【50】
私の事を気にする様子も無く、話を続ける青灰色の瞳。
「親父もショックだったんだろうな。臥せってしまう事が多くなって、後を追うように…」
と言って、隣の墓標に視線を移す。
何も言えない、何も…。ただ、次から次へと涙が溢れてくる。
「で、なんでヨーコが泣くんだ?」
淡々とした言葉。
「だって、アースレイが泣かないから。代わりに泣いてあげてるんじゃない!」
意味不明な事を自分でも言ってるって分かってる。
でも、本当にどういう訳か涙が止まらなくて。こんな風に止め処無く涙が溢れてくるのは“あの事故”以来。
アースレイの指が私の頬に触れる。涙を何度も拭ってくれる。
「でも、どうして指輪なの?」
訊いていいのか、いけないのか、でも同じ『女神』この世界に召還された者として訊かずにはいられなかった。
「消えたんだ。身を投げた後。光に包まれて」
「それって、死んだって事なの?
「確かに見ていたのは俺と――シュカだけだ」
もしかして、シュカが望みを叶えたの?
「死んだと言っても、遺体は無い。最初は誰も俺の話を信じなかった。でも、どんなに探しても何処にも居ない。シュカは『女神』が死を望んだから自分が殺したと……」
「でも、消えたんでしょう?」
私は、グリンダリアのあの言葉を思い出す。
「きっと、お母さんは元の世界に帰ったんだよ。消えていなくなったのは!だから!!」
だから、それは自殺じゃない!
グリンダリアが言ったあの言葉――“貴女次第”
元の世界に帰る方法は、きっと『女神』として生き、役目を果たせば帰る事が出来るのでは――。
アースレイは、私の言葉を聞き漏らさないとしている。
「それが、本当なら。ヨーコ、おまえも俺の前から消えていなくなるんだな」
その声は低く、掠れていた。




