【38】
私は走ってる。彼の後を追いかけてる。
アースレイの背中が見えた!
見えてるのになかなか追いつかない!
それもそのはず、ずっと椅子に座りっ放しで、いきなり走ったりなんてするから。
食事も取ったり、取らなかったり。
「ア…っ!」
アースレイ!って、声を掛けようとした時、あ、足が縺れる!
こ、転んじゃう~!!
あれ?身体が軽い。しかも転んでない!?
私を支えてるのは彼の腕。
「器用だな。何も無い所で転ぶか?普通?」
完全に呆れた声で言う。
「何よ!バカにしないでよ!」
アースレイの腕を思いっ切り払いながら言う。
払った、と思ってたのは私だけで、彼の手は私の腕を掴んで放さない。
「ア、アースレイ?」
「ヨーコ!」
重なる二人の言葉。
「な、何?」
「何だ?」
また、重なる。
こういう時って、不思議とくすぐったい気持ち。だって、可笑しい。
ぷっと吹き出してしまう。
「いいよ。先にアースレイ言って」
「ヨーコが先に言えよ」
「じゃ、じゃあ、言うけど…。私の事、気に入らないでしょ?」
こんな事言うつもりなんて無かったのに。
「かなり、な」
そう言って口元が上がる。少し意地悪そうに。
「そういう、おまえも俺の事、気に入らないだろう?」
「そりゃあ、もちろん!」
まだ、好きとか嫌いとかよく分からない。
でも何となく悔しいっていうか、負けたくないっていうか。
何故か、アースレイと居ると身体中の神経がピリピリする。
私の持つ闘争本能が刺激されるって、感じ。
もともと負けず嫌いなのは認めるけど、心が燃える様に熱くなる。
でも、頭の中は妙に冷めていて。
私も彼の腕を掴む。ぐいっと引っ張って、ニヤって笑ってみせる。
「おい、ヨーコ!おまえっ…!!」
焦ってる!!でも、もう遅い!!
大外刈り!
「言っとくけど、私はあんたより強いんだからね!」
私は、いつもの笑顔に戻っていた。




