二人ともヨーコには教えていないのね。言いにくいのかしら?言えば相手の誕生日まで教えてるようなものだものねぇ」
「………」
大巫女も菫色の瞳はまるで悪戯少女そのもの。
それは“どっちを選ぶのかしら?”と、でも言ってるようで…。
選ぶも、何も、無いじゃない!
私は既に選んでる!そうよ、選んでるじゃない!!
――でも、知らないままで居るより、知り得て良かったと思う事にする。
「ありがとう、グリンダリア。教えてくれて」
「いいのよ、仲良くね。3人で!」
“3人で!”って所を強調するのは、なぜ?
「ヨーコ、あとでシュカにも会って行ってちょうだいね」
「?」
「忙しくて最近会っていないでしょう?あれで、あの人、拗ねているのよ」
す、拗ねてるって…。子供じゃないんだから。
「わ、分かった。これからシュカに会って来る」
「宜しくね」
そう言って大巫女は優雅に微笑む。
そして、“大変ねぇ、男3人も相手にするのって”と小さな声で呟いている。
きっちり、聞こえてるわよ!!グリンダリア~!!
男3人って、どういう意味?私はきちんと1人の人と結婚して――。
「4人で仲良くね」
だから、3人から4人に増えるのは、どうしてよ~?
少し、モヤモヤした気持ちのまま、グリンダリアの言葉通り、シュカの部屋に行く。
そこは以前、私が使っていた部屋。
「シュ~カ~」
ドアをそーっと開けると、シュカはベッドの上でくるんとなって、ピクリとも動かない。
眠ってる?
違う。完全にご機嫌斜めだわ。
「怒ってるの?」
「………」
確かに、“拗ねている”そういう表現がピッタリ。
「ごめんね。こっちに戻ってから、ずっと忙しくて」
甘えて宥めてご機嫌を取って…。何をやってるんだか…。
亜麻色の毛並みに顔を埋め、温かさに心委ねる。
「日なたの匂いがする~」
「………」
相変わらず、無視ですか…。
「そう言えば…、ねぇ?シュカの誕生日って、いつ?」
「――ヨーコ、それを知ってどうする?」
「え?だって…」
やっと、ここで黄赤色の瞳に私を映す。
「シュカだって、あるでしょう?生まれた日って」
「――知らぬ。気が付いた時には無の世界に居た」
興味本位で尋ねた事を後悔した。
「ごめんなさい…。シュカは独りじゃないよ、ずっと傍に居るね」
「簡単な事だ。それをヨーコが望めばいい」
この『霊獣』は、私の望みをいとも簡単に叶えてしまう。
それなら、望んでみようかな?
「シュカの誕生日…」
「?」
「今日にする!!」
「?!」
「いいよね?」
「すまないが、ヨーコ…」
「なぁに?」
「生まれた日の意味するものとは何だ?」
「え?…え~っと…」
難しく考える必要など無い。
この気持ちをそのまま、伝えればいいだけの事。
「この世に生まれた事を感謝する日」
そう、そして――。
「奇跡に近いほどの確率で、貴方に出逢えた事を幸せだと感じる日」
シュカとの出逢いが、私の物語の始まりだと思うから――。
ストック内を整理していたら、昔、書いたおまけのお話が出てきました。
折角なので、このお話もこちらに引越しです。
後編に続きます。




