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女神降臨  作者: 塔子
95/103

【ANGELS】


本編終了後のヨーコとジェラルドのお話。

 


side:ヨーコ



まさか、こんな事になるなんて思いも寄らなかった。


アースレイと結婚して、アスカが生まれて毎日が幸せで…。


まさか、私とジェラルドさんが結婚だなんて。


あの時の返事がまずかったの?


でも、きっとどんな返事をしても、私は黄金の髪の青年には勝てない気がする。


あの微笑の前では私は完全に敗北者だわ。






この国の女性は複数の夫を持っても良いらしい。


「本当?」って誰に訊けば…。


数ヵ月後、私は第二夫との結婚を控える身。


どうしたものか、そんな事を思いながら、足は光りの神殿に向かっていた。











「あら?ヨーコ。どうしたの?元気が無いわね」



私の姿を見つけ話しかけてくれる白金の髪の少女。



「もしかして、マリッジブルー?」



“マリッジブルー”って…。私が結婚したのはもう何年も前だと思うけど。


あ!違う!!また、結婚するんだっけ。



「ねぇ、グリンダリア」



私はこの気持ちを聞いてくれるだろう、この少女に救援の視線を向ける。


話はゆっくりとお茶を飲みながら、という事で日当たりの良い部屋に案内された。



「そうねぇ、確かにこの国は女性の数は少ないわ。勿論、複数の夫を持つ人は居る事は居るけど…」



な、何?その歯切れの悪いものの言い方は。



「滅多に居ないわよ。そういう人」

「え?……えぇ~~?!」



馬鹿みたいに大きな声を出してしまった。



「え?でもでもでも!!」



半ばパニックになってる私。



「でも、レイもルドも貴女も納得してるなら問題は無いわよ」



にっこり笑ってる、愛らしい大巫女様。



「グ、グリンダリア~~~!!」

「でも、私、なんとなくこうなる事は予想していたのよ」

「?!」

「二人ともいい子だし、上手くやっていけるわよ」

「ちょっと~~」

「ひとつ、言えるとするなら、シュカの事」

「え?シュカ?」

「まさか、無いと思うけど、ヨーコの事を悲しませる様な事でもあれば……」

「それって、もしかして……」


「「排除」」



私とグリンダリアは同時に同じ言葉を口にしていた。


やりかねない!!あの『霊獣』なら。






      *     *     *






結婚式当日。


式と言っても、今回は届けを出すだけ。


アースレイとの時は国を挙げて盛大な式だったけど、私もジェラルドそれでいいと言った。


あとは、シドさんとアスカが同席。


ジェラルドさんがサインする。


次に私がサインする。


そして、最後に第一夫であるアースレイが承認のサインをする。


そうすれば、結婚は認められる。


アースレイがサインする寸前――。



「おい、ヨーコ。隠してる事あるだろ?」

「え?」



こんな時に何を言うの?



「言わないなら、俺、ここにサインはしねぇ」

「ちょっと…何?アースレイ」



そんな私達のやり取りを横で静かに見ていたジェラルドさんが――。



「隠し事って何です?ヨーコさん」

「っ!!」



2対1じゃ、勝ち目が無い。



「あ、あのね、アースレイそれにジェラルドさんも…。か、隠してた訳じゃないんだけど、ちゃんと言うつもりだったの。あとで……」



もう、完全に追い込まれてる!



「私ね…、妊娠してるみたい…」

「やはりな」



アースレイは気付いていたんだ、今回は!!


そして、ジェラルドさんは――。



「アースレイ、サインしてくれないと困る。生まれ来る俺達の子を認めて欲しい」



自然に、冷静に、真摯に答える黄金色の髪の二人目の夫。


ジェ、ジェラルドさんも気付いてたの~~~!!!



「ジェラルド、おまえな~。手ぇ出すの早過ぎなんだよ!!」



青灰色の瞳は睨みを利かせながらも、届けにサインを書き殴る。



「これで、いいだろ?」



と、言って私達の前に届けを突き付ける。



「ありがとう、アースレイ」



ジェラルドさんがアースレイに言う。私も何か言おうとしたら、後ろでおいおいと泣く声が…?


