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女神降臨  作者: 塔子
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【MEMORIES】


アースレイと双子(2歳になりました)のある1日。



side:アースレイ







執務室。


いつものように朝から政務に追われてる。


宰相が絶え間無く、書類を運んでくる。


心の中では「嫌がらせか?」と思うぐらいだ。


そして、机に座り今日も一日始まる。











「おはよう!アースレイ!」



黒髪を結い上げ、動き易いドレスで入って来たのは俺の妻、ヨーコ。


そして、連れて来た濃紺色の髪に黒い瞳の少女に「アスカ!お父様にも“おはよう!”って」と小声で話している。



「おはよう!おとうさま!」



と言うや否やすぐに出て行ってしまった。



「全く、またシュカの所なのよ」とヨーコ。


ちゃんと挨拶ぐらいと思って連れて来ても、この調子なんだから…といつものお小言。


アスカは相変わらずシュカにくっ付いている。


そういうヨーコだって、この世界に来たばかりの頃はシュカにべったりだったよな。


―――ふと、少し昔の事を思い出してみる。












「失礼します」



次に入って来たのは、この国の宰相ジェラルド。


こいつも黄金の髪に緑の瞳の子供を二人連れて来ている。



「さぁ、二人とも!陛下にご挨拶出来るかな?」



そう言うと、一人は椅子に座ってる俺の膝にむぎゅ~っと。


そして、もう一人は膝をよじ登り首に腕を回してむぎゅ~っと。


これは…、う、動きを封じられている!!



「何なんだ?コレ?」



新手の嫌がらせか?


俺はこのチビらの親を睨む。ただでさえ忙しいのに、何をするつもりだ?


「この子達なりの愛情表現だよ」と父親。


「いいな~!アースレイ。むぎゅ~っとされて」と母親。


二人して和みながら俺とチビ達を見てんじゃねぇよ!!



「それじゃ、私は光の神殿に行ってくるね。グリンダリアと約束してるの」

「では、俺も。ゴルデイ国からの報告書に目を通さなければならないので」



と言って、二人同時に出て行こうとする。



「おい、待て!コレはどうするんだっ?」



そうだ!!コレ!!


俺の身体にへばり付いてるもの。



「あぁ、ヴァンもフィーも大人しいから、仕事の邪魔はしないよ。適当にペンと紙でも渡しておけば絵でも描いて遊んでいるから」



それだけ言って、出て行ってしまった。


おいっ!!そういう問題かよっ!!











あいつが言った通り、ペンと紙を渡したら二人とも静かに絵を描いて遊んでいる。


子供ってこんなに静かなものなのか?


アスカが2歳の時なんかドタバタ走り回って煩かったぞ。いや、今でもかなりのものだが…。



「………」



母親は同じ。って事は…父親が違うと、こうも違うのか?



「――マジかよ」



思わず、言葉を口にしてしまう。


と、とにかく、静かにしてる内に仕事を終わらせるか。







しばらく仕事に集中していると視線の中に金色の光りがちらちら入ってくる。


視線を上げると緑の瞳とぶつかった。



「………ねゆい……」

「は?」

「…ねゆ……」



いまいち聞き取れない。


もう一人は?と思い、部屋を見渡すとペンを持ったまま舟を漕いでいる。



「眠いのか?」



そう訊くと、コクンと一つ頷く。


片腕で抱き上げ、ペンを持ったまま眠っている方も抱き上げる。


両側からまたむぎゅ~っとされて。


おい!!首を絞めるな!!俺を殺す気か?


と思った所で、まだ言葉も満足に話せないチビに言っても仕方ない。


隣の部屋にあるソファベッドに寝かせようと、降ろそうにも抱き付いてきて離れようとしない。



「いっちょに…」

「?」



“いっちょに”って何だ?――もしかして“一緒に寝ろ”って事か?


おいおい、止めてくれ!って言っても両側からガシっと掴まれてる。


俺もチビ相手にマジになっても。


完全に寝付くまで居てやるか。そう言えば、アスカもこんな事があったな。


―――ふと、数年前の事を思い出してみる。







こうして間近で見てみると、こいつら本当にジェラルドにそっくりだ。


髪の色もさっき見た瞳の色も。


昔、金の髪を見ながら眠った事あったよな。確かあれは――。












あれは、俺が5歳だったか?あいつと初めて会ったのは。


あいつの家って何やら複雑で、母親が居なくなったから父親と暮らす事になったとか。


あんまり憶えてねぇけど。


シドに連れられ初めて見た時、名を聞かされるまでてっきり女の子だと。


怒るだろうっと思ったのに、あいつ、笑ってた。


それが逆にムカついて「男なら女に間違われて笑ってんなよ!」って言ってやったんだ。


その夜、廊下をヒタヒタと誰かが歩く足音。行ったり来たり。


別に怖いとか、そういう気持ちは無くてドアを開けると「あ!」俺の青灰色の瞳と緑色の瞳が合った。



「おまえ、何やってんだ?」

「帰れなくなって…」

「は?」

「どうせ、俺は迷子だよ!」

「迷子?」



開き直ってる。昼間会った時と雰囲気が違う。


何だ?こいつ、夜だと本性が出るのか?



「取り合えず、入れば?」

「そうする」



俺は自室にジェラルドを入れた。



「そんなトコで寝るぐらいなら、ベッドで寝れば?」



ソファに向かってる、あいつに声を掛ける。



「俺、女じゃない」

「んな事、分かってる」

「……」

「俺、おまえみたいなヤツ気に入ったかも」

「どういう意味?」

「仲良くやろうぜって事」

「……」



城には俺と同じ歳ぐらいの子供は居ない。だからか、手元に置きたいと。



「ジェラルドって、これからシドの所に居るんだろう?」

「…たぶん」

「“たぶん”って?」

「俺って、要らないらしい。あちこちたらい回しだからな」

「ふ~ん。じゃあ、俺の所に居れば?」

「え?」

「もう、俺、眠い。……寝る」

「………」



忘れてた。


あいつと初めて会った時の事。


翌朝、シドがジェラルドが居ないって大騒ぎだった。


な~んだ、あいつ。自分の事「要らない」なんて言いながら、シドは大泣きで探してた。






俺はいつの間にか微睡んでいた。


意識ははっきりしないながらも、誰かが執務室に入って来た。足音で分かる。



「あれ?こんな所で寝てる。ふふ、3人とも可愛い~~」



俺の事を“可愛い”だと、ヨーコ。



「ねぇ、シュカ。もう少しアスカを抱っこしてて。何か掛けるもの持ってくるから」



シュカもこの部屋に来てるのか?


ふわっと身体に掛けられる感覚。さすがに覚めてきている。が、起きるタイミングを逃してしまい起きるに起きれない。



「本当にヴァンもフィーもアースレイの事、大好きなんだから~」

「当然だろう。両親が想う者をその子達も想うのは不思議な事ではない」

「あ、そっか~。なるほどね!」



何が“なるほどね!”だ!!納得してんじゃねぇ!!



「さ、アスカは自分の部屋でお昼寝しようね」



そう言って足音はドアの方へ。最後にドアの閉まる音。


俺は目を開く。


もう一度、シュカの言葉を思い返してみる。






――俺って…一体。


ヨーコは別として、あいつやあいつのチビ達に好かれても、好かれても…。


両腕の中には金色の髪が煌いている。



ま、悪い気はしねぇな。







【MEMORIES】END

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