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「お父様!!!」


執務室の扉を開けると、公爵である父はちょうど葉巻を加えたところだった。


「ローズ!?いきなりなんだはしたない!いやそれよりも、領地に行ったのではなかったのか!?」


「それどころじゃありません!…と言うかお父様、禁煙したはずでは…?」


思わずじとりした目で父を睨みつける。


「も、もちろんだとも!?」


絶対に嘘だ。


半眼になりながら、私は持ってきた手帳を父の机に置いた。


「これ、見覚えは?」


「ん、なんだいきなり…これは…エルデローズ様の日記か」


「はい。領邸の図書室で見つけました」


「ほう…こんなものがあったとは…エルデローズ様は我が家の英雄だ。お前の名を付ける時もだな…」


「はいはい。それは何度も聞きました。で、中身を読んだんですけれどね」


髭を撫でながら語り始めようとする父を制し、悪魔に関する記述のところを開く。


「む、これは一体…」


「悪魔の封印を解く方法が書かれています」


「なに?悪魔…?はっはっは!そんなものこの世に存在するなど…」


「そうですよね。私もそう思ってました。で、ちょっと解読してみたんですよ」


最後のページを開き、魔法陣を見せる。


「なんだと!?お前、万が一何かあったらどうするんだまったく…いいか?お前は昔から無鉄砲で…」


「はいはい、すみません。で、呪文を唱えたらですね」


つらつらと説教が続きそうだったので、それをぶった斬る。


「はっはっは!まさか、本当に悪魔の召喚に成功したとでも言うつもりか?」


「はい。そうです」


「そうだよな!いくらなんでもそんな非現実的な…なに!?」


父が勢いよく立ち上がったせいで、椅子が倒れる。


「悪魔の封印が解けて、契約が成立しました。悪魔は今、ビクトル王子とその浮気相手に危害を加えようとしているかもしれません」


しばしの沈黙。


そして私はスっと両耳を塞いだ。


「な、な、な…こ、この、大バカモノーーーッッッ!!!」


その日、父の絶叫は屋敷を揺らした。


「…落ち着かれましたか?」


父がクマのようにノシノシと執務室を歩き回るのを尻目に、私はお茶を啜った。


人間、自分よりも慌てふためいている人を見れば冷静さを取り戻すものである。


「おま、お前…お前と言うやつは…」


ブツブツ言いながら、父は疲れたように私の前のソファに腰掛けた。


「はぁ、まったく…それで…どうするつもりなんだ?」


「…どうしましょう」


私はことりと首を傾げた。


ガックリと父が項垂れる。


「殿下に警告しようにも、悪魔に狙われているなどと言っても信じてもらえんだろう…。ひとまず、異変が起きていないか確認しよう」


「お父様は、信じてくれるのですか」


「…当たり前だ。お前は、嘘を言うような子ではない」


ずっと立ち上がった父は、穏やかな目で私を見つめた。


「とりあえず、今日はゆっくり休みなさい」


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