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<出会い>

<出会い>

人恋しい季節だった。それが春だったか冬だったかわからない。中学3年になったことを確信して春だとわかった。

僕は平凡だ。でもそれは自分の中だけで周りからは変人呼ばわりされている。周りの人間が低レベルなのだ。廊下の窓から空を仰ぐだけで後ろ指を指されるなんてウンザリだ。

「流行なんて消えてしまえ」

クラスの誰かがくだらないバラエティー番組の話をすると決まってそう思う。でも正義感はとても強い。「貧困意識」と称して給食で出る白米の一粒、ゴマの一粒まで残さないのは僕だけだ。無論、その行動も変人の要素として捉えられてしまう。

「空を飛びたい」これが僕の長年の夢だ。そんなロマンを輝かすけど、つまりそれは「近づきがたい」気持ちを周囲に芽生えさせるだけで、結局僕は独りぼっちだ。

そんなある日、僕の全てが変わるような出来事が起きた。

学校で席替えをすることになった。嫌いな人て隣にならないかということよりも、自分と隣になった人が自分を嫌がるのではないかという心配の方が大きかった。

だがこの予想は覆った。いや、覆ったのは僕の「女性に対する考え」だ。

隣に座ったコが優美でしなやかで、何より可愛かったのだ。華奢な体つきや長細い指を見れば、何となく贅沢ではなさそうだと、僕はおかしな見解をした。

僕は彼女に穴が開くくらい見つめてしまった。 「よろしくね」

声も綺麗だ。僕は何気なくうなずいてみせた。



「お前、空飛びたいんだろ?」

クラス一の人気者が話しかけてきた。

「オレ、知ってるぜ。2年のとき、みんなに引かれたんだって?」

僕はその場を去ろうとした。

「だから嫌いだ」と心の中でつぶやきながら。

「待てよ!」

人気者は僕の腕を掴んでまでせき止めた。

「オレも! オレもだって! オレにもちゃんと夢があるんだ」

「え?」

思わず返事をしてしまう。

「だから、オレも夢を追う人間だってこと!」

この言葉には驚いた。今までそんなこと言われたことがなかった。

「どんな夢?」

「プロサッカー選手だ。オレは絶対なる!………夢を語り合うって、その、良いことだと思わないか?」

「…うん」

「実はオレはそういう友達がいない。自分が恥ずかしくなるくらい低レベルなヤツらなんだよな…」

「僕もそう思うよ」

コイツに対する見方が変わった。低レベルなヤツらに囲まれてチヤホヤされるようなやつなんて、もっと低レベルだと思ってた。

「じゃあつまりオレたちは同類だ! な!」

長らく感じなかった言葉だ。

「そうかもね」

そっけなく言い放ち席についたが、何となく心臓の鼓動は高鳴り、内心は嬉しかった。


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