【85】
に頭が痛くなってベッドから落ちたはずなのに、身体は少しも痛くない。
何よりさっきから、この落ちる感覚!
何処までも落ちて行く感覚!!
いったい、どうなって?
落ちる~~~!
落ちてる~~~!!
ドサッ。
「きゃ!」
「やっと、戻ってきたな」
ゆっくりと目を開ける。
ここは……?
頭上には光り煌くステンドグラス。
目の前には青灰色の瞳の青年。格好良い人。でも、誰?この人?
!!!――っていうか、抱きかかえられてるし~~!!
「ちょっと!!」
「暴れるな!落とすぞ!」
落とす?もう、落ちたくな~~い!!
無我夢中で、この青年の首に腕を回してしまった。
青年も抱き締める腕に力を入れてくる。
私、何やって…?
心臓が早鐘のように鳴り響いている。
一瞬にして顔が赤くなっていくのが分かる。
「あの、降ろして下さい…」
小さい声で怖々と言う。
「やだね」
余裕の笑みで拒否される。
「降ろして下さい!!」
今度は、はっきりと大きな声で言う。
「い・や・だ」
悪戯っぽく笑って、また拒否される。
一向に放してくれない、青灰色の瞳の青年。何が何だか理解出来ない。
「ヨーコ」
この声、何処かで。
確か、ベッドでキリキリと頭が痛くなった時に聞いた声と似てるような。
「ヨーコ」
怖いほど真剣な顔で私の名を呼ばないで。
「ヨーコ」
初めて会う人なのに、何処か懐かしささえ感じるのは…?
「ヨーコ」
もどかしい、居た堪れない、切なくなってくる。
この瞳の色、この髪、この腕、そして私を呼ぶこの声。
私は知ってる、知ってるはず!
それなのに……。




