<手紙>第2部
次の日は母を見ていた。
赤いバイクが家へと入っていく。母は駆け出してそれを取りに行き、固まった。母の手にあったのは僕が自分のポストに入れたあの手紙だった。どうやら、郵便物を取りに行ったついでに見つけたようだ。
《拝啓
届いているかわからない君へ。
言われた通りに自分の家のポストに入れたよ。そしてやっと意味がわかってきたんだ。
あまり書くことはないな。もうすぐ話せるから。その分アイツに書くことにしたんだ。
じゃあまた後で。
敬具》
読み終えた母は驚いた様子で涙していた。その様子からはとうてい納得はしていないだろう。
すると母はもう一つの方のポストへ近づき、(僕の家にはポストが二つある)白い紙を取り出した。そう、アイツに書いた手紙だ。
《夢追う同類へ
君と会えたことは素敵だった。夢よりもずっと。君がいたから夢を叶えられたんだと思う。
僕という存在を認めてくれた君がいなかったら、僕が消えても証として残らないから。
変人呼ばわりされた僕を見てくれてありがとう。今度は僕が君を、君の夢を見る番だ。
僕が消えても僕の夢は叶う。でも君はそういう訳にはいかないだろう。
僕はただ逃げて、現実を避けて理想を手に入れただけ。だから君には負けてほしくない。
…もう直には話せないな。
大丈夫。
僕がいつでも君を見てる。
夢追った同類より》
母は数日後、アイツにこの手紙を届けていた。そこまでは上からみていたけど、それからは知らない。
多分きっと、わかってくれただろう。
これで僕の話は終わりです。現実から逃れ、理想を追い求め、君を追った。僕が体験した、この上なく不思議でバカらしい恋の物語は、これでおしまいです。




