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<ミラージュ>第3部

次の日、僕はいつも履いている靴ではない靴を履いて、君を追いかけた。

途方もなく歩いて、行き着いた先は幻のような森だった。鳥好きの僕でさえ知らないような鳥たちがさえずり、木の葉からは雨も降っていないのに雫がこぼれ落ちている。森はざわついていた。

僕はゆっくりと歩を進めた。密林の狩人のように緊迫しつつ、うっすらと浮かぶ霧に身を任せながら。

ふと、葉と葉のざわめきが聞こえた。それはだんだんと近づいてくる。僕はどんどん大きくなる足音に恐怖し、奥へ奥へと進んでいった。

蛇のような根っこに絡まりながら、巨木の前まできた。木の周りには円形に縁取られたスペースがある。足音は消えていた。ーーそう、消えていた。顔を見上げて見たのは微笑を浮かべて立っている獣だった。

獣と言ってもしっかりと二足歩行で、傘まで持っていた。傘からは水滴が滴り落ちている。若干太った体格で、なんの動物かはわからなかった。ただどこか鋭いようないたずらな目は、僕を見下ろして語りかけているようだ。

「僕よりも先に…?」

獣は僕のこの質問には答えずに

「ついてきてごらん」とだけ言った。僕は言われるままに巨木の先へと進み、「あっ」と声をあげた。

目の前に広がるのは美しい湖で、深緑の木々たちのざわめきと朝の心地良い風が混ざり合ったような雰囲気に包まれた。

湖の中心には古ぼけたボートがプカプカと浮かんでいて、おかしいほど青い鳥たちが羽を休めていた。

「君は誰?」

僕が尋ねた。

「私はただの案内役です。あなたのような方をお連れするのです」

その言葉が終わったと同時に、急にざわめきが止んだ。(遠くでひぐらしがないているということ以外は)

「あのボートは何?」

「あれは飾りです。気にすることはありません」

僕はどうしてもこの森の住民すべての目が、自分たちに向けられていると思わずにはいられなかった。

「彼女に会わせてあげます」

沈黙。…。

「先に着いたら…驚かしてあげよう」

僕は目をつむり深呼吸した。

「ありが…ー」

振り返ったらもうそこにあのニヤけた獣の姿はなかった。

僕は視線をゆっくりとボートに向けた。


森はまた落ち着きを取り戻したかのようにざわめき始めた。


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