【62】
――って言うか、何度か経験したこの空気。ピリピリと、感じる。
ここは速やかに、退散した方が。
手に持っていたカップをそ~っとテーブルに置いて、ゆっくり尚且つ素早く無駄な動きもせず立ち上がり、ドアの方へ身体を向ける。
「何処へ行く?」
うっ!
殺気?!さらに冷気!!それでなくてもここは気温が低く。
右手と右足が一緒に出ちゃいそうな、ぎこちない動きで振り返る。
もう少し体感温度を上げようよ~!
「あ、もう、部屋に戻るね。お茶、ありがと。ご、ご馳走さま」
「ヨーコ」
「な、なに?」
う、動けない。もう、動けない!まるで蜘蛛の巣に絡まった蝶の気分。
「おまえは、それでいいのか?」
「何が?」
「俺と…オクサーナの事」
「そ、それは……」
「『女神』のお言葉なら、背く訳にもいかないな」
「!!!!――ほ、本気っ?!!」
「バカか、おまえ!俺にだって選ぶ権利ぐらい有るだろ!」
「…え?」
いきなり、腕を掴まれぐいっと引っ張られる。
ここで倒れたら、負けてしまう、そんな気がして。
私もアースレイの腕をぐっと掴む。
感覚は試合だ!気合だ!
足を掛けて!払って!…あれ?
ド、ドレスの裾が広がらないーーー!!




