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再開

数日後。


その手紙は、朝早くに公爵邸に届いた。


差出人はビクトルの母、つまりこの国の王妃である。


中には、今回のお詫びがしたいから公爵夫人とともに是非登城して欲しいというものだった。


王妃は母の親友でもあるし、小さい頃から可愛がってくれた。


「貴方が嫌なら、私だけ顔を出してくるわよ?」


母が心配そうな顔をしたが、とりあえず行ってみることにする。


サーシャが張り切って用意したのは、美しい淡い黄色のドレスだった。


繊細なレースとパールで彩られた、スッキリとしたシルエット。


アクセサリーのメインは瞳と同じ色のエメラルドだ。


髪は緩く編み込まれ、パールと花の飾りが散らされる。


「お綺麗です!お嬢様」


サーシャがうっとりとしながら言った。


卒業式の日の、例の桃色のドレスを見たサーシャの荒れようはとんでもなかった。


あのドレスはその後、サーシャの手によって引きちぎられ、今は調理場の油拭きや、汚いところの掃除用として大活躍しているらしい。


「ありがとうサーシャ」


涙ぐむサーシャを伴い、母と共に馬車に乗り込む。


こうして私は、久しぶりの王宮に向かうのだった。


城に着いた私たちは、早速サロンに通された。


廊下ですれ違う貴族たちから、何故だかちらちらとの視線を向けられる。


なんだか恐れられているような気がしないでもなかったが、うん、まあ気のせいだ。


そういう事にしておこう。


サロンに入るなり、駆け寄ってきた王妃に抱きしめられた。


「ああ、ローズ!よく来てくれたわ、本当にごめんなさい!手は痛くない?ちゃんと眠れている?」


「はい、王妃様。大丈夫ですわ」


王妃は少し、窶れた感がある。


母が心配そうにその背中を撫でた。


「エリーザ。貴方こそ大丈夫なの?顔色が悪いわ」


「あぁ、リリアン。本当にごめんなさい、私の育て方が悪かったばっかりに…」


「すぎたことは仕方がないわよ。とりあえず座りましょう」


王妃は母の手をぎゅっと握ったまま、ソファに腰掛けた。


この二人は親戚同士で、姉妹のように育ってきた仲だ。


顔立ちや雰囲気が良く似ている。


「今、ビクトルは謹慎させているの。廃嫡は決定しているわ。本当にごめんなさい…貴方にお義母さんと呼ばれるのを楽しみにしていたのに…」


今の王家に、女子はいない。


親戚筋も男ばかりなので、女の子が欲しかった王妃は本当に小さい頃から、私のことを可愛がってくれた。


母が産後体調を崩した際、ちょうど第二王子の育児中だった王妃が私に母乳を与えてくれたくらいだ。


私はソファから立ち上がり、席を移動した。


王妃の隣にそっと座る。


大きいとはいえ、大人三人が座るには少し狭いけれど。


「王妃様は、私の第二のお母様です。今までも、これからもずっと。それは変わりませんわ…」


「ローズ…」


震える背中をそっとさすった。


「これは…いったいどういう状況ですか?」


その時、入口から声がした。


見ると、背の高い男が一人、驚いた顔をして立っている。


「アスラン…?」


鮮やかな青い騎士服に身を包んだ第二王子、アスラン・リンドバーグ。


ビクトルよりも薄い色の金髪が、陽の光できらきらと輝いている。


「留学中じゃなかったの!?いつ帰ってきたの?」


会うのは何年ぶりだろうか。


思わず立ち上がって駆け寄ると、澄んだクリアブルーの瞳が瞬いた。


「兄上の事があって、呼び戻されたんだ。大変だったな。ローズは大丈夫なのか?」


「ええ、まあ…もう気にしてないわ」


記憶にある幼い頃のアスランは、女の子と見間違うくらいの可愛らしい顔立ちをしていた。


今はすっかり男らしくなり、引き締まった体つきをしている。


その時、私の目の端を何かが掠めた。


黒い星だ。


慰めるように私の肩に乗せられたアスランの左手首の内側に、小さな黒い星が浮かんでいる。


「っ!アスラン!これ…!」


思わずその手を掴むと、アスランは目を見開いた。


「ローズ、お前これ…見えるのか!?」

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