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風の強い夜

作者: 月尋
掲載日:2026/04/08

杞憂とはこの事。

風の強い夜だった。

普段ならとうに寝入っている時分なのにその日は何故だか寝付けなくて、ビュォービュォーと唸る風音に耳を傾けていた。

ふ、と胸がざわつき、えも言われぬ恐怖心が迫ってくる。

風が死神でも運んできたか。

自分の死に際を想像し、心臓の動きが早くなる。

首の周りにべっとりとした汗をかく。

寒くて布団に包まっているはずなのに。


死神は囁く。

今、大地震が起これば築40年を超える古い木造のこの家はぺしゃんこだろう、圧死か呼吸不全か。

明日、後期高齢者の運転する車輌が歩道に突っ込んで土手と車体に挟まれたら、出血多量か胸部損傷か。

そうだな、この強風が続きうっかり橋から転落しても死ぬだろう。

或いは勤め先に刃渡り18cmを超える包丁を携えた強盗が押し入りその被害者になるというのも有り得る。


嗚呼もうやめて欲しい。

死ぬのは怖い。すごく怖い。

死にたくない。

でも、生きることが億劫になってきているのも事実。


風は未だ強いまま、眠れず怯える私を嗤うように窓がギシギシと鳴る。


まだ先であろう最期を思い詰めるのは馬鹿らしい。


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