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金の糸
あの暴力女、エルメローズとの婚約が破棄されてから、一週間が経った。
マドリーヌの不思議な力で、顔の怪我は綺麗さっぱり消え去った。
今日も僕は鏡の前で、自慢の金髪に櫛を入れる。
あの女は昔からそうだった。
遊び、勉強、運動、武道、乗馬…。
そのどれをとっても、はるか僕の先を行く。
普通なら王族を立てるものだというのに!
幼い頃は確かに、仲が良かった。
だが学園に入学し、愛しいマドリーヌと出会ってから全てが変わった。
女とはかくあるべきだ!
マドリーヌはか弱く、柔らかく(何がとは言わないが)、従順で、儚い。
対してあの女は図太く、平で硬く(どこがとは言わないが)、強情で、強かだ。
鼻歌混じりにそんなことを考えていると、不意に、何かがぱさりと地面に落ちた。
「ん?なんだ…?え…」
床に散らばっていたのは、金色に輝く糸の束だった。
いや、糸ではない。
これは。
顔を上げ、鏡を見つめる。
「ぼ、ぼぼ、僕の髪の毛がァァァ!?!?!?」
その日、ビクトル・リンドバーグの絶叫が、城を揺らした。




