【90】
「おはようございます、お二方」
いつにも増して、爽やかな微笑で挨拶をしてくる、ジェラルドさん。
あれから、数年も経つし結婚もしてるのに相変わらず、私の額に朝の挨拶を欠かさずしてくれる。
アースレイも諦めたのか完全に見て見ぬ振り。無視してお茶を飲んでいる。
「おはよう!ジェラルドさん」
私もにっこり微笑み返す。
さて、お仕事の邪魔になるといけないから、部屋を出ようとした所で――。
「ヨーコさん、二人目の出産、考えてるの?」
「えぇ、まぁ…」
いくらジェラルドさんでも、こんな事、訊かないで欲しい。
だって、恥ずかしいって言うか…。
「では、二人目の父親は俺って事で」
「…?…えええぇ~~?!」
「なっ?おまえ、何、言って――」
ガチャン!
さっきまで、黙ってお茶を飲んでいたアースレイがカップをソーサーに置き損ねて、空のカップは横になってクルっと1回転している。
「ジェラルド!!おまえ!!」
怒ってる!本気で!こんなアースレイ初めて見る。
私は二人の顔を交互に見て、唖然とするばかり…。
「ちょ、ちょっと待って!アースレイもジェラルドさんも!!」
二人の男の間に入って、とにかくアースレイに落ち着いて貰わないと!
「ジェラルドさん!私は、アースレイと結婚して…。だから――」
「だから、1番はアースレイに譲ったんですよ」
「え?」
「ヨーコさん、以前に貴女に言った言葉“2番目でも3番目でもいい”――そして、貴女の返事は…。俺は受け入れてくれたものだと思っていたのですが…」
頭の中で記憶をグルグルと巻き戻す。
そう言えば、そんな事があったような…。
「……あ!」
思い出した。でも、あれって、そういう意味だったの?
「“あ!”じゃねぇ!ヨーコ!おまえまで!!」
「えっ!でも、だって、すでに私は結婚してるんだから」
けらけらって感じで、この場の雰囲気を和ませようと笑ってみせる。
それなのに、何?この感じの悪い空気は……?




