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女神降臨  作者: 塔子
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【HAPPY ANNIVERSARY前編】

おまけのお話・その2


『女神降臨』のその後の様子のお話です


アースレイとヨーコとジェラルド


結婚して数年経ったあの日の大切な記念

【SIDE:EARTHRAY】




その日、妻の行動は奇怪なものだった。


自分の姿を鏡に映し、右に左に身体の向きを変え、満面の笑みを浮かべている。


背後から近付く俺に――いつもなら、いち早く振り返り「アースレイ!殺気立てないで!」と言う。


そんなつもりは、全く無い!俺は普通にしてるだけだ!



「ヨーコ」



名を呼ばれて、初めて俺の存在に気が付く。



「あ、アースレイ…」



少し肩をピクっとさせ、でもすぐにニコっと微笑んでくれる。


いつからそこに居たの?と尋ねられ、声を掛けてくれれば良かったのに、と言葉をくれる。



「おまえが鏡の前で、ニヤついていた辺りから」

「し、失礼ね!別にニヤついてなんて!!」



ヨーコは頬を膨らませ、赤くなった顔を背ける。


くるくる変わる表情は、あの頃と同じ。


見ていて飽きない。



「?!」



今、何か光った!



「ヨーコ…、それは…?」



最後まで言わなくてもヨーコは分かったらしく、そっと手を胸元へと伸ばす。



「これね、ジェラルドさんがくれたの。結婚記念日のプレゼントだって」



幸せそうな顔で、そんな事言われても…。


まぁ、こそこそと隠れられたり、嘘を付かれたりするよりマシか?



「えーっと、アースレイが外せって言うなら…、外すけど…」

「そんな事、言ってねぇだろ!」



確かに、ヨーコが身に付けている宝飾品のほとんどはあいつが送ったものばかりだ。


そういう所はマメで、俺とは正反対だ。


だからなんだろうか?


柄にも無く、普段しなれてない事なんてするからか?


ヨーコの胸には華奢で繊細な造りの、周りの全ての光をぎゅっと集め、そして一気にその光を解き放ったかのような――強く光る無色透明な石が一つ。



「ところで、アースレイ、私に話でも?」

「…いや、別に」



自覚はあったが、俺もどうも隠し事が出来ないタイプだったらしい。



「ふ~ん…。それで、その持っている物、何?」

「………」



「私には、言えない物?」

「これは…」



手に持っている物。それは、細長の小さな箱。


今さら隠しても遅い。嘘も誤魔化しも上手くない。



「アースレイ?」

「ヨーコ、おまえに――」



受け取ったヨーコは、そっと箱を開け、中身を確認すると目を丸くして驚いている。



「これ…!」

「どうせなら違う物がいいだろう?他の物と交換でも――」



ヨーコの手からそれを奪い取る。


でも、ヨーコの動きの方が早くて取る事が出来なかった。



「どうして、他の物と代えるなんて言うのよ!!」

「そりゃ、同じ物なんて――いらねぇだろう?普通!!」



そう言う俺を無視して、さっきと同じように鏡の前にヨーコは立つ。


鏡越しに俺に視線を送り「留めて」と言ってくる。


長い黒髪から覗く、白い首筋。


既にペンダントの止め具が有る上から、もう一つ留め具が重なる。


ヨーコが嬉しそうに微笑んでくる。


俺にはそんなヨーコがさっぱり分からない。


俺が送った物は、既にジェラルドが送った物と偶然にも同じペンダンドだ。



「アースレイ…、他のに替えるなんて言わないで」



ヨーコの黒い瞳に、俺を映す。



「ジェラルドさんからもアースレイからも、大事にされてとても嬉しい。その形がここに在る」



ヨーコの胸元に、宝石が二つ。


どちらも、強く光を放つ。



「こんなに想われている私って、とても幸せ」



真っ直ぐな気持ちが、揺るぎない想いが心に響く。



「私の場合、夫が二人居るから、幸せが2倍ね」



ヨーコは微笑む。何も知らぬ無垢な少女のように。


比べるなら、誰より幸せなのは俺の方だ。


全てが癒されていく。このままの俺であっていいんだと思ってしまう。



「でも、アースレイって、ジェラルドさんと同じ趣味なんだね」



――同じ趣味か…。



まぁ、同じ女を妻にするぐらいだからな。


ふわりと揺れる黒髪から、あいつの香りがした。


ほんの少し、いや、かなり悔しいと言うか、侮れないと言うか…。


だが今は、今だけは俺のもの。


この腕の中に、いつまでも居てくれと願わずにはいられなかった。



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