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【82】
ゆっくり目を開けると、ベッドの中に居る事に気付く。
「ヨーコ!」
名前を呼ばれて、声のする方に顔を向けようとするけど思うように動かせない。
視界はぼやけてはっきりとしない。手も足も重い。身体全体が鉛のように感じる。
ただ、腰の辺りだけが異様に熱い。
「ヨーコ!!」
再度、名前を呼ばれる。
分かってるって!アースレイでしょう!声だけで誰か分かるって!
「…アー…ス……レ…」
私も彼の名前を呼ぼうとするけど、どうしてかな?上手く口も動かせない。
声が聞こえてくる。
“ナイフ”とか“毒”とか“自害”とか“間に合わない”とか……。
そんな言葉だけが聞こえてくる。
あぁ、そう言えば、刺されたんだっけ。
きっと、ナイフに毒が塗ってあって――。
皮肉なものだと思う。
『女神』なのに、私が望めば力だって使えるのに…。
私は、このまま――。
「…シュ…カ…居る?」
「ここに」
「二人…に…して…」
「――っ!!ヨーコ!」
声色で分かる。
アースレイは心配している。
当然よね、私、刺されたんだもん。でも――。
「お…願い…」
足音はドアの方へと向かう。こんな時でさえ分かってしまう。
最後にこの部屋を出た足音は、アースレイのものだという事を。




