<手紙>第1部
二週間が過ぎた。アイツは元気がない様子だ。僕は「行方不明者」らしい。警察が捜査している。病弱な母は泣いている。あのコは…僕の隣にいる。
》二週間前《
「カモメが見あたらないな」
「ごめんなさい、私…」
「別に、その、なんていうか、言ってくれても良かったのにさ」
「それであなたを苦しめたくなかったの」
「苦しまないよ。苦しかったら会いに来てる。だから今、苦しくない」
「本当に来るとは思ってなかったの…少なくとも、こんなに速くは」
「どうかな?手紙をわざわざ自分の家のポストに出させたのは、暗示的なところがあるけど?」
「それは…あなたのお母さんが納得するように…」
「それだけじゃ納得しないよ」
「えっ…」
「だからちょっと細工してきた」
「どんな?」
「も少ししたらわかるよ」
「そう…」
「…でもよくやるよな! 君が入院した と先生がクラスに伝えたとき、僕を休ませたなんて」
「…でも結局知ってしまったじゃない」
「五日も経ってね。アイツが教えてくれたんだ。アイツは、僕ならもうとっくに知ってるかと思ったってさ。これも計算の内?」
「まあ…でもこんなに上手くいくとは思ってなかったんだよ本当は」
「そうだね。必要なかった…」
「…」
「君に会いに来た」
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二人だけの世界は楽しい。空も飛べる。君の歌も聴ける。
あとは現世の母とアイツにどう納得してもらうか。
「多分もう少しだよ」
彼女が言う。
「何が?」
「キミのお母さんがあの手紙を見るの」彼女は続けた
「あと発見されるのも」
「僕の遺体をかい?」
「変な気分じゃない?」
「最高の気分さ」
「でも、まあアイツには悪かったよな…」
「わかってくれると思う。夢が叶ったって、言ってくれると思う」
その二日後、僕の遺体が発見された。アイツが泣いている。
「空…飛んでるんだろ?なあ?今だってすぐ上から見下ろしてるんだろ?…ズルいじゃないかよ…二人で会って…オレはお前を失えば楽しい夢も見られなくなるよ…本当にこれで良かったのか?」
不意に熱いものがこみ上げてくるのを感じた。
「ありがとう」
心の中でそう呟いた。
「オレの側にいてくれ…必ず夢を叶えるから…そこに座って、見ててくれよ…」
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