【ANGELS】
本編終了後のヨーコとジェラルドのお話。
side:ヨーコ
まさか、こんな事になるなんて思いも寄らなかった。
アースレイと結婚して、アスカが生まれて毎日が幸せで…。
まさか、私とジェラルドさんが結婚だなんて。
あの時の返事がまずかったの?
でも、きっとどんな返事をしても、私は黄金の髪の青年には勝てない気がする。
あの微笑の前では私は完全に敗北者だわ。
この国の女性は複数の夫を持っても良いらしい。
「本当?」って誰に訊けば…。
数ヵ月後、私は第二夫との結婚を控える身。
どうしたものか、そんな事を思いながら、足は光りの神殿に向かっていた。
「あら?ヨーコ。どうしたの?元気が無いわね」
私の姿を見つけ話しかけてくれる白金の髪の少女。
「もしかして、マリッジブルー?」
“マリッジブルー”って…。私が結婚したのはもう何年も前だと思うけど。
あ!違う!!また、結婚するんだっけ。
「ねぇ、グリンダリア」
私はこの気持ちを聞いてくれるだろう、この少女に救援の視線を向ける。
話はゆっくりとお茶を飲みながら、という事で日当たりの良い部屋に案内された。
「そうねぇ、確かにこの国は女性の数は少ないわ。勿論、複数の夫を持つ人は居る事は居るけど…」
な、何?その歯切れの悪いものの言い方は。
「滅多に居ないわよ。そういう人」
「え?……えぇ~~?!」
馬鹿みたいに大きな声を出してしまった。
「え?でもでもでも!!」
半ばパニックになってる私。
「でも、レイもルドも貴女も納得してるなら問題は無いわよ」
にっこり笑ってる、愛らしい大巫女様。
「グ、グリンダリア~~~!!」
「でも、私、なんとなくこうなる事は予想していたのよ」
「?!」
「二人ともいい子だし、上手くやっていけるわよ」
「ちょっと~~」
「ひとつ、言えるとするなら、シュカの事」
「え?シュカ?」
「まさか、無いと思うけど、ヨーコの事を悲しませる様な事でもあれば……」
「それって、もしかして……」
「「排除」」
私とグリンダリアは同時に同じ言葉を口にしていた。
やりかねない!!あの『霊獣』なら。
* * *
結婚式当日。
式と言っても、今回は届けを出すだけ。
アースレイとの時は国を挙げて盛大な式だったけど、私もジェラルドそれでいいと言った。
あとは、シドさんとアスカが同席。
ジェラルドさんがサインする。
次に私がサインする。
そして、最後に第一夫であるアースレイが承認のサインをする。
そうすれば、結婚は認められる。
アースレイがサインする寸前――。
「おい、ヨーコ。隠してる事あるだろ?」
「え?」
こんな時に何を言うの?
「言わないなら、俺、ここにサインはしねぇ」
「ちょっと…何?アースレイ」
そんな私達のやり取りを横で静かに見ていたジェラルドさんが――。
「隠し事って何です?ヨーコさん」
「っ!!」
2対1じゃ、勝ち目が無い。
「あ、あのね、アースレイそれにジェラルドさんも…。か、隠してた訳じゃないんだけど、ちゃんと言うつもりだったの。あとで……」
もう、完全に追い込まれてる!
「私ね…、妊娠してるみたい…」
「やはりな」
アースレイは気付いていたんだ、今回は!!
そして、ジェラルドさんは――。
「アースレイ、サインしてくれないと困る。生まれ来る俺達の子を認めて欲しい」
自然に、冷静に、真摯に答える黄金色の髪の二人目の夫。
ジェ、ジェラルドさんも気付いてたの~~~!!!
「ジェラルド、おまえな~。手ぇ出すの早過ぎなんだよ!!」
青灰色の瞳は睨みを利かせながらも、届けにサインを書き殴る。
「これで、いいだろ?」
と、言って私達の前に届けを突き付ける。
「ありがとう、アースレイ」
ジェラルドさんがアースレイに言う。私も何か言おうとしたら、後ろでおいおいと泣く声が…?
