【29】
「シュ、シュカ?」
「帰さない。ヨーコは帰さない!我の側に!」
物凄い力。
く、苦しいよ~。息も出来ない…。力が抜けていく……シュ~カ~。
「シュ…、く、くる、しっ…」
やっと、言えたのがこれだけ。
「――す、すまない…」
腕の力を緩めてくれたけど、でも、私はまだシュカの腕の中。
シュカの顔を見る。黄赤色の瞳とぶつかる。
でも、すぐに逸らされて、悲しそうな…切なそうな…。
まるで、迷子の仔犬。
「シュカ、別にすぐに帰りたいかと、そういう意味で言った訳じゃなくて…えーっと、つまり、私が帰ったらどうなるのかな~?なんて思ったりして…。ほら、学校もあるしバイトも一から探さないと…。あ、こっちに居てもお仕事は探さないとね~」
言い訳。しかも、長々と。
へへって、笑ってみせても、シュカの表情は、変わらず険しいまま。
「――ヨーコ」
「何処にも行かないよ。だから、安心して」
そう言って、シュカの背中に両腕をまわす。
ぽんぽんと、叩いてあげる。
まるで、赤ちゃんをあやすように。
「ヨーコが、誰を想おうと構わない。だが、我の存在を受け入れて欲しい…」
私はコクンと頷いた。
それだけなのに、シュカは夕暮れ時の空のように優しい色の瞳を見せてくれた。
あぁ、本当に子供みたい。
まるで、母親の愛情を欲している子供のよう……。
あれ?以前にも、こんな事あったっけ?
あるはずなんて無いのに、不思議と懐かしいと思うのは――どうして?