この場に居る全員が、その声の主を見る。


完全に泣きが入ってる。男泣きだ。


泣いてるのはシドさんで、まさに号泣!


少し呆然とする私達。



「父上」

「シド」

「シドさん」


「も、申し訳…ございま…せん……」



たったそれだけ言うのも息が上がって大変そう。



「あの、シドさん…じゃない、今日からはお義父さまって呼ばないとね」



私はニコっと笑って、ハンカチを差し出す。



「恐れ多い事です。今までと変わらず“シド”と。ヨーコ様には不肖の息子に嫁いで頂いただけで十分です。それなのにお子まで…。御身を大切に」



一気に言い終えて、またおいおいと泣き始める。


一番感極まったのは――。結局、シドさん。


こんな結婚式なるとは思ってなかった。ちょっとびっくり、でもとても心に残る日となった。








      *     *     *







臨月。


私も経産婦。2度目だから、だいたいは分かってる。


しかも、前回同様ジェラルドさんが居てくれる訳だから安心。


それなのに、そわそわと日々過ごしてるのは――シドさんと、もう一人、何故かアースレイ。



「少し落ち着いたら?アースレイ」

「あ?…あぁ」



陣痛が始まって、どうのこうのって状態でも無いのに。


これで本当に出産が始まったらどうなるの?この人?


アスカの時の事が思い出される。そう言えば、一人で「わーわー」言ってたっけ。


部屋でのんびりしたいのに、これではこっちが落ち着かないって!


少し外へ散歩でも行こうかな~。


と、立ち上がった時。



「あ!」

「“あ!”って何なんだ?ヨーコ」



青灰色の瞳が向けられる。



「えーっとね、アースレイ。……破水しちゃったみたい」

「はぁ?」

「だから~、破水……」

「バカ!!早くそれを言えっ!!!」



バカって何よ!最初から、言ってるじゃない!!



「お、おまえは、ここに居ろ!!呼んでくる!!」

「ちょっと、待ってよ!呼んでくるって誰を?」



完全にテンパってる。私の声なんて聞こえてない。


もう、仕方ないな~。


破水したからってすぐに産まれてる訳でもないし、大人しくしておこうっと。


それで、結局、呼んできたのって、シドさん……?


ちょっと待て!違うでしょう!!


この場合、助産師かジェラルドさんでしょう!!



「アースレイ…、ルーシュ先生に連絡してきて」



ルーシュ先生はアスカの時もお世話になった先生。



「わ、分かった」



もう一度、部屋を出て行く。


一抹の不安。ちゃんと呼んで来てくれるのかな~?


今度はシドさんがおろおろと部屋の中を。



「シドさん、大丈夫ですから。もうすぐ元気な赤ちゃんに会えますよ」



少しでも安心して貰う為に、努めて笑顔を見せる。


こうして、バタバタした中、出産に臨む事になってしまった。






出産後。予想通り、おいおいと泣き始めるシドさん。


しかも、私の手を取り何度も何度もお礼を言われる破目に。


さすがにジェラルドさんも、そんなシドさんに――。



「父上、ヨーコさんも疲れてるんですから…」



そう言われて、しょんぼりと部屋を後にする。


「ふ~ん、双子か」と、アースレイ。


「双子とは…」と、ジェラルドさん。


私の両腕には金の髪の赤ちゃんが二人。


「こっちが男の子で」と、ジェラルドさんに渡す。


「こっちが女の子」と、アースレイに渡す。



「アスカの時もこんなに小さかったか?」



アースレイがそんな風に言うから。



「そうよ。アスカも生まれた時は小さかったんだから」



二人ともまるで壊れ物でも扱うかのよう。何とも言えない微笑ましい光景。



「名前は決めた?ジェラルドさん」



この子達の父親に尋ねる。



「男の子が“シルヴァン”女の子が“シルフィー”」



どうですか?という緑の目を私に向ける。



「――可愛い名前。シルヴァンもシルフィーもよろしくね」



そして、私の元に新たに黄金色の髪の天使が二人も舞い降りた。






【ANGELS】END


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