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【16】
いつの間にか眠っていた私の耳に父の叫ぶ声。
いったい何?身体中が痛くて…動かない…?
「お…お父…さん……何…が…?」
「陽子!シートベルトを外せ!」
「え…?うん……あれ?手が動かない……?」
父は助手席の背を倒して、後部座席の方に手を伸ばしてベルトを外してくれる。
その手は、赤くて…。
私の視線は手から腕に、腕から肩に、そして、顔。
「…っ?!血が!お父さん!」
「車から出ろ!」
出ろって、言われても身体が痛くて、それでもドアを開け父と一緒に這い出るようにして、外に出た所を見知らぬ人達に路肩まで引き摺られる。
周りの状況が目に飛び込んでくる。そして、私は理解する。
――事故だ!!
何台もの車がぶつかり合い、形を変えてしまってる。
悲鳴が、叫び声が聞こえてくる。
突然、炎が上がる。ガソリンに引火して燃える車達。
「陽子は、生きろ…!」
父の顔を見る。傷口から血が流れている。
無意識のうちに両手で、血を止めようとしている。
「お、お父さん――、血が…、止まらないっ!!」
――生きろ。
それが父との最後の約束になってしまった。




