【26】
ここは、宰相補佐官の私室。
「何、勝手な事したんだ!」と怒鳴りながら入って来るのは、濃紺色の髪を持つ幼馴染みの青年。
「アースレイ…」ノックぐらいはしろよって、言う間も無く。
「俺は、あれほど反対しただろ!ヨーコを連れて行く事は!」
予想通りの展開に、多少うんざりしつつも。
「しかし、議会で決まった事だ。それに『女神』の存在を隠す事なんて不可能だ」
そう、『女神』がこの世界に来る時、天空は光に煌く。
故に国内外に対して、隠す事なんて出来やしない。
「おまえ、わざとだろう?」
「何が?」
「ヨーコが、断らないと分かってて、会いに行ったんだろう?」
「それもある……勿論、それ以外も」
そう言って、不敵に笑ってみせる。それが、さらにアースレイを激昂に誘う。
そう、あの時、俺はヨーコさんと抱き合う形になっていた。
治療と称して、彼女の背に手を回していたのだから。
まぁ、ヨーコさんは治療に専念していたが…。
「この際だから、言っておこう。アレは、まだおまえのモノではない。そっちこそ、勝手な事を言わないで欲しいな」
俺は、話をすりかえる。
「ジェラルド!!」
青灰色の瞳が、怒りで燃えている。それを一瞥して――。
「ま、選ぶのは『女神』だろう?おまえかもしれないし…、それとも別の男かも…」
アースレイは何も答えない。ただ、青灰色の瞳を俺に向けるだけ。
「何より、ヨーコさんを守ると言うなら、この戦いを早く終わらせるべきだと思うがな」
「……一番苦しむのは、ヨーコだ。それでも、おまえは…」
「だから、彼女を守ると言ってる」
俺は目を閉じて言う。
「アースレイ、彼女を想うなら守ってやればいい。この戦いからも、彼女に害なすものからも…」
そして、俺からも――。
「……そうだな」
アースレイは、同意した。
もう、俺達は後戻りは出来ないと確信した。