この場に居る全員が、その声の主を見る。
完全に泣きが入ってる。男泣きだ。
泣いてるのはシドさんで、まさに号泣!
少し呆然とする私達。
「父上」
「シド」
「シドさん」
「も、申し訳…ございま…せん……」
たったそれだけ言うのも息が上がって大変そう。
「あの、シドさん…じゃない、今日からはお義父さまって呼ばないとね」
私はニコっと笑って、ハンカチを差し出す。
「恐れ多い事です。今までと変わらず“シド”と。ヨーコ様には不肖の息子に嫁いで頂いただけで十分です。それなのにお子まで…。御身を大切に」
一気に言い終えて、またおいおいと泣き始める。
一番感極まったのは――。結局、シドさん。
こんな結婚式なるとは思ってなかった。ちょっとびっくり、でもとても心に残る日となった。
* * *
臨月。
私も経産婦。2度目だから、だいたいは分かってる。
しかも、前回同様ジェラルドさんが居てくれる訳だから安心。
それなのに、そわそわと日々過ごしてるのは――シドさんと、もう一人、何故かアースレイ。
「少し落ち着いたら?アースレイ」
「あ?…あぁ」
陣痛が始まって、どうのこうのって状態でも無いのに。
これで本当に出産が始まったらどうなるの?この人?
アスカの時の事が思い出される。そう言えば、一人で「わーわー」言ってたっけ。
部屋でのんびりしたいのに、これではこっちが落ち着かないって!
少し外へ散歩でも行こうかな~。
と、立ち上がった時。
「あ!」
「“あ!”って何なんだ?ヨーコ」
青灰色の瞳が向けられる。
「えーっとね、アースレイ。……破水しちゃったみたい」
「はぁ?」
「だから~、破水……」
「バカ!!早くそれを言えっ!!!」
バカって何よ!最初から、言ってるじゃない!!
「お、おまえは、ここに居ろ!!呼んでくる!!」
「ちょっと、待ってよ!呼んでくるって誰を?」
完全にテンパってる。私の声なんて聞こえてない。
もう、仕方ないな~。
破水したからってすぐに産まれてる訳でもないし、大人しくしておこうっと。
それで、結局、呼んできたのって、シドさん……?
ちょっと待て!違うでしょう!!
この場合、助産師かジェラルドさんでしょう!!
「アースレイ…、ルーシュ先生に連絡してきて」
ルーシュ先生はアスカの時もお世話になった先生。
「わ、分かった」
もう一度、部屋を出て行く。
一抹の不安。ちゃんと呼んで来てくれるのかな~?
今度はシドさんがおろおろと部屋の中を。
「シドさん、大丈夫ですから。もうすぐ元気な赤ちゃんに会えますよ」
少しでも安心して貰う為に、努めて笑顔を見せる。
こうして、バタバタした中、出産に臨む事になってしまった。
出産後。予想通り、おいおいと泣き始めるシドさん。
しかも、私の手を取り何度も何度もお礼を言われる破目に。
さすがにジェラルドさんも、そんなシドさんに――。
「父上、ヨーコさんも疲れてるんですから…」
そう言われて、しょんぼりと部屋を後にする。
「ふ~ん、双子か」と、アースレイ。
「双子とは…」と、ジェラルドさん。
私の両腕には金の髪の赤ちゃんが二人。
「こっちが男の子で」と、ジェラルドさんに渡す。
「こっちが女の子」と、アースレイに渡す。
「アスカの時もこんなに小さかったか?」
アースレイがそんな風に言うから。
「そうよ。アスカも生まれた時は小さかったんだから」
二人ともまるで壊れ物でも扱うかのよう。何とも言えない微笑ましい光景。
「名前は決めた?ジェラルドさん」
この子達の父親に尋ねる。
「男の子が“シルヴァン”女の子が“シルフィー”」
どうですか?という緑の目を私に向ける。
「――可愛い名前。シルヴァンもシルフィーもよろしくね」
そして、私の元に新たに黄金色の髪の天使が二人も舞い降りた。
【ANGELS】END




