【71】
宰相補佐官に案内された場所は城の最下層。
罪人用として造られたとか…。
こういう皮肉もあるもんだと思わずにはいられない。
ジェラルドさんが衛兵に説明し終わる。
「同席します。時間は10分です」
「あ、はい…」
衛兵達は、私達に深く礼をする。その前を通り、オクサーナ姫が居る部屋へと向かう。
暗い部屋。
蝋燭の燃える、ジリジリという音だけがやけに耳に付く。
壁際の椅子に座るオクサーナ。
私はドア側の席。
ジェラルドさんは、座らず私の少し後ろに立つ。
間にはテーブルの何も無く、話をするには結構離れている。
「願い通り『女神』自らご足労を頂いた。深謝の気持ちを以って臨まれよ」
「――っ!」
ドキっとする。こんな風に『女神』扱いされると。
ゆっくりと顔を上げ、小さいけどよく通る声が部屋に響く。
「明日の処刑……、私も見たいのです。父の最期を…」
そこまで言って、大きく息を吐くオクサーナ。
「どうか、お願いです。どなたも取り合ってくれません。不躾な事と分かっていますが……、でも…」
「――どうして、私なの?酷い事を言ったのに…」
「意味の無い死など無いと仰ったでは…!だから、見ておきたいのです。私の中で意味あるものにしたいのです!」
返す言葉が浮かんでこない。
これが11歳の少女が言う言葉なんだろうか。
確かに私は言った。意味の無い死は徒死以下だって。
今、考えれば、あんな事よく言ったものだ。
「良いわ。立ち会えるように、私の方から話しておくから」
「あ、あ、…ありがとうございます…」
泣き崩れる小さな姫君。
処刑は明日。
こればかりはどうする事も出来ない。
ただ、私にはもう二度とこんな戦争なんて起きて欲しくないと祈るだけ。




