【59】
息を呑む。
これが……、これが11歳の女の子の言う言葉?
私は驚きを隠せず、右隣に居るアースレイを見る。
濃紺色の髪の国王はさっと立ち上がった。
「戦争が始まった時、おまえは1歳になるかならないかの赤子だった。故に責任を負わせるのは…、という事になったのだ。――いや、おまえは知るべきでは?我が国の事も『女神』の事も。良い機会だと思うがな」
それだけ言って、部屋を後にする。彼の後には指揮官達が続いて出て行く。
シュカは私の膝に鼻先を当てる。
あ、そうか。私も続いて退席しないと。
オクサーナの茶色の瞳は私を放さない。燃えるように揺らめいている。あれは、憎しみの炎。
「死にたいのなら死ねば良い。でも、その死に意味はあるの?無ければ単なる徒死に過ぎない。私を憎いのなら憎み続ければ良い。それが生きていく糧になるなら」
空気が変わる。
その場に居る全ての視線が私に集まる。
シュカが私を見上げている。私は立ち上がり、歩き始める。
傍に居た宰相補佐官が右手を胸に礼をする。
シュカが私の後ろに続く。
指揮官達が胸に手を当て礼をする。その前を通り過ぎる。
ヴェルドゥール国の国王陛下の前で足が止まる。
国王も他の者達と同じように礼をしている。そして、顔を上げ手を差し出している。
私はその手を取り、その場から離れる事にした。




