面会2回目 作成者:研究者A
面会2回目
前回から1週間。
……長かった。正直に言う。
待ち遠しかった。
だからこうして書いている。書かないと、感情が内側で膨らみすぎる。
彼のことは、だいぶ前から知っている。
でも彼にとって私は、たぶん「2回目の同じ人」かどうかも曖昧だ。
名乗っていないし、顔も見せていない。
覚えている確証はない。
その非対称さが、少しだけ胸に引っかかる。
面会が始まると、私はいつも通り質問票を手に取る。
公的な距離。安全な距離。
……でもね。
質問の中に、私情で聞きたかった内容に近い項目があった瞬間、
心が、はっきり踊った。
それを悟られないように声のトーンを整えながら、
内側では「よかった」と思っていた。
彼の返答は、やっぱり急がない。
考えて、選んで、言葉にする。
その過程を聞いているだけで、
こちらの思考まで静かに整えられる感じがする。
特に印象に残った価値観がある。
(ここには書ける。あくまで私的だから。)
**「自分にとって意味のある役割を、他者との関係の中で見つけ直す」**という考え方。
依存でも支配でもなく、配置としての関係。
……これ、私も勉強になる。
正直、私はずっと「自立」を重視してきた。
依存は危険、距離は保つもの、そうやって。
でも彼の言葉を聞いて、
関係そのものが安定装置になるという発想が、少しだけ腑に落ちた。
それを書きながら、公式報告にまとめる時間が、妙に楽しかった。
研究者として正しいことをしているはずなのに、
同時に「個人的に得るもの」が確かにある。
どこかで読んだ記事を思い出した。
人生の中で、
・何かを与えてくれる存在
・精神的安定をもたらす存在
・知識欲を満たしてくれる存在
そういう相手に、人は快を感じる、と。
……今、まさにそれだと思う。
頭では分かっている。
これは研究。
これは仕事。
でも、体感として知ってしまった。
最近、私的観察ログでは、
「GT-37」と書くより先に、
無意識に「彼」と書きそうになる。
修正はする。必ず。
でも一瞬、迷う。
質問票以上のことを、聞きたくなる瞬間もあった。
価値観の続きを。
その考えに至った具体的な経験を。
でも、聞かなかった。
聞けなかった。
境界は、まだ守れている。
……守れている、はず。
面会が終わったあと、
私はいつもより丁寧に公式記録を書いた。
感情を削ぎ落とした文章。
その反動で、ここでは少しだけ饒舌になる。
彼は、
私の価値観を否定しない。
でも、揺らす。
静かに。
同世代という属性が、
ここで効いてくる。
理解が早い。
だから、揺れも早い。
次の面会まで、また1週間。
……長いだろうな。
ここまで書いて、
「恋」という言葉を使っていない自分に気づく。
使わないのは、まだ早いから。
それだけ。
私的観察ログ




